【ホラー?スプラッター?いえ、ラブロマンスです】DINER【平山夢明】 | そうでもなくない?

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ダイナ- [ 平山夢明 ]
¥1,575
楽天


兄ちゃんが学校の図書室から借りてきた本。
盛んに薦めるので最初の数ページを読んでみたら、その凄まじさにぶっ飛んだ。
いきなり人気のない山中で自分たちの墓穴を掘らされる女たち。その女を容赦なく殴る男たち。読み進むとなぜ女たちがこんな目に合わされているのか、酷いという言葉ではとても足りない描写のシーン付きで説明されていた。いや、本当に酷すぎるシーンだ。

いやいや、なんなのこれ?こんな本、中学校の図書室に置いていいの?
ところで兄ちゃんは自他共に認める臆病チャンピオン。テレビにちょいとホラーなシーンが映ると脱兎のごとく逃げ出して(体重は90kg以上あるのに!)、生まれたてのひよこのように部屋の隅で震えている男。それがこんな本を借りるなんて…。聞いてみたら、表紙のハンバーグがおいしそうだったんで借りたそうな
ああ、知ってるよ。お前は食べ物に目がないよね。だけど、中身を確認してから借りようか。

ところが、そんな彼が一気に読んでしまった。どういうことだ?しかも面白かったと薦めてくる。そこに興味もあって、とりあえず読んでみた。

すぐにあらためて思った。酷すぎる。後悔の念が夏の積乱雲のように湧き上がった。
前述した凄まじいシーンのオンパレード。いや、それ以上の描写がこれでもかッ!って迫ってくる。気分が悪くなる(詳細は書かない、書けない)。胃のあたりがぐうっと圧迫される。いやいや、これは酷い。これはスプラッター小説じゃないか。

ところが、もう物語から目の話せない自分がいた。あっという間に引きこまれた。約470ページ。普段なら20日くらいかけて読む量だ。それがわずか3日くらいで読み終えてしまった。
通常、僕の読書は通勤電車の中でのみ実行される。しかも、座席に座った場合は即座に睡眠に入る。だから、なかなか読み進めない。
でも、この本は違った。疲れてもいるので本を置き一応目を閉じるのだが、なかなか心が休まらない。眠りに入れない。ついには目を開けて、本まで開けてしまう始末。貪るように読んでいた。それほど面白かったってこと。

途中で兄ちゃんに感想文を送った。

「ヒリヒリと焼けるような緊張感。シーンが転換する度にほぅっとため息をつく。読んでいる最中は息をしていないのかもしれない。ふと気づくと、口の中が乾いてネバネバしている。この物語に感情移入して読み進めるには、とてつもない気力と体力が必要だ。正直疲れる。でもやめられない。止まらない。どうしてくれるんだ(笑)」

どうしても、この物語を紹介してくれた兄ちゃんに感謝の意を表したくて、顧客訪問の間にLINEで送った。便利な世の中だ。返事はもらえなかった。オヤジ仕事しろって思ったに違いないw

この本はまぎれもない傑作だ。実際、2011年に第13回大藪春彦賞を受賞している。
暴力、残酷、スプラッター、殺し合い、血……これらが1ミリリットルでも受け付けられない人は読まないほうがいい。でも、少しだけ我慢できるのであれば、絶対に読んだほうがいい。この世の地獄のその最底辺で営まれる数奇な運命。不可思議なそして凄まじいラブロマンス。どんでん返しと壮絶なクライマックス。
近いうちに映画化されるんじゃないかな。楽しみだ。怖くて観に行けないかもしれないけどw

著者は、この他にも短編を数多く発表しており(ほとんどがホラーだが)、そのうちのひとつが日本推理作家協会賞も受賞している。僕は、これと気に入った作家の本は中毒のように固め読みしてしまう癖がある。自分にとって本当に価値あるものに巡り会えたのか知りたくて、立て続けに読んでしまう。
読んだら、またこのブログで紹介しよう。おそらく、十中八九面白いだろう。価値あるもの。宝物。出会えたことに感謝して、皆におすすめしよう。

でも、くれぐれもこういうのダメな人は読まないで。どうしてくれるんだって文句言われても困りますからね




【ちょっとネタバレ】










しかし、キャンティーンに集まる殺し屋ってみんな超人的殺人技術を持つ者ばかり。
殺し屋っていうか、超人?怪物?超能力者?みたいな。
わかりやすく言うと、悪魔の実の能力者ですわ。みんな。
そういう意味では、現実味は薄れるかもしれませんね。
ってか、そもそも殺し屋なんて現実味ないケドw

でも、この世の何処かにこういう奴らがいて、こういう日常があるんじゃないかと思ってしまう。
そして案外すぐとなりに、こういう魔界が口を開けているのかもしれない。自分が、あなたが次のオオバカナコになるのかもしれない…。


ただ、この地獄のそこにあるDINERで振舞われるハンバーガーが食べられるのなら……命を賭ける?