【実るほど】企む技術 | そうでもなくない?

そうでもなくない?

なにが あるか わからない だから あるがまま ありのまま でありたい
※映画レビュー移動しました。
https://filmarks.com/users/shin_juuuuuuuku

たくらむ技術 [ 加地倫三 ]
¥735

楽天

大ヒット番組「ロンドンハーツ」や「アメトーーク!」のプロデューサー、加地倫三氏の仕事術を紹介する本。過激なトークや出演者の赤裸々を暴く企画で「家電芸人」など数々の流行語まで生み出す敏腕ぶりから、我々凡人には真似できない天才的な閃きがあるのでは?と読み始めました。ところが、氏が実に基本的なことをコツコツと積み重ねて、仕事に対して真摯に向き合っていることが、本書からはわかります。氏の言葉でこう書かれています。

「自分は饅頭作りの職人のようなもの。
お客様のためにクソマジメに仕事を積み重ねなければならない」
むしろ僕は視聴者の気持ちで番組作りをすることが大事だと思っている」

こういう当たり前を続けていくことがどれだけ大切か。
言葉はなくても、氏の制作した番組を観ればわかります。お会いしたことはありませんが、きっと背中で語る人なんでしょう。

さらに言うなら、当たり前を続けていくことがどれだけ困難か。
そればかりか、氏はそれに加えて「仕事は自分から取りに行け」と言ってます。それは人の仕事を積極的に引き受けろ、ということだけではありません。指示されたことに加え、それ以上に考え気を利かせることが成長につながるのだと言うのです。

えてして、僕らは困難を避けようとしてしまいます。
面倒なことには極力関わらないようにしてしまいます。確かに平穏無事を求めることは、成長とは正反対に位置することかも知れませんね。考えさせられます。

また、それ以外にも興味深い言葉がたくさんあります。

◯つまらない会議で質問する。つまらなそうな会議でも、とりあえず何にでも興味を持ってみると、面白みやヒントがみつかる。

◯見逃しの三振より空振りの三振の方がいい。なぜなら、空振りの場合はバットを振っているので、フォームのチェックができる。その失敗を教訓にできる(怒られた方がいい)。

◯言った言わないで揉めないために、「実際にこっちが言ったかどうかが問題ではない。相手の脳、心に伝わる言い方をしなければダメなんだ」と言い聞かせている。

◯超一流とされる人はみなさん基本的に丁寧で常識的な方。本当に強い人は強さを誇示しない。

◯僕たちの業界では、よくお笑いをプロレスに例えることがあります。いいプロレスラーの資質とは、決め技をたくさん持っていて、それを連発できることではありません。対戦相手の決め技をきちんと受けて、相手の力を際立たせた上で、自分の決め技を繰り出すことができるのがいいプロレスラー。受け身が上手で、受けた後の返し技がうまいプロレスラーは試合を盛り上げることができる。

◯「アメトーーク!」のMCのどこがスゴいのか。その一つに「一歩引く」ことを嫌がらなかったという点があります。ふたりは番組開始からまもなく、「自分たちではなく番組が面白ければそれでいい」というふうに腹を決めたのです。

この中でも、特に「本当に強い人は強さを誇示しない」は、明石家さんまを引き合いに出していますが、ご本人もまったく同じかと思います。本書のタイトルは「たくらむ技術」ですが、ご本人はたくらむどころか土俵の真ん中で全力で真正面からぶつかっているだけ。そんなふうに見えます。

実るほど頭を垂れる稲穂かな

僕も実践を強く心がけたいと思います。