先人は言った。
「サッカーは人生の縮図である」「人生のすべては、サッカーから学ぶことができる」
まったくそのとおりと思う。しかし、別の誰かは言う。
「なにを大げさな。たかが球蹴りじゃないか」
そうかもしれない。
しかし本書を読めば、誰でも先人の言葉に頷きたくなるだろう。
短期間で高い目標を達成しなければならないプレッシャー
スピーディーな変化への対応、
グローバルな競争
常に求められる改善と新たなアイデア
これらは、現代ビジネスの最前線をよく表している言葉と感じるかもしれない。しかし、100年以上前から、この問題と常に直面し戦っている世界がある。
そう、サッカーである。
「さらにサッカーは一週間という短いスパン、90分という枠の中で衆目のうちに過程も結果もさらされる中で、目に見える成果をあげなければならない。リスクと挑戦の世界」とは、序文の祖母井秀隆氏の言葉である。
「結果」ではなく「成功」を売れ
成功法則を信じるな
「信頼」がスピードを上げる
「不愉快なこと」から取りかかれ
「熱狂」を伝える
「型」を壊せ
「誰か」のために汗をかけ
「安定志向」から脱却せよ
全員が「セールスマン」になれ
「目標」ではなく「問題」を示せ
「チームの成功」を最優先せよ
数字はすべてではない
見出しの一部を抜粋し並べただけだが、明日からすぐに使えそうなフレーズばかりである。それぞれの内容はサッカーになぞらえて紹介されている(当たり前だ)のだが、きちんとビジネスに落とし込まれていて、サッカーに造詣がない者でもためになると感じることばかりだ。それもそのはず、本書はサッカーコーナーではなくビジネスのマネジメントコーナーに並んでいた。探すのに苦労した。やはり監督目線で語られる内容が多く、組織を預かる者にとっては珠玉の言葉が並んでいる。貼った付箋は45箇所。単純計算で、5ページに1つは印象深い箇所があるということ。本の上部に色とりどりの付箋が並び、実に華やかである。内容には関係ないが。
ご存知の通り、サッカーの監督というのは過酷な職業である。勝利すればこれ以上ない賞賛と歓声を手にすることができるが、逆に勝てなければ文字通り地獄に落ちる。わずか1ヶ月で職を失う場合もある。こんな浮き沈みの激しい業界は、他にあまりないのではないか。
さて、監督が仕事を続けていくために、つまり勝利を挙げるために最も大切なことのひとつに、チームのマネジメントがあげられる。それこそ、性格も国籍も特徴も様々な選手たちをどうまとめあげていくのか。特に、サッカーでは組織力がものをいう。いくら個人の才能が秀でていても、チームがバラバラでは勝利を挙げることはままならない。サッカーの監督は、個性的な選手をいかに掌握しモチベーションを維持するかを大きな課題としている。これは、一般的なビジネスの現場でも、マネージャーに当たり前のように立ちはだかる難題だ。本書は、その難題をどのように解決していけばよいのか、どのように解決されてきたのかの事例がたくさん紹介されている。それもそのはず、前述の通り本書は監督目線で書かれていることが多いのだ。部下の成績が上がらない、部下とうまくコミュニケーションがとれない、チームがうまく機能していないように感じる。そんな方は、今すぐ読んだほうがよい。一般的なビジネス書ではもうひとつわからない。そんな方にもオススメだ。サッカーというスポーツをモチーフとしている本書では、熱く率直な言葉ばかりが並んでいる。たとえ頭で理解できなくても、その言葉はあなたの心にまっすぐに飛び込んで染み通ってゆくだろう。
サッカー好きなら間違いない。サッカーを知らなくても決して損はしない。
本書を強く推薦します。