松本人志と島田紳助

 

■松本人志は浜田雅功に誘われて、お笑いの世界に入ったことはあまりにも有名な話だ。責任感の強さなのか、もともとお笑いが好きだったことが理由なのか、島田紳助・松本竜介の漫才を見て、憧れ、漫才の世界で天下を取ろうという気持ちになったという。

 

 

 

 

■実際、松本人志の「攻撃性」や「毒のある笑い」は島田紳助に似ている。発想の仕方も同じく、「人をいじめる」方向性は一致している。しかし、芸能活動という意味では、二人に類似点はほとんど見られない。最も大きいのは、「お笑いを突き通してきてかどうか」という点だ。島田紳助は時代のせいもあり、途中から「司会者」という役割を担い、バラエティー番組で自身のポジションを勝ち取り、引退直前には「行列ができる法律相談所」を中心としたトークバラエティで天下をとった。一方、松本人志は「お笑い」を中心とした番組でテレビに君臨していた。では、松本人志は誰を目標に活動をしてきたのか?

 

 

 松本人志と笑福亭鶴瓶

 

■この二人の共通点は実に多い。

 

例えば、どの芸人もそうかもしれないが、デビュー当時から売れっ子で、しかも「規格外」であった。ダウンタウンは、当時芸人の王道であった横山やすしに「お前らの漫才は、チンピラの立ち話じゃ」と叱られたが、当時の映像を見ると、まさにそうだ。従来のイメージであった漫才師然としたしゃべくりではなく、ふたりでボソボソとしゃべるだけ。

 

一方で、笑福亭鶴瓶もそうだ。噺家でありながら、オーバーオールを身に付け、髪型もアフロヘアー。しかも、落語ではなく、漫談(雑談)を芸にして芸能界で売れ始めた。

 

■もうひとつ。アドリブ芸を確立したことも大きい。瞬発力がもの言う芸能界において、多くの芸人が「アドリブ」を武器としているが、ふたりは、出たとこ勝負の芸を番組にしている。ダウンタウンはフリートークを売りにした「ガキの使いやあれへんで」。笑福亭鶴瓶は「パペポTV」。ほかにも、松本人志はアドリブ、予定調和を崩す番組を軒並み担当し、鶴瓶は「スジナシ」「鶴の魔」など数多い。

 

■そして、もうひとりが、盟友の放送作家とラジオで本音を語ったこと。ちなみに、ビートたけしのオールナイトニッポンもそれに該当しそうだが、こちらかたけしの漫談に対して、高田文夫が合いの手やツッコミを入れるスタイル。二人はちがう。放送作家の高須光聖と共演した「放送室」、新野新と共演した「ぬかるみの世界」は、二人にとって唯一、本音で語ることができる聖域であったと後年、語っている。このラジオ番組で影響を受けた人たちも多い。

 

そういう意味でも、松本人志は笑福亭鶴瓶の後を追っかけていると言えなくはない。