毒舌芸のボードビリアン

 

■今から約60年前。毒舌の限りを尽くし、芸能界を席巻したピン芸人、ボードビリアンがいた。当時としては珍しく、誰の弟子でもなく、どのグループにも属さず、日米野球の進行係で注目され、たった一人でソロバン片手に歌う芸や漫談で人気を博した。名前をトニー谷という。

 

■その毒舌は凄まじく、当時人気絶頂だったアイドル歌手、江利チエミを「下痢チエミ」、雪村いづみを「雪村ネズミ」と罵倒しまくる。舞台裏での態度も凄まじく、あの立川談志から自身の番組に出演オファーをしたところ、「どうして俺が、お前みたいか落語家の番組に出ないといけない」と一蹴したほど。だから、人気と裏腹に嫌われ者だったことは確か。

 

■もともと舞台や映画時代の芸人であったことから、1960年代移行、テレビ時代の到来と共に人気の陰りが見え始め、実の息子を誘拐された事件で「号泣記者会見」がテレビ放送されたことで、一気にメディアから姿を消してしまった。

 

■その後、一度だけ芸能界にカムバックしたが、基本的には低空飛行の「むかし売れた芸人」として人生に幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

■人を笑わせることを生業とする芸人。しかも、毒舌を売りにした芸であれば、なおさら、湿っぽいイメージが命取りになる。今回、突如として謝罪動画を投下した岩橋は、トニー谷のような芸風ではないにしても、以前と変わらず、笑える日が来るのだろうか。でも、がんばってとエールは送りたい。