岩橋はフリーでも生きていけるか?

 

 

■プラスマイナス岩橋が、遂に所属していた吉本興業を退職した。会社の扱いとしては「契約解除」ということだから、会社から解雇を言い渡した形になる(これについても、岩橋は憤慨していたが)。岩橋はこれで、あれだけ愛を注いでいた漫才を取り上げられ、会社の巧妙な立ち居振る舞いにより相方とも永遠の決別をしなければいけなくなった。

 

■同じ吉本興業の先輩で、あの島田紳助・松本竜介に解散を決意させたコンビとして名をあげた「太平サブロー・シロー」は、同世代の芸人で「タレント化」していく中で、自身だけが昔ながらの「漫才芸人」として消費されることに嫌気が指し、吉本興業から独立。IVSテレビ制作の支援を受け、個人事務所を立ち上げ、元吉本興業社員であった人物を引き入れ、芸能界に荒波に立ち向かうが、わずか数年で失速。多くの番組レギュラーを失い、サブローが先に吉本に復帰し、あとを追うようにシローも吉本に再所属した。

 

■岩橋も同じ運命をたどるのか? 岩橋の先輩でいうと、かつて関西で一世風靡後、東京進出を失敗した「ぜんじろう」というピン芸人がいる。彼は、自身が主催するスタンドアップコメディのライブで、吉本興業や維新の政治家に対する批判を真っ向から行なっている。もちろん、小規模の会場だからといって安心はできない。そこには、大手主要新聞社やメディアの記者も客のふりをして観覧している。もちろん、ぜんじろうもそのことは知っているが(というより、SNSでもその勢いは止まらない)毒舌は増すばかり。また、ウーマンラッシュアワーの村本もそうだ。会社から与えられる仕事をこなすのではなく、自分で仕事を作ってしまう。会場の大きさに関係なく、マイク一本を手に、客席を沸かし、「風刺」という笑いの復権を行なっている。

 

■そういう意味では、岩橋も独自の笑い(間違っても、ケンドーコバヤシの元相方で、元りあるキッズの借金大王のゆうきと雑誌で対談するような元芸人ではなく)を追求することで、100名規模の会場を拠点に、毎月のように単独ライブを開催してほしいと思う。それくらいの資金を提供できるスポンサーはいるだろう。チケット料金が数千円でも、物販と組み合わせることで一定の利益も見込めるし、インターネットの配信を使えば、その他の令和芸人と同じく「テレビに出ていなくても存在感がある」という風を巻き起こすことはできるだろう。

 

 

 岩橋はイタズラを証明できるか

 

■岩橋が名前をあげた女優はすぐさま、真っ向から否定をした。証拠もなく、もしかすると、その場に同席していた人間に事実を確認したのかもしれない。その上で、「やってるわけない」という発言になったのだろう。しかし、自分の記憶など曖昧なもの。とくに、酔っ払っているとますます記憶は定かではない。それは、本人もよくわかっているはずだ。そして、その場にいた全員が自分の味方であるとも知っている……とはいっても、芸人のつながりを大事にする職業だ。たとえ、現場にいた宮川大輔とその女優が懇意であっても、宮川は自分の身の方が可愛い。もし、宮川にとって不利益な事実を知っている芸人が、「岩橋のために、真実を語ってください」と詰め寄れば、わざわざ脅す必要もなく、何かしらの媒体を使って発言することになるだろう。

 

■「証拠がないなら発言するな」「証拠がないなら認められない」というのは、社会の倫理であって、法律の倫理ではない。法律の世界では、「複数の証言」が立派に証拠になってしまう。今回の件で言うと、エアガンを撃った写真がなくても、某大物放送作家が不正な審査を要求した録音がなくても、岩橋以外に証言をする人たちが続々と登場すると、法律の倫理では「事実」となる。しかも、岩橋は自ら会社を辞め、数千万円単位の被害もこうむっている。たった一人の芸人にひっかきまわされるはずがないと考えるのが、大手プロダクションの論理だ。それが、昨年から崩れてしまい、一強であったプロダクションが崩壊した事実もある。私は、まずは「自社のタレントを信じる。そして、ちゃんとした調査を行うまでSNSで発言するのはやめよう」と説得することができなかった行動の裏に、なにかあるとしか思えない。岩橋、がんばれとエールを送りたい。