映画化もされた『ミスミソウ』
押切蓮介の作品はアニメ化もされた『ハイスコアガール』が最もメジャーかもしれないが、個人的にはこの『ミスミソウ』が一番好きです。次は『焔の眼』かな。
「旭川女子中学生いじめ凍死事件」の報道も見ていて、思い出してしまい再読。
舞台も雪国であり、まるでこの事件を参考に書かれたとも思える内容だが、『ミスミソウ』はこの事件の13年前の2007年連載開始の作品。
あらすじは、卒業間近の時期に都会から雪国の中学校に転校してきた野咲春花が、同級生から壮絶なイジメに遭っていく話。いじめにあうなかでも、妹の祥子(しょうこ)への愛情や、唯一の味方でる同級生男子の晄(みつる)との心の交流も描かれる。
やてイジメは悪化の一途を辿り、最終的には不慮の事故も重なり家族が焼け死ぬまで至ってしまう。そこから春花の復讐が始まる。しかし、進む復讐のなかで次々に「人」の怖さが露呈していき、ホラーのみならずサスペンス的な展開も見せる。
唯一の味方である晄(みつる)。題名のミスミソウが語られる大事なシーン。
ミスミソウは、厳しい冬を過ごし春に雪を割るように小さな花を咲かせる。主人公の春花の名前にもつながるこの漫画の象徴的な花。
妹の祥子(しょうこ)。非常に可愛く描かれている。
エスカレートするイジメの結果、春花の家族が犠牲に。
雪の中、復讐に向かう春花が美しく印象的に描かれている。
イジメ側のリーダー格、小黒 妙子(おぐろ たえこ)が春花に許しを請うシーン。
イジメの背景に、嫉妬や恋慕など複雑な感情の渦巻きが描かれている。
唯一の味方のはずの晄(みつる)が違和感のあるセリフを口にするシーン。
人間の闇が次々に露呈していく。これ以上はネタバレになるので割愛。
これは、私の所蔵している完全版に収録の後日談。春花のおじいちゃん目線で結末が描かれている。
描写がグロテスクであり救いもなく、非常に読後感が悪い作品だが、読み始めると夢中で読んでしまう。
10年前に読んだ際には、面白かったが現実離れしたホラーとしてとらえていたが、今回の旭川の事件で思い出し読み返すと事実は小説より奇なりであった。
現実の事件には復讐劇こそ無いが、イジメの凄惨さはこの漫画が描いたものとの差は無いように思える。
10年前に他界しているが、私の亡き母の口癖のひとつに「一番怖いのは人間だよ」という言葉があった。
まさに、その通りの漫画と事件である。
ちなみに完全版には物語の前日譚と、終了後のエピローグが加筆されています。
当初の単行本は著者後書きが載っているそうです。(私は未確認ですが)
完全版を電子なら以下。
個人的には以下の紙がおススメ。
こちらは、完全版にはない「著者あとがき」があるらしいです。