もし私がカラスだったら、

 

子供たちのすぐそばに

突然降り立って

びっくりさせたりはしない。


街路樹の奥に隠れて

おままごとやボール遊びを

こっそり見るの。


順番を決めるじゃんけんは

心の中で参加しているつもり。

 

 

もし私がカラスだったら、

 

お気に入りの場所は

5階建の団地の避雷針のテッペン。


疲れて帰ってきたあの子が

勉強部屋のカーテン越しに見えたら

ベランダの手すりにすぐさま跳び移って

カアカア鳴くの。


今日は何回鳴くか、

あの子が気にしてくれるかも

しれないから。

 


もし私がカラスだったら、

 

羽繕いでとびきり長い羽が抜けたら

それをくわえたまま

井戸端会議の大人の上を飛び回るの。


驚いて見上げたその険しい顔たち

をめがけて羽を放つため。

 

夕日に射抜かれたそれは、

七色の光を拡散して

彼らを面食らわせながら

長い時間をかけて舞い落ちる。


カラスが黒いのは

誰の色にも染まらないためでも

忌み嫌われるためでもなく


あらゆる色を受け止めた結果

であることを

いつか知るだろうか。



もし私がカラスだったら、

 

人間の言葉が

わからないふりをする。


そんなことを知られたら最後

きっと私も

あの子と同じになってしまうから。