桜の木の皮で作った茶筒

今日、不注意で、コンロの火に当たって
少しフタが焦げちゃいました。


『ごめんね〜』


私が声をかけたのは、
10年近く前に亡くなった大切な友達。


茶筒をくれた人です。


久しぶりに話しました。


耳元で
『ちょっとしたパーティがしたいんだよ』
っていう彼女の口癖が聞こえました。


風流な人で、着物が好きで
猫が好きで、よく拾ってきて
親を恨んでいて、病んでいて
クールで、私には優しくて、
モテて、時々情にあつくて、
手先が器用で、お酒が好きで、



私は、そんな彼女を
何一つ理解できていなかったし、
何一つ彼女の寿命を
延ばすことはできなかったし、


その時の私には
彼女の心のヒダを一つも見つけることが
できなかったし、


ただ、くだらん話をしたり、
ただ、旅行先ではしゃいでいたり
していた彼女を
ずっと風景としてみていただけで、


そのおかげで、今となっては、
見事に、事実の積み重ねしか
私の中に残っていないのだけど、


それは、ひょっとしたら、
彼女のわたしへの思いやりだったのかもって
今も私んちのキッチンの端っこにある
桜の木の茶筒を見て
今日は初めてそう思った。


彼女の知らない3人の子供たちが、
パーティのように、
毎晩お菓子食べながら
はしゃいでいるから、許してくれるかな。