『かゞりの本棚』を聴く | 再開  オネオネ日記

再開  オネオネ日記

ぐるっと一周回って、元に戻っての再会です。タイトルも変更しました。いろんなことがあって、中断していました。やっと落ち着いたのでまたはじめようとしています。

飛鳥井さんに送ってもらったCDを拝聴した。

 

収録された作品は、大阪圭吉『香水紳士』と海野十三『もくねじ』で、いずれも昭和初期の小説たちで、ユーモア小説というか、推理小説と、SFチックな、それも童話的と表現されている一人称の「もくねじ」の独白という作品を収録している。

 

CDそのもののについては後に回して、大阪圭吉というペンネームなのに舞台は東京から国府津へ向かう列車内での出来事というちぐはぐさからして推理小説というよりもユーモア小説なんだろう。

『もくねじ』は木のネジではなくて、木材に使われるネジのことで、立派に金属のネジのことだ。そのネジに感情移入するかのごとく、一人称で自らの顛末を独白するという形をとっている。無常な身の上を象徴するかのようだ。きっとこの時代の空気観だったのかもしれない。

 

ところで、このような昭和モダンといってもいいような作品を得意とする飛鳥井さんは、実は大得意なのは芥川龍之介だった。この作家の系譜をひいているのかもしれないと推測できる。いや、それなら朗読されたことがあるかどうか知らないが、久生十蘭も得意なんじゃないかと疑ってしまう。いずれも、場面設定がはっきりしていて、展開がはやい。

 

この昭和モダンとも呼べる時代背景にヴァイオリンとチェロの響きが効いている。絶妙だろう。

朗読は、あまりに大げさな鳴り物や、過度の感情の起伏表現は、作品をだいなしにしてしまうと考えているので、バランスの取れたものに仕上がっている。

たしかに、CDメディアとして、本棚にコレクションとしてチョコンと並べておくにふさわしいものだろう。

 

なんだか、妙に力が入りすぎて、普段は「批判されてなんぼ」と思って悪口しか言わないのに、こんなに持ち上げて気恥ずかしい気もするが、私は満足だった。

 

この評!朗読だったら失敗作だね。(笑)