専門学生の頃、叔母に譲ってもらった原付でアルバイトに行くことが多かった。

学校前に2時間程、喫茶店で働いていたが、その時は家を出るのが6時過ぎ頃。

原付は割と年季の入ったもので、ある日の早朝いつも通りにアルバイトに行こうとした時、酷くエンジンの音がうるさかった。

時間も時間だったし、唯一こういった事に詳しそうな父親を起こすと、違う意味でうるさい事になる。


手元にネット環境のない時代、私は原付を観察した。

すると、マフラーに穴が空いていた。

原付は三姉妹で共用していたので、私も含め、誰かが何らかのきっかけで穴が空いたんだろうと推測。そして、音の原因と思われる穴を塞ごうとした。


私は車の免許を取る前に原付の免許を取っていたので(あまり理由になっていないが…)、エンジンの仕組み等の知識には疎く、あろうことか、倉庫に置いてあったボロ布(前世父親の綿半袖シャツ)をマフラーに巻いて塞いだ。

音のうるささが軽減されたので、そのままアルバイトに向かった所、5分程すると、通りがかる車が何台かクラクションを鳴らして指をさして合図をしてきた。『えー、何?邪魔って事?ごめん、ごめん。』なんて呑気に思っていたが、後ろの車を見た視界に原付の後部に火が見えた。


パニック!!!


急いで隅に止めると、前世父親のシャツは父親の怒りのようにメラメラ燃えており、焦った私は素手で燃えている前世父親のシャツを取り除いた。


そんな時でもアルバイトに行かなくちゃという、妙な義務感から、火がおさまった原付にエンジンをかけ、騒音をたてながらアルバイト先に向かった。


後から冷静に考えると、燃料タンクまで熱が行ってたら死んでいたと思う。


自分の中で、かちかち山事件と呼んでいる。


『かちかち山』の物語りの教訓を調べてみると、悪いことをした者には罰が与えられるというメッセージが込められた作品。だそうだ。


無知は罪。