父親は自営で左官屋をしていた。絵に描いたような職人気質で、九州男児。集団就職でここ愛知に来たと昔聞いたことがある。

40年以上前は、まだ左官屋の景気は良かったようで、お弟子さんによく遊んでもらった。

食事は父親が箸をつけるまで待ち、お風呂も父親が1番、うっかりすると、母親からも『お父さんが1番でしょ!』と叱られた。全ての権力は父親にあった。

どこの家庭の父親も、そんなものだと思っていた。

当時、平屋の借家に住んでいたが、私が小学2年生の頃に隣町の戸建て住宅を買い、引っ越す。

特に思慮深いわけでもなく、程よく頭の弱い私は引っ越すということに対して『新しい家だー』くらいにしか思ってなかった。

田舎の、同じような戸建てが立ち並ぶ土地だったので、同世代の子も多く、新しい環境での生活にあまり苦労しなかったように思う。

ただ、何も考えていなかっただけかもしれないけど…

お弟子さんはこの頃独り立ちしたようだ。