正直、あまり期待していなかった。
ふと時間が空いたので、「今週末の公演」を検索できる「enjoy let's Tokyo」で検索したら、
「ハズレでも許容できる値段」かなぁ…と思える「2000円」という前売り価格でまだチケットをサクッと買えるのが、この公演で、
Tweetで検索したら、観た人が(関係者とか友達とかサクラかもしれないけど)いい感じの感想を書いていたので、
「ハズレかもしれないけど、まぁいいか」と思って行ってみた。
というのも…
つい最近、東大の演劇サークルで「投げ銭制」という、お代はカンパ式の劇を駒場まで観に行って、
おそろしくつまらなく無駄な時間を過ごしたことがあったので、
「やっぱり、安いのは安いなりか…」という思いもあって、警戒していたから、でもある。
「カンパ式」と「前売り価格2000円」には大きな違いがあるとはいうものの、「安い」「学生」と共通点はあり、ちょっと警戒していた。
が、よかった。
色々難点はあるけれど、総じてよかった。
「観に行ってよかった」と思えるほどには、よかった。
一番は、「ラップする女性」の存在感。リアリティー。「圧」の強さ。
山田綾音さんという女優さんらしい。
2013年、紀伊國屋ホールの「ぬるい毒」で、初めて池松壮亮君を観た時のショーゲキに似たインパクト。
違うのは…池松君は噛んでなかったけど、山田さんは、結構噛んでいた。
ただ、噛んでいたのに、ここまでインパクトがある、噛んでいたのに観る人を感動させることがある、噛んでいたのにリアリティーがある~
ということの方がすごいことかもしれない。
浅田真央ちゃんとか羽生君は転んでもメダルを獲れる。
転ばずに完璧に演技をすることより、転んだとしても感動させられたりメダルを獲れることの方がすごいことなのではないか、とすら思う。
もちろん、噛まないように(転ばないように)研鑽をつんでいくことは大切だとしても。
山田綾音さんは、確かに、キャラがそこに「生きている」という感じがした。
圧倒的なリアリティー。「舞台を観ている」のではなく「話しかけられている」いや「訴えかけられている」ような、強さ。
彼女が最初に登場した時に客席に投げかけた「リアル」が、まさに彼女にあった。鳥肌が立ったし、泣けた。
映像とは違う「演劇の力」を、彼女から感じた。
「薄布」の舞台において、彼女はまさに「センター」で、欅坂の平手ちゃんのように、まさに一人でそのテーマを凝縮して表していたと思う。
演出も、面白かった。
映像では、それほど意味のない人が背景のように映ることはあると思うが、演劇ではまずない。
わさわさしていても、メインははっきりあって、メインとその他は分かれている。
が、この劇では、時々、舞台にいる人達全員が並列でわちゃわちゃしている場面があった。舞台だけれど映像っぽく、面白い試みだと思った。そして、それぞれの場面のバランスがすごくいい。「ポエトリーリーディング」の発表の挿入も、とてもバランスや展開がよく、面白かった。成功例として発表していても実は…というところも。
展開でいうと…
ラップでディスりあったり「共感じゃなくディスれよ」というのは面白かったが、もうひと押し切り込んでディスってもいいような気がした。
そして、最後に精神科医と山田さん演じるラッパーの女性が再会するところも、バシッと治療法の失敗や無意味さを言っても(ラップでも、そうでなくても)いいのに、と思った。
が、この、完全には刺しきらない距離感が、今の若者のものなのかもしれない。とすれば、それも含めての表現なのか。
AKBの流れからなのか、最近、中小劇団では、チケットを役者ごとの指名で購入したり、公演後に役者ごとの触れ合いのようなものがあったりするが…どうなのか?と思う。誰がいい、とかではなく、様々なキャラの人があっての舞台だし、例えば、この舞台でいうなら、キャーキャー言われるのはバーのマスター役の俳優さんかもしれないけれど、ベトナム生まれベトナム育ち設定の俳優さんはワーキャー言われないとしても大切な役で、色々な役の人がいてこそ舞台が成り立っている、と思う。
また、「役者として素敵」と思うのと「役を演じている生身の人間そのものが好き」というのは違うと思う。今回、山田綾音さんは、すごく素敵だと思ったけれど、生身の彼女と接してみたいわけではない。例えば…沢尻エリカは、女優としての演技はとても好きだけれど、生身の沢尻エリカとお近づきにはなりたくない、みたいな。
また、台本を販売していて、「聞き取れないセリフもあったと思うので」と販売促進していたが、聞き取れないようにしか言えないならそれまでだし、逆に「聞き取れないように言う」演出もありえると思う。劇団が勝負するのは舞台であるべきで、台本でみて、というのは筋が違うのではないか。金欠なのかもしれないけど…(^^;;
どちらにしても、とてもいいものを持っている劇団だと思うので、オプションのようなモノを付け足していってかさ上げするのではなく、劇そのもので勝負する侠気がほしいと思った。プライド、というか。「台本なんて、いくら金積まれても見せないよ。舞台観てくれ」みたいな気概がほしいと思った。昭和的考えなのかもしれないけど。
あと…内ケ崎敬明さんは、太賀に似ているなぁ、と思った。思いっきりイヤな人を演じてもはまりそうだ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「薄布」
天ノ川最前線
作・演出:岩崎雅高
シアターグリーン BASE THEATER
2019年4月11日(木)~14日(日)