「浮世の画家」
カズオ・イシグロ、どの作品もあるあるなんだけど、語り手が確信をなかなか語らない。
本当の事を言わない、記憶があいまい、自分でも真実がわからない。
一人称なので、客観的に見た主人公はどんな人なのか、とってもわかりづらい。
まあ、そこが面白くて、ミステリアスなのもあるし、想像する余白もありーので最後まで引っ張るのよね。
今回はそれがNHKでドラマ化。
放送前から、作者へのインタビューや、ドラマの中で使われる絵画についての特集が組まれ、どんな風に描かれるのか楽しみにしていた。
作品を読んだ時に自分なりに解釈していた部分と、違うところはあるのかとか。
日の名残りと重ねて感じていた、主人公の滑稽さはドラマではそれほどではなかった印象。
でもやっぱり、これは喜劇と見るべきなんだろうな。
渡辺謙は、一人相撲で右往左往する小野益治を大真面目で演じていて、戸惑いとかプライドがにじみ出るとことか主人公そのもの。良かったと思う。
それから、改めてこの日本は本当の日本とは微妙にズレているのだと感じた。
あえて言えば、それは日本を長く離れ、その場所から記憶を通して原作が書かれているという事。
日本のような、でもどこでもないどこか、そこがまたカズオ・イシグロ作品の面白さなのかなぁと思う。