なが~い航海から戻った気分だ。
「海賊女王 上下巻」 皆川博子著
アイルランドの海賊女王、グローニャと従者アランの
物語と言っていいだろう。アランの目線で語られてゆく。
時代は16世紀。まさに大航海時代だ
イギリスはアイルランドを植民地にしようと、ゲール語を
話すアイルランドの部族たちと日々戦いを繰り広げていた。
アイルランドの独立を夢見て、10歳から海賊稼業を始めた
族長のムスメ・グローニャ。
もともとイギリスから見たら、野蛮人のような暮らし。
貧しく、外国船からの略奪でしか、戦争の資金だって
集められない。
アラブと同じで小さな部族の集まりでは、族長は
誰も自分の利益しか考えていない。
団結して独立を勝ち取るには、力と知力が必要だ。
気風の良さも備えたグローニャは、周りを引き込み
戦いの日々に身を置きながら、イングランドに抵抗をする。
戦いっぷりが胸がすくようだ。荒くれ男たちを向こうに
回し、全く引けを取らないグローニャ。
時には色仕掛けだってじさない。みんな彼女の虜に
なってしまう
おかげで長年のイギリスとアイルランドの戦いの
歴史がよくわかった。
同い年で女王の位についているエリザベスとの対比も
おもしろい。
しかしただの海洋冒険譚では終わらない。
随所に、解決してない謎がちりばめられており、
下巻半分すぎ、ばらばらと腑に落ちるところへすべて
落ちてゆく。
なるほど!そこか~、みたいなスッキリ感。
プロローグは、なれない外国人の名前がゴマンと出てきて
退屈。しかしこのイングランドの部分が後になると
ちゃんと良く見えるようになる。だからかる~く読んでも
大丈夫。本編からは海賊の大活躍だ。
最後は女傑らしいオワリが用意してあり、まさに
あっぱれな結末。
こんな人生に寄り添って伴走できるのも読書の醍醐味だ。
「死の泉」から10数年。
またアレに匹敵する作品が読めちゃうなんて、とっても
シアワセ。
皆川先生、山崎先生は逝かれましたが、まだまだ
お元気で、若いもんが度肝を抜かれちゃうような
話を書いてください。