動機のない犯罪 | 三龍建築士

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BOX・ドラマ・映画・・・ときどき読書(笑)の日々に変更~

相変わらず、緻密だな~。

カポーティの「冷血」は、ノンフィクションだけど、高村氏は

これをフィクションの形でやろうとしたのかな。



「冷血 上・下」   高村薫 著


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事件は、世田谷一家殺人事件が思い起こさせる。

徹底したリアリズム。捜査の様子も、裁判も。

実際携わっているのではないかと思ってしまう。



かと思えば、犯人・井上がスロットに夢中になって

いる様も、ほんとに台に向かっているような臨場感。

(まさか、先生パチプロだったりして!?



もう一人の犯人・戸田の侘しく空虚な毎日と、切り替わって

映画や芸術の世界へ傾倒する豊かな心を描く。



並行して、13歳の少女がまばゆいばかりの日々を

おくる姿を、みずみずしく描いておきながら、

容赦なく切断してしまう鮮やかなまでの残酷さ。



おなじみの合田刑事はここでもまた犯人の心に

せまり、よりそい、自身も傷つきながらまた

浄化されてゆくさま。



金の為でもなく、侵入を発覚されたからでもなく

ただ殺してしまっただけという犯人。

・・どうしてかわからないが瞬間の思いだけで

人を殺めてしまった。

本人達にもわからない動機。

どうしても納得いく答えが欲しい警察と検察。



実際はそんなものなのかも。世の中のことがみんな

2時間ドラマみたいにすっぱり解決して整合性を持つなんて

ありえないのでは。


言葉にしたら、カッとなってとか、生い立ちがどうとか、

後付けはできるけど、ヒトのやることなんて、何もかも

理由あるわけじゃなし。


よく考えたら、真実はこんなものなのかもしれないね。


よく似たノンフィクションでは、「心臓を貫かれて」って

作品を読んだことがあるけど、犯人の弟が書いていて

かなり肉薄する内容。


それでも核心についてはやっぱりわからないのだ。


(これ、マイケル・ギルモアて人が書いたんだけど、

日本訳は村上春樹氏。巨匠2人、こうした心理に

迫りたい気持ちってあるんだな、きっと)



「晴子情歌」は挫折したけど、今回はこの分量に

じっくり付き合えた。「李歐」以来の感動。







ゼンノスケ、可愛い~いラブラブ
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