久世光彦VS.向田邦子 | 三龍建築士

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BOX・ドラマ・映画・・・ときどき読書(笑)の日々に変更~

もともと向田邦子と言うより、久世光彦の著作に興味があって

その後、ドラマのカテゴリーで向田邦子に関心を持った。

二人は、有名な「寺内貫太郎一家」などを一緒に制作していて、

お互いに密かに火花を散らすように、仕事をしていたそうである。


向田氏が、日常に潜む人々の情念や見過ごしているちょっとした

感情を暴き出すのが得意なら、久世氏は、どちらかと言うと古典的な

時代背景が多く見られ、乱歩を書いたときは、乱歩その人が書いた

ような鬼気迫るものがあって、どちらかと言うと、後者の方が好み

だった。


余り知られていないが、最近ベストセラーの「怖い絵」も、中野京子氏

より前に書かれていて、本当に怖い絵が満載の上、絵にまつわる

久世氏のエピソードなどが、まるでその絵を挿絵にした一つの文学

作品のように書かれている。


向田氏は、どちらかと言うと、没後、その生き方に興味を持った。

生前のたくさんの写真や、人には見せなかった孤独や努力、隠された

恋人の話etc・・。


彼女の世界観は、私には映画やドラマの方が分かりやすい。

特に死後毎年正月に、久世氏が制作していた、向田邦子スペシャル。

「春が来た」は桃井かおり・松田優作出演の、珍しいホームドラマ。

でも、オチがとっても向田作品らしい断崖から転げ落ちるような話

で、しばらくショックで立ち直れなかったショック

以後は、毎年女ばかりの家族の正月風景のなかに、さざ波のように

おこっていく事件をえがいており、設定が同じだけれど、楽しみにして

いた。

ある年で終わってしまい、大変残念だった。


2人とも全く違う個性の作家だったと思うが、その個性がぶつかり合う

ことで、古臭くて、ユニークでオカシミのある稀有なドラマができた。

オンタイムで見られて育ったことをとてもラッキィに思う。