ロシア語で日本の昔話を子に読んだ。
ロシア語題:барсук и волшебный веер
『ムジナと天狗の羽うちわ』
『天狗の羽うちわ』に似た話で、
ムジナが子天狗達をだまして、
鼻が伸びたり縮んだりするうちわを奪い取る。
悪だくみはうまくいくんだけど、
うっかり伸ばし過ぎた鼻が天に固定されて
そのまま天高く飛んでいってしまう…という話。

ロシア語題:барсук и лисёнок
『ムジナと子ギツネ』
こっちは『子ムジナの敵討ち』と似ているけど、
ムジナとキツネの立場が入れ替わっていて、
母を殺された子ギツネが復讐する話。

なんか、挿絵を見て気づいたんだけど、
描かれているのがタヌキじゃない。
ロシア語のбарсукは日本語でアナグマ。
ずっと、タヌキのことを「барсук(アナグマ)」
と訳しているもんだと思っていた。
でも、調べてみると日本語で「ムジナ」は本来
アナグマを指す言葉で、民話の訳としては
むしろ正確なんだ。
私はなぜか「ムジナ=タヌキ」と思い込んでいた。
でも、「アナグマと天狗のうちわ」って言われても
なんだか日本の昔話っぽくないような。
山で野ウサギやイノシシを見かけたことはあっても、
アナグマを見たことはないし、
テレビでタヌキやハクビシン、アライグマの目撃情報を
聞くことはあっても、アナグマの話は全く耳にしないから。
ちなみに、ロシア語でタヌキはенотовидная собака。
直訳するとアライグマのような犬。
日本語版ウィキペディアでは、
タヌキの詳しい分布図が載っている。

ロシア語版ウィキペディアになると
аборигенный (вид) → 在来種(青)
завезённый (вид) → 外来種(赤)
という区別で表示されている。
1920年代に毛皮目的でロシア西部に持ち込まれ、
逃げ出した個体が繁殖したりして居着いたという。
だけど、モスクワのロシア人はあまり認知していない。

日本でアライグマが特定外来生物として
駆除対象であるように、ロシアでも
地図上の赤い地域ではタヌキが侵略的外来種とされている。
一部の地域では駆除を承認しているが、
毛皮の価値が低いせいで猟師が熱心にならないそうだ。
ロシア語題:отважный заяц(勇敢なウサギ)
『カチカチ山』本文中で、タヌキがенотと表記されていた。
それではアライグマになっちゃうじゃないか。
このカチカチ山に寄せられたロシア人のコメント:
『Что за кошмар???? Это просто ужас!!
Не сказка, а детектив +16 убил старуху?
Поджег енота!!! Кто потом вырастит на таких сказках?
なんて恐ろしい!? 本当にひどい!!
おとぎ話じゃなくて、ミステリー+16禁だよ。
おばあさんを殺したの?
アライグマに火をつけるなんて!
こんなお話で育ったら、子供はどうなるんだ?』
日本の民話は人間の良い面も悪い面も描写するし、
ハッピーエンドばかりとは限らない。
ロシアの民話も悲喜こもごもだけど、
ここ数十年はできるだけポジティブな話を
聞かせようという傾向にあると思う。
他にも読んだ。
ロシア語題:сказание об Миминаси Хёйчи
『耳なし芳一』は(耳なしヒョーイチ)と訳されていた。
ロシア語題:Соломенные шляпы для Дзидо
『笠地蔵』は(ジドのための笠)になってて、
「ジドって何?誰?日本語?」と思ったが、
これは単なる入力ミスで、本文ではДзидзо「地蔵」と
正しく書かれていた。
ロシア語題:Юкки Онна
『雪女』は(ゆっき女)。
なんだこの楽しいの?と思ったけど、これも入力ミス。
本文では「Юки-онна, О-Юки(雪女、お雪)」
になっていた。
日本の昔話を外国語で読むと、
翻訳のズレや文化の違いに気づかされて、
なかなか面白い。

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