前回の話はこちら→職人の逸品に触れる
リビングに案内されると、壁一面にズラリと櫛が飾られていました。


この3本の櫛のうち下の2本は、イザナギが黄泉の国にイザナミを迎えに行くも、禁忌を犯してしまい慌てて逃げ帰るというあの神話に出てくる櫛と同じ形だそうです。
昔話「三枚のお札」みたいな話で、追手の足を阻むのに櫛を投げたところ竹に変わったというもの。
神社に納められたものだけあって由緒があるんですねぇ。
他にも、皇室に献上するものの複製等も飾られていました。
先代は、神社や皇室に納められたものの修復や複製を作る仕事もしていたようで、それらが飾られていました。
もう到底お値段なんてつけられないほどの価値があるそうです。
象牙でできたものや螺鈿細工が施されたものも飾られていて、さながら小さな博物館のようでした。
ひととおり拝見してから本題の自分の櫛へ。
櫛の目の細かさがいくつかあること、朝夕にとかすものと髪型を整えるのとでは本来違う櫛を使うということを教えてもらいました。
最初に持つ櫛は朝夕とかす用を持つのがよく、それには中目という粗さが一番使いやすいそうです。
ただ、これは好みもあり、それよりもう少し細かいものを選ばれる方も多いとか。
ちなみに、今作っているのは基本的に全て薩摩のつげだそう。
江戸時代辺りでは桜が使われていて、でももう伐採しつくされてしまい、それでつげが使われるようになったけれどつげも伐採しつくされてしまい、今では国産のつげは薩摩にしかないのだとか。
なので、安く流通している「本つげ櫛」は全て海外のつげを使っているのだそう。
それから、本当に貴重なことにイスという材木を使ったものもありました。実はこれこそが私の目的。
小国神社という神社のご神木から作られたもので、木目が出てしまうし色も明るいのだけど、神木だから作らせてもらっているとおっしゃってました。
私は小さい頃からこの小国神社に初詣してましたから、お守りとして1つ欲しかったんです。
神木という特性上、材料が常に手に入る訳ではないとのこと(神社の事情で切ることになると手に入るそうです)。
今回はたまたまあったようで、これはもう買うしかないと。
富士山の形のものと四角いものがあり、富士山の形も素敵でしたが最初は無難にと四角い方にしました。
イスももう伐採しつくされてしまい、ほとんど手に入らないそうです。
神木をいただくのにも、一番小さいサイズの櫛がギリギリ作れるくらいの大きさなんだとか。
「もっと大きい方がざくざくとかせて便利」だと説明されましたが、もともと小振りのが欲しかったのもあり、迷わず決めました。
で、私が買ったのがこちら。
上の写真の「猿田彦神社」に納めたものと同じ形なので、ご主人は「猿田彦形」なんて呼んでらっしゃるそうです。
縞模様のケースは「遠州木綿」という地元のものだそうで、「これはオマケよ~」といくつかある柄の中から好きに選ばせてくださいました。
義母のは写真に撮りそびれてしまいましたが、「びんかき」というヘ音記号みたいな形のものと、髪をセットするときに使うものの2つを選んでました。
気になるお値段ですが、私のはご神木なので5,000円でした。
つげだったら野口さんがもう少し少なくて済みます。
「櫛なんて100均でも買える」と言われそうですが、職人さんが全て手作りで作ること、今では国産は貴重であることを考えるととてもお値打ちだと思います。
当然ですが、お値段は大きさや形によって変わってきます。
さて、最後に、(個人的に)目からウロコだったお手入れの方法と、一番大事な職人さんの連絡先をまとめておきたいと思います。
後日に続きます。