『欲望』/小池真理子 | らっぱの散歩道

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『欲望』/小池真理子(新潮文庫)



タイトルとは相反して
読み終えたときに空虚感を感じた作品だった。

袴田に潜む闇の影を暗示して結末を迎える。



欲望と喪失は対極でいて、紙一重なのかな、と。




炎と深海を一度に見た印象でした。






欲望もさまざまで、精神的な愛欲、肉体的な愛欲
バランスがうまくいかないそれら。

欲望のキャパというのは無限にそこはかとなく
これ以上ない、というくらい満たされるなんてことは
ほとんどないのだろう。






不倫の肉体関係と、その傍らで純粋な精神愛に溺れる類子。
美貌を持つのに愛に飢えるアサオ。

二人の対象は、美男でいて事故で性的不能になってしまった、正巳。

二人の正巳への、欲望の形が違うのだ。


「あなたは愛した人が性的不能者であっても愛せますか?」





そして、

「美しいもの」

それは何?飾り?







三島由紀夫の作品をこんなに前面に出している作品も少ないのではないだろうか。

三島の館を模倣した家、『仮面の告白』『春の雪』(豊饒の海シリーズ)、『金閣寺』など。


『金閣寺』は読んだ。
これは美に対する憧れと憎悪を表現したもの。
私にはまだまだ理解が浅すぎて、レビューを書けずにいる作品だ。

『仮面の告白』と『春の雪』も、いつか一度読もうと思う。


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p.476
『死と隣り合わせになった時こそ、人は生涯でもっとも美しいものを感知することができるのでしょうな。・・・・・所詮、美の行き着く先は、死なんですから。』