それは少し前のこと……。とあるミネラルショーへ行っていた私が、たまたま良いゼッカ水晶を見つけて、買おうか買うまいか迷っていた頃です。
「買った方がいいですよ」
へ? と虚を突かれた私は、思わず水晶から顔をあげると、何だか穏やかそうな店長さんの顔がありました。
(……押しは強そうじゃないが、妙にはっきりとしたことを言うもんだな……)
何はともあれ、話を聞いてみることにしました。
置いてあるゼッカ同士で良さの違いを解説しつつ、ゼッカそのものの良さをお話してくれた上で、買った方がいい話題に移りました。
「いやあ、昨今の情勢でねぇ。……その子、ドル円がさ、110円の時に買ったんですよ」
「ああ!? なるほど!?」
そう来たか。
なるほど、ゼッカ水晶はブラジル産だ。当然通貨も向こうのハードカレンシーであるドルで取引されているわけで、つまり……。
「こっちのゼッカは120円の時に連れて来た子でね、だから値段が違うの」
別のゼッカを指し示しながら、苦笑いして説明してくれました。
悪くない色をしていたし、それはそれでよい形をしていたけれど、正直110円の時に取引されたものの方が結晶の形が綺麗に出ています。
「こちらも悪くはないけど、お客さんが手に取った方(110円)が質はいいでしょ?」
うぅん、と思わず唸ってしまいました。
なるほど、世界情勢の流れが石の世界にまで来てしまったか……。つまり天然石のだいたいは、現在サイレント値上げ状態なわけです。
「だから、買うなら買った方がいいわ」
「買いますわ」
即答でした。
金銭的に素直な話を聞かせてくれる店はとんでもなくいい店です。ものも良ければ買わない理由がありませんでした。
……石というのは、どの石もだいたい、出始めがトップクオリティです。
その後は、よほど新しい鉱床が来ない限りは、最初の質をなかなか超えられません。
産地名のついた石というのは、特にですね。
金融市場も多く関わります。
石の多くが輸入です。そこは揺るぎません。それが故に貨幣価値が変わった時には、取引額がかなり変わってしまいます。
この石が欲しい! と思った時には相場を確認しつつも、そこら辺を考えて取引するのがいいですね。