霧のなかに霧



愛するひとと 肩をならべて 歩く


高鳴る鼓動を かき消すように


流れる川のせせらぎは 


小鳥のさえずりとともに なめらかに メロディーを奏で音譜


いま昇った朝日は やわらかな光で


朝露に濡れた 若緑の草原を きらきらと 輝かせる


この前とは まったく違う景色のなかで


昨日を語り合い 今日を微笑み 明日からの夢を つむいでいく


あー こんなにも心地良い時が この先もずっと続く…


震えるほど 胸がいっぱいになり 大きく息を吐いた




ふと気づくと ひとり 歩いていた


振り返ってみると 一面 霧に覆われている


川面から立ち上る水蒸気が やがて真っ白な 霧のベールとなって


愛するひとを 覆ってしまった


手を伸ばしても 指もふれない


いくら呼んでも 声さえも 聞こえない


真っ白な霧は


あなたが さっきまでここに いたことも


あなたが どんなひとだったのかも 覆い隠していく


霧のベールは どんどんと 濃くなって


やがては


誰よりも…


痛いほどに 深く 愛したことさえも 覆ってしまうのだろうか




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