Inside the Battle with Temptation <煩悩との戦い>

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ブログ小説 「再開その日まで」
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第一章「君のいない未来へ」もよんでね 

こんばんは、Tataです。

今は昔、
マルチ商法の勧誘という、現代社会の洗礼を綺麗にカウンターで引っぱたいた時の出来事です。
場所は、とある都内のカフェ。

対面に座るのは、怪しいビジネスにハマって目の奥の光を失った知人。
そしてその隣には、「トップディストリビューター」とかいう肩書きの、喋りのプロ。

さらに私の横には、同じくカモとして呼び出された、一般人女性のAさん。

席につくなり、始まる見事な急転直下。

「今の生活に満足してる?」
「権利収入って知ってる?」
「このサプリ、本当に凄くてさ」

トークは流れるようで、隙がない。
横のAさんは、あまりの気迫に完全に呑まれ、今にもハンコを押しそうな顔をしています。

(なるほど、こういうシステムか)

普通の人なら、ここで「お金がない」「時間がない」「友達が少ない」と防戦一方になるところでしょう。でも、そんな定番の言い訳は、彼らの100ページあるマニュアルで対策済み。

(どうする。ここで使えるのは何だ?)

そう、相手の想定の斜め上をいく「マルチ相殺大作戦」、発動!

まずは下準備。

相手のプレゼンを聞きながら、身を乗り出して最高の笑顔を作ります。

「え、凄い!めちゃくちゃ素晴らしいビジネスですね!これなら絶対に儲かるのも請け合いじゃないですか!」

がっつり食いついた。

勧誘員の目がギラリと光る。

「ノルマ1人GET、いや2人GET」という心の声が、カフェのBGMを突き抜けて聞こえてきそうでした。

そして、相手が勝利を確信し、契約書を差し出してきた、その最後の詰めの瞬間。

「本当に素晴らしい。だから、提案なんです。実は私も、別のネットワークビジネスの会員をやっていまして」

意外な言葉に、勧誘員二人の動きがピタッと止まる。

「お互いのビジネス、本当に素晴らしいですよね。だから相殺しましょう。あなたが私のネットワークビジネスに入ってくれれば、私もそっちに入ります。費用は相殺ってことで」

沈黙。

「あ、ちなみに私のところ、今なら後発の新規グループを立ち上げたばかりなので、今入れば最初から役職が上のポジションを約束できますよ?うちのシステムも凄くてですね……」

形勢逆転。

今度はTataが、流れるようなオウム返しで勧誘を仕返し始めました。
さっきまで饒舌だったプロの顔が、マニュアルのページを必死にめくるような顔で固まっていく。

「お金がない」への切り返しはあっても、「別のマルチを相殺しようと言ってくるサイコパス」への対処法は、彼らのマニュアルには載っていなかった。

「……あ、いや、そういうのはちょっと……」

蚊の鳴くような声でそう言うと、彼らは早々に荷物をまとめて退散していきました。
ふと横を見ると、今にも泣きそうだったAさんが、私の神業を見て「あ、これ乗らなくていいやつだ」と完全に正気を取り戻していました。

狙ったわけではありませんが、結果的に一人の若者を高額契約の手前から救い出してしまったわけです。
こうしてまた一つ、武勇伝が増えました。

<撃退の極意とは>

正論で戦うことではない。
相手と同じ土俵に立ち、相手以上の怪しさで包み込むことである。
それにしても、彼らのマニュアルのアップデートに、Tataの事例は追加されたのでしょうか。

今日もまた、誰も勧誘できない最強の会員(自称)は、静かに俗世を歩いていくのです。