「二人に一人が癌になる時代」
と、言われていても…

自分が「癌」だとわかれば…
皆、うろたえる。

それでも…
今「癌」は、治る病気だ。

「早期癌」の場合は…
完治をめざして、立ち直って行く。


問題は…
私のように「末期」となった癌患者だ。


治療のかいなく、
私が「末期」のステージに転落して、落ち込んでいた時…
夫が言った。
「誰もみんな死なないのに『君だけ死ぬ事になった』っていうんなら、残念だケド…遅かれ早かれ、みんな死ぬんだよ」

そう「人間は、致死率100%」って事を、普段みんな忘れている。

狭い一本道のすぐ脇は、断崖絶壁なのに、
そこにカーテンがかかっていて、見えないようになっているようなものだと思う。

ただ…

「末期癌患者」にとっては、
そのカーテンは、常に、取り払われたままだ。


長い間…
自分が死ぬという事を受け入れられなかった。
「死」が怖くて仕方なかった。

自分が認識しているから、この世があるのに…
その自分がなくなってしまうという事が、どういう事なのか、理解できなかった。

答えが欲しくても、誰も答えてくれない。
死んだ後の事は、死んだ人にしか聞けないから…


「死」へと向かう苦しみは「痛み」と、よく似ている。

たとえ、愛する人であっても…
本人にしか、わかり得ない部分が大きい。



余命1~2年と言われてから…
もう4年になる。

ずっと…
「死」を意識しながら、生きてきた。

末期癌患者にとって…
「死」は「概念」ではなく「感覚」だ。

「死」を、全身が粟立つほどに、近く感じる時…
「命」は「奇跡」なんだと納得する。



描いてきた「軌跡」が「私の人生」
たった一度きりの「私の人生」

「失敗」は、あったけど…
「後悔」は、ない。

だって…
その時、その時、
一番いいと思う選択をしてきたんだから…


人は…
「真理」ではないものの前で、もがき苦しむ。

自分の「死」を否定すれば…
もがき苦しむ。

「死」も「病」も「苦しみ」も…
そのままに受け入れられれば…

ただ…

一日一日を、
感謝と共に生きて行ける。

四季折々の…
ありのままの自然の姿のように…



「生」と「死」は…
織り成す一本の道のように繋がっている。

生きてきたように…
人は死ぬ。









裕子