私は、毎朝…
熱や痛みで動けない時以外は…

△男が起きる30分前には起きて、
冬は、部屋をあたため…
夏は、涼しい風を入れ…
朝食を用意して、△男が起きるのを待つ。


「行ってきま~す!」

△男の、明るい声を聞く時…
私の心は「幸せ」に満たされる。

見送りながら…
私は、いつも十字をきり…
心の中で祈る。
「神様、今日も、△男とお弁当屋のみんなを、悪魔から守って下さい!」


悪魔は、何食わぬ顔で、人間の中にひそむ。

昨日の事件は、ショックだった。



多くの自閉症者は…
体は大きくても、かわいい子犬のような目をして、争い事を好まない。

そんな無抵抗の彼らを襲うなんて…


わかっている。

私達「健常者」は…
たくさんの「罪」を抱えたまま「死の扉」を開ける。

でも…
彼らは「罪」を持たない。
まっすぐに天国へ昇り、神様の側にいるってわかっている。

けど…

「怖かったろうネ、痛かったろうネ」

泣けて…泣けて…


ヤツは、人じゃない。
悪魔に、人の理論は通じない。


でも…

ごく普通の人達の間にも…
「障害者差別」はある。


△男への危険も鑑みた上で…
TV に映る事を選んだ。

少しでも…
「自閉症」を知って欲しくて…


今は、ただ虚しい。


だけど、諦めたくない。

人ではない、ヤツのようなのは、別として…

「いい人」「悪い人」
「障害者差別をする人」「しない人」
なんて、単純に分けられない。

人は、変化して行くものだから…



人間はバカだ。

失って初めて…
大切なものに気付く。

その立場になってみないと…
気持ちがわからない。

そんなにも「バカ」で「傲慢」なのに…
自分は、いい人だと思っている。

そう、若い日の私は、そうだった。

何一つ、不自由なく…
ちやほやされて…

「障害者」は価値のない人だと思っていた。


57才の今は…

「貧乏暮らし」「障害者の息子」「末期癌」で体は不自由となり、余命も限られている。


でも…

私は…
今の自分の方が好きだ。
私は…
今の方が「幸せ」を強く感じている。

すべて…
息子を通して、学んできた。

息子は、お世辞はもちろん、うまいことなんか言えない。

でも…

思いやりに溢れた行動や…
きらきらとした瞳に出会う時…

人間の「真髄」を見る思いがする。


誰もかれも…
自らの保身に、汲々として…

誰もかれも…
一番争いに夢中で…

誰もかれも…
簡単に嘘をつき…

誰もかれも…
金で動く…

その上っ面な輪に中に、息子達は、入っていない。
「バカだから…?」


だけど…

世の中って…
捨てたもんじゃない。

私より「いい人」「素晴らしい人」がいっぱい!
(当たり前か…)


「幸せ」って…
自分だけの「幸せ」なんか、あり得ない。

犯人は…
「世の中、不幸な人ばっか!幸せな人なんかいない!」
って、言ってた。

「自分」だけが、やたら大きくて…
「自分」の事しか考えられない人は…
たいがい「不幸」だよね。







裕子