長女を出産した直後…

同じ体の中で共存していたのに、ぺちゃんこになったお腹が、妙に寂しかった事を覚えている。

「私と赤ん坊は、別の人間」

初めて感じた「親子の線引き」


補助輪が外れたばかりの自転車のように、若い母親は、試行錯誤の中で、子育てを進めて行く。

理想通りに育って行く長女を褒められる度、自分の手柄のように錯覚していた。


反転して…自閉症の長男の起こすトラブルは、一つ一つ、矢のように、突き刺る。

「同じように…いや、長女の時よりも、ずっと、一生懸命、子育てをしているのに…ナゼ?」


「いい子だから…」「利発な子だから…」「親思いの優しい子だから…」

自閉症の息子は、全て当てはまらない。

でも、まてよ…「~だから」子供を愛するのか?都合の悪い子は愛される資格がないのか?

息子の存在は、一つ一つ、疑問を投げかける。

親としての「自分」というものを捨てて、子供の気持ちに寄り添ってみる。

息子が「幸せ」を感じられるなら…それ以上、望む事はないじゃないか。

「幸せを感じる」というのは、甘やかす事とは違う。本当に「彼の幸せ」を望むなら、厳しい時もある。


次男は体の弱い子だった。

長男とは違った意味で手がかかる。

友達も少ない。

ひたすら、抱きしめた。


今年4月、末っ子次男は、大学の寮で一人暮らしを始め…

来月、長女は、結婚…

26才の自閉症の長男は、自宅から作業所へ通っているが、いつでも、グループホームでやって行けそうだ。


私からの「線引き」をする必要もなく、3人とも、自立している。


空の巣にバンザイして、自分の人生を楽しむ…

そんな、カッコイイ、ものわかりのいい母になりたい。


しかし、長男に対しては、いつになっても、ダメ母ちゃんのままだ。


君を守りたい…

許されるなら…ず~と、一緒にいたいんだよ…