休日になると、彼は、家中の補充品をチェックしてメモする。

そして、近所のスーパーへ買い物へ…

一緒に行く時は、重い物を持ってくれる。


こんな穏やかな日々を、彼が幼い頃想像した事はなかった。

彼は一生のお荷物だと思っていた。


自閉症が治ったわけではない。

私が変わったのだろう。


障害を持って生きるという事は不自由だ。


彼は、相手が話す事の殆どを理解できない。

(私が、次男の話す数学や化学の話を聞いている時の気分かナ~笑…)

彼の中に、溢れる想いがあるはずなのに、話しはたどたどしい。


でも、彼は黙々と仕事をする。

「ありがとう」

と私が言うと、かすかにほほ笑む。

普通の人がフンと笑うような…

日常の些細な事に中に喜びを見つけて、ニコニコとする。


彼と共に、街へ出れば…

蔑みを含んだ好奇の視線に出会う時もある。

「気にする事なんてないよ」

私は君の中に真実をみる。


人として、君の生き方を見習いたい。


「末期癌」となって…

失ったもの、できなくなった事に目を向けるんじゃなくて…

できる事をコツコツと…


描けない未来なんてない。

「今」が「未来」だ。


もう一度、

最後に、君に何を残して行けるのか…

日々、真剣に考えて行きたい。


裕子船