ホツマ国(ハラミ山を中心にした東海・関東地方)の政庁を兼ねていたサカオリ宮に入りました。
宮では、国守護(くにしゅご)のオオヤマズミ(大山祇)が歓迎の御饗を開きます。この新都の決定に華やいだ宴席で、ニニキネのおそばに侍って御膳(みかしわ)を捧げたのが、みめ美しく心優しいオオヤマズミの末娘のアシツ姫でした。ニニキネはそのたおやめぶりが一目で好きになられてしまい、その夜姫を召されて愛のちぎりを結ばれました。
母親は「実は妹のアシツより美しい姉を連れてまいりましたのでお召し下さい」と、何やら男心を誘うような口ぶりです。つい二心(ふたごころ)をおこしたニニキネは、姉のイワナガ姫をお召しになります。と、どうでしょう。身体はゴツゴツしていかつく、顔はあまりにも醜く、びっくりした君は肝を潰して奥に引っ込んでしまいます。これを聞き知った父オオヤマズミは驚いて、母を厳しく叱責し、「男心は男にしか解らないのだ。こうなることは最初からわかっていたから、あえて姉を君の前に出さなかったものを、余計なことをしてくれた。早くミシマに帰れ」と、追いやりました。この父の仕打ちに逆恨みした母と姉は、下女(しもめ・女官)に賄賂(ワイロ)をにぎらせて、「アシツが浮気してできた他の男の種です」と、君に告げさせ、妹を陥れる陰謀を一夜がかりで練ります。
アシツ姫はふと、自分が母と姉から妬まれ、いわれなき罪に落とし込まれたことを悟った時、何故か毅然として今までの不安が吹っ切れた姫は、自分の運命に正面から立ち向かおうとする強い心がよみがえり、一本の桜に誓いをたてます。「桜よ、さくら、心あらば、私に降りかかった妬まれの恥じをそそいでおくれ。
もしお腹の子が仇種(あだだね)ならば花よしぼんでしまえ。
正種(まさだね)ならば子が生まれる時に、花よ咲け。絶えることなく咲け」と、三度(みたび)誓い、桜に思いを込めてここに植え、里のミシマに帰りました。ハラミ山(富士山)の裾野に無戸室(うつむろ・出入り口の無い立穴式住居)を造り、まわりを柴垣で囲み、母と三人の子は最後の誓いを立てて中に入ります。
「本当に仇種(あだだね)ならば、一緒に死のう」火を付け焼けば、子供達は熱さにもがいて這い出ようとします。これを知ったハラミ山のコノシロイケ(子代池)の竜が、助けに現われ、水を吹きかけ雨を降らせて、御子を一人一人導き這い出させます。
諸人は驚いて大勢駆けつけ、火を消してアシツ姫を引きい出し、子供達と姫を御輿に乗せてサカオリ宮に送り届け、イセに一部始終を告げます。
実はこの頃ニニキネは、シロコの桜が姫が子を生んだ日から咲き続けて絶えないのを知って、はやる心で、カモ船を飛ばしてオキツ浜(興津浜)に着くと、早キジ(伝令)をサカオリ宮に飛ばし、姫に会いに来た旨を伝えます。
が、今だ閉じたままの姫の心は、素直に君に会う力も無く、かたくなに衾(ふすま・ふとん)をかぶったまま身動き一つしません。
キジは飛び返って、君に姫の様子を報告すると、君はしばし思案した末に、和歌を短冊にしたためて、今度はオキヒコを正式の勅使として、この歌を姫に届けさせます。
沖つ藻(も)は辺(へ)には寄れども清寝床(さねどこ)もあたわぬかもよ 浜つ千鳥よ
オキヒコから歌を押し戴いた姫は、この歌を読んで、今までの恨みの涙も一度に解け落ち、君への思いが胸に込み上げて、素直でいじらしかった昔の心に返った今、君に会いたさの一心から、裸足のまま裾野を走りに走ってオキツ浜に待つ君のふところに飛び込みました。姫には子供を生んだ日から桜花が断(た)えず咲いているので、今よりコノハナサクヤ姫という、美しい名を贈られた」
宮では、国守護(くにしゅご)のオオヤマズミ(大山祇)が歓迎の御饗を開きます。この新都の決定に華やいだ宴席で、ニニキネのおそばに侍って御膳(みかしわ)を捧げたのが、みめ美しく心優しいオオヤマズミの末娘のアシツ姫でした。ニニキネはそのたおやめぶりが一目で好きになられてしまい、その夜姫を召されて愛のちぎりを結ばれました。
母親は「実は妹のアシツより美しい姉を連れてまいりましたのでお召し下さい」と、何やら男心を誘うような口ぶりです。つい二心(ふたごころ)をおこしたニニキネは、姉のイワナガ姫をお召しになります。と、どうでしょう。身体はゴツゴツしていかつく、顔はあまりにも醜く、びっくりした君は肝を潰して奥に引っ込んでしまいます。これを聞き知った父オオヤマズミは驚いて、母を厳しく叱責し、「男心は男にしか解らないのだ。こうなることは最初からわかっていたから、あえて姉を君の前に出さなかったものを、余計なことをしてくれた。早くミシマに帰れ」と、追いやりました。この父の仕打ちに逆恨みした母と姉は、下女(しもめ・女官)に賄賂(ワイロ)をにぎらせて、「アシツが浮気してできた他の男の種です」と、君に告げさせ、妹を陥れる陰謀を一夜がかりで練ります。
アシツ姫はふと、自分が母と姉から妬まれ、いわれなき罪に落とし込まれたことを悟った時、何故か毅然として今までの不安が吹っ切れた姫は、自分の運命に正面から立ち向かおうとする強い心がよみがえり、一本の桜に誓いをたてます。「桜よ、さくら、心あらば、私に降りかかった妬まれの恥じをそそいでおくれ。
もしお腹の子が仇種(あだだね)ならば花よしぼんでしまえ。
正種(まさだね)ならば子が生まれる時に、花よ咲け。絶えることなく咲け」と、三度(みたび)誓い、桜に思いを込めてここに植え、里のミシマに帰りました。ハラミ山(富士山)の裾野に無戸室(うつむろ・出入り口の無い立穴式住居)を造り、まわりを柴垣で囲み、母と三人の子は最後の誓いを立てて中に入ります。
「本当に仇種(あだだね)ならば、一緒に死のう」火を付け焼けば、子供達は熱さにもがいて這い出ようとします。これを知ったハラミ山のコノシロイケ(子代池)の竜が、助けに現われ、水を吹きかけ雨を降らせて、御子を一人一人導き這い出させます。
諸人は驚いて大勢駆けつけ、火を消してアシツ姫を引きい出し、子供達と姫を御輿に乗せてサカオリ宮に送り届け、イセに一部始終を告げます。
実はこの頃ニニキネは、シロコの桜が姫が子を生んだ日から咲き続けて絶えないのを知って、はやる心で、カモ船を飛ばしてオキツ浜(興津浜)に着くと、早キジ(伝令)をサカオリ宮に飛ばし、姫に会いに来た旨を伝えます。
が、今だ閉じたままの姫の心は、素直に君に会う力も無く、かたくなに衾(ふすま・ふとん)をかぶったまま身動き一つしません。
キジは飛び返って、君に姫の様子を報告すると、君はしばし思案した末に、和歌を短冊にしたためて、今度はオキヒコを正式の勅使として、この歌を姫に届けさせます。
沖つ藻(も)は辺(へ)には寄れども清寝床(さねどこ)もあたわぬかもよ 浜つ千鳥よ
オキヒコから歌を押し戴いた姫は、この歌を読んで、今までの恨みの涙も一度に解け落ち、君への思いが胸に込み上げて、素直でいじらしかった昔の心に返った今、君に会いたさの一心から、裸足のまま裾野を走りに走ってオキツ浜に待つ君のふところに飛び込みました。姫には子供を生んだ日から桜花が断(た)えず咲いているので、今よりコノハナサクヤ姫という、美しい名を贈られた」