佐藤紅緑の句 復本一郎50選より、春の抄からラファエル志門選

【春】

春浅き盥に襦袢漬けてある

藁屋根が吸ひ込む雨の暖かに

服薬を忘れて客と麗かに

うたゝねの肱のしびれや春の宵

不図気付く鏡のしみや春のくれ

行く春の薬をすてる女かな

井戸端に櫛忘れあり春の雨

我骨に陽炎立とたちつくす

陽炎に頭痒がる地蔵かな

赤い下駄鞦韆の下に脱いであり     注記←鞦韆しゅうせん読むのか?ブランコだって

うかれ猫鼻くろぐろとおはしける

蛤の舌長々と語り去る

散るを直ぐ掃かれたるを直ぐ散る椿

空家なりしがいつ毀ちけん草萌ゆる

鏡台があれば春めく小部屋かな

子を負うて釣する人や春の川

大仏の瞼重たし夜の朧

陽炎に鍬突き刺して人あらず