
「アルプスの少女ハイジ」や「あらいぐまラスカル」の作詞でも知られた岸田さんの詩は
平易でわかりやすく、すぐ心に届きます。
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迷い子の道
あの青い花の咲く道では だれでも
いちどは迷い子になるのです
さっき来た道を 行ったり戻ったり
迷子になったことが 嬉しいから
私の海
明日は海を描こうと思いながら
今日も私は舟を描く
明日は空を塗ろうと思いながら
今日も私は雲を塗る
波は私の云うことをきかないで
おとといの葉書のように
私は木の葉ばかりを受け取った
もっと離れた所では
パレットの形の村があって
教会に色が溢れている
今日は空に返事をしようと思って
私は梢を描く
けれども風は旅仕度にいそがしい
たいせつな一日
出さなかったハガキが
気になる日には
ハガキよりも もっと遠くへ
出かけてみよう
急行のとまらない駅で下りて
人の列から すこしおくれて
歩いてゆくと
音のない 林を出ます
水の音を つたえたくても
鈴の音を ならそうとしても
まだ きこえてこない
小さい花々の しじまのむれ
それは だいじな一日です
日記帖を 買うことよりも
花のかず
ひとは行くところがないと
花のそばにやってくる
花は 咲いているだけなのに
水は ひかってるだけなのに
花のかずを かぞえるのは
時をはかる方法
ながれる 時の長さを
人は 群れからはなれると
花のそばへやってくる
花は 黙っているだけなのに
水は みなぎっているだけなのに