レンタル MY LOVE
「いらしゃいませ、お客様。今日は何をお探しですか?」
棒読みのセリフでコンピュータのなかの女性が声をかける。
ここはレンタル店。
CDやDVDのレンタルを扱っている。
店長は、コンピュータの中の女性
山田さん
店員は、この春からアルバイトをはじめたばかりのあたし、ただ一人。
店長の山田さんは、一人で十分と採用されたときの面接でそう言われた。
冗談きついと思ったが
冗談ではなく、実際にバイトを始めると、一人で十分だと分かった。
お客さんはタッチパネルでレンタルした品物を選んで、
お金を払い、品物は受け取り口から自動で出てくる
すべてオートシステムが整っていた。
山田さんに聞いた
「あたしは何をしたら・・・・」
山田さんは
いてくれるだけでいいと言う。
何もすることもないのに、あたしは何のためにバイトにやとわれたんだろうと
疑問に思いつつ
ただ、オートシステムの裏側で、モニターを見ながら、ボーっとする日々を送りながら
そろっとボーっとしているのも苦痛であきてきたころ
一人のお客が入ってきた
ボーっとしていたあたしは
一瞬で、モニターにうつる人を見て、胸がドキドキして、
動揺していた。
写っていたのは
ちょっと前まで同棲までしていた元彼だった
「なんで・・・・」
ここのアルバイトをはじめたのも
元彼の家を出て行ったときから
行くとこもなかったときに、目に入った広告に、ここの求人が書いてあった
急募!!年齢問わず、住み込みOK レンタル店勤務 初心者大歓迎!
この求人を見て、即、連絡、即、面接、即、採用。
それから、元彼とは連絡を一切取っていなかった。
別れた原因は、元彼の浮気だった。
よくあるパターンで、あたしが思いがけないときに、アパートに戻ってきたら
まさに、浮気現場を目撃。
修羅場になる前に、ショックで逃げた。
結婚まで考えていた相手だっただけに
ショックは大きかった
思い出すだけで泣けてくるのに
なぜ、ここに???
店長の山田さんは一定のトーンで
「いらしゃいませ。お客様。何をお探しですか?」
元彼は、タッチパネルで何かを探している。
モニターからもタッチパネルの画面が見えるのだが
いつもと画面の選択キーが違っているように見えた。
CD DVD
通常なら、二つの選択キーなのに
三つ目がある
三つ目には
レンタル MY LOVE とだけ
「いつから増えたの?」
元彼は
その3つ目のキーを押す。
店長の山田さんは、いつものように、棒読みで
「レンタルありがとうございます。レンタル期間は一週間です。レンタル期間を過ぎますとご返却不可と
なにますので、ご注意くださいませ。」
「や、山田さん?いつもと違うじゃん?」
状況は飲み込めないのはあたしだけのようで
頭の中、パニックになっているあたしに
追い討ちをかけるように
座っていた椅子ごと、いきなり猛スピードで、動いたと思ったら
明るい場所へポーンと放り出された
「い・・・・いたたたた・・・山田さん、なんなんですか・・・」
「真樹!!会いたかった!!!」
元彼は、パニックっているあたしに駆け寄って、抱き寄せた
状況がつかめないあたしを、元彼は、
「さあ帰ろう」
と連れていこうとする。
その後ろで、パネルタッチの向こう側から 店長の山田さんは
「真樹様の恋 レンタル期間は、一週間です。レンタル期間を過ぎた場合は、ご返却不可となりますので、ご注意くださいませ」
「えええーーーー山田さーーーーん!!!!」
「真樹様・・・お幸せに・・・・」
いつも、同じトーンで話す、コンピュータ店長山田さん
そのときだけ、トーンが変わって
にっこりと微笑んだ。
あたしがそれから、返却されることもないまま、またいつものとおりの同棲生活が始まった
元彼は、土下座して、二度と浮気しないと誓って、プロポーズもされて
もう一度、彼とやり直すことにした。
あのレンタル店、彼が言うには、噂で聞いて行ったという。
通常のレンタル以外に
「取り戻したい恋を期間限定で、レンタルできる」
いまでも、あのレンタル店は
いつでも、バイト急募の貼り紙がはってあるという
END
