comme tous les jours -8ページ目
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「いつか」


昨日と今日は少しずつ形を変えて

気がつくと私の前に訪れる

追いつけない私に振り返る

私は息を切らしただそれに手を伸ばす

けれど、気まぐれにまた手を下ろし

私はそこから走り出す

すると日々は私を追いかける

いつまでも続くその日々が

私の生きた証

私の在ったその証


「別離」

それは、別離ではなかった

そう思っていた

いや、そう思いたかった

もし私が前へ進んでいるのなら

前進とはこうも切ないものなのだろうか

何かを得る時に人は何かをなくすのだろうか

答えはいつも後から訪れて

時に跡形もなく過ぎてゆく

もう随分と大事なものを手にしすぎていたような

そんな気さえしてくるようだ


声を聴きたいだけなのに

それすら叶わない夜が隣に並んでいる

今まであったあまりにも多くの温度が

少しずつ

少しずつ

私の手を離れてゆく


そして私はただここにいる

今まで私が得ていたもの

そう思っていたことが

ふわふわとさまよっている

もう私にはそれを集めることはできない

けれど

それをただ愛しく思い

心の中で繰り返し抱きしめる

私はここにいる

でも、そこにはいないのだから

「空の向こう」


遠く向こうまで雲ばかり続き

流れる景色も影を落とす

どうしてこんなことになったの、

誰にもわからず

答えはどこにもない

灰色の雲の上が青空だとわかっていても

憂いたくなる時もあり

どうして泣いているの

悲しいからじゃなく

ただ悔しいから。

この痛みをどうか閉じ込めないで

でも逃がさないで

柔らかく包み

一人で羽ばたけるようになるまで

見守って、ただ、見守って

「真夏」

気がつくと

クーラーのききすぎた部屋で

私達は寄り添って眠っていた

少し冷えたこの体のおかげで寄り添うことが出来るのなら

たまにはいいかもしれない

今消すと暑いと言ってあなたは私を突き放すでしょう

朝起きて手足がだるくなるのはわかっているけど

こうしていられるならこうしていられるから


「秋桜」


コスモスという花を知っていますか

秋の桜と書きます 秋に咲くからです



桜は春に咲誇ります

そして青々とした葉を広げて 秋には葉を落とし

コスモスに舞台を譲ります

そっと静かに見守って そして静かに冬を越え

蓄えた力でまた咲誇るのです


コスモスは秋に咲きます

桜とは違います

一年中そこに居る桜とは

けれど秋には然り、待ち焦がれたように咲くのです


コスモスという唄を知っていますか

お嫁にゆくひとが思いを綴った唄です

そのメロディーは淋し気で、でも力強いものです

これから幸せに、今以上に幸せになってゆくひとの唄だから


コスモスという花を見たことがありますか

よく儚げに咲く花と言われます


細い茎を長く伸ばし 秋の風に吹かれて揺れて居ます

私もずっと長い間、コスモスを儚いものだと思っていました


今日うつむいた心を携えて 車を運転しました

懐かしい景色を探して、行き先を辿りながら

とても懐かしいその場所に、それは咲いていました

私が絶望した場所でした

私が泣き崩れた場所でした

自分の中に涙しかないようにも思えた日々の中

それでも前に進むしかないということを教えられた場所でした


コスモスがあんなにも真っ直ぐに

あんなにも、しゃんとして咲いているとは

あの頃の私は知りませんでした

もう秋なのかと、西陽の中で私はアクセルを踏みました

「無題」

もしこの道の先に暗い森があるのなら私は光を持ってゆこう

少し歩いてどしゃ降りになるのなら私は傘を持ってゆこう

それとも雨宿り出来る場所を地図で調べてからゆこうか

とても素敵な景色が広がるのなら私はカメラを持ってゆこう

フィルムがどれだけ要るのかわからないならいっそカメラは持たず

自分の目と心に焼き付けられるように深呼吸してみようか

もしこの道の先が行き止まりなら私は歩きやすい靴でゆこう

遠回りするかもしれない、下手すると山道かもしれない

怪我をしても困らぬよう、救急箱も要るかもしれない

ふと思う、ただ思う

何も持たずに進むのは難しい

何が起こるのかわかっていれば、何か持ってゆけるだろう

けれど私は予言者じゃない、予言者の知り合いもいない

それに完璧に当たる予言者を私は知らない

ふと思う何も持たずに進むのが怖いのなら

何が起こるかわからなければ少しは楽になれる

ただ思う私は予言者じゃない、予言したいわけでもない

何か起こったら、私はその時何を持っているだろう

それは誰にもわからないけれど

何も持たずに私は何処までゆけるのだろう

「空気」

ただ愛しく

ただ愛しく

時間は確かにそこにあった

苦しくはない

まだ、苦しくはない

何が起こっているのか

まだわかってはいない

切なくもなく、悲しくもない

空気を失ったくらいで

何をうろたえているのだろう

ただ愛しく

ただ虚ろに

時間は確かにそこにあった

私はただそこにいただけ

生きていくために呼吸をし

生きていくために物を食べ

そして何かを思うのも

生きていくためだったのかもしれない

誰でもなくただの私がそこにあった

そのための空気を

そう在るための空気を

今はまだ、苦しくはない

何が起こっているのか

わかってはいないから

ただ愛しく

ただ愛しく

時間は確かにそこにあった

「願い」

もし

私がいなくなったら、あなたは私を探すでしょう

あなたのことを一番よく知っているのはあなたかもしれない

でもあなたのことを一番わかろうとしているのは私だから

理由はわからないけど

とにかくすべてがあなたを必要としている

あなたが在ることが当たり前の現実

あなたにとって私もそうでありますように

「ため息」

あなたが私を 死ぬほど愛していると呟くよりも

あなたが私を 二度と離さないときつく抱くよりも

あなたが私なしに 決して生きてゆけないと頭を垂れるよりも

そう言おうとするその前に

一瞬 息を呑む その瞬間が

たまらなく、好きなんです


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