「そんな夜」
好きな人の前で泣きました
自分に自信も持てなくて
先も何にも見えなくて
今二人でいることも忘れて
私はただ 泣きました
「消えてなくなってしまいたい」
そんな気持ちも隠さずに
私はただ 泣きました
好きな人は 悲しまず怒らず こう言いました
「一緒に消えるよ」
私には本当は見えていました
二人のその先にあるもの
私はまた思い出しました
今はすぐに過去になり 未来はすぐに今になる
悲しい波にのまれるのは もう終わり
またこんな夜が来ても
また私が泣いても
あなたは同じように ずっといる
そう思った そんな夜
「泣きそうで」
まだ泣かない
まだ泣けない
泣きたい気持ちは
私の中からやってきて
泣きそうな気持ちは
思いがけずにやってくる
こんなに感情のこもった水滴を
私は今まで知らなかった
この目からこぼれ落ちるまで
確かに意志を持っていて
離れて初めて
私はその意志を知る
手の甲に
たくさんの水滴
そしてそれらは私に言う
「ここにいるよ そして 確かに君の中にいたよ」
―またすぐに君に出会うから ―
まだ泣けない
まだ泣かない
こらえていた私を
何かがゆるませて
じんわりと
ゆっくりと
気がつくと
泣きそうで
いつも後から
背中を押されて
泣きたい気持ちになってゆく
こんな私に早く気づいて
そして
今度こそ
「ハッシャバイ」
消えないで
ねえ 消えないで
もう少しだけここにいて
この熱が冷めるまで
この夢が醒めるまで
抱き止めた想いは
いつまでも不確かで
惑うことも
迷うことも
なぜかすべてが心地良くて
言わないで
どうか 言わないで
消えてしまわぬよう
流れてしまわぬよう
この痛みも切なさも
過去に隠れてしまわぬよう
今はただ
どうかこのまま
ハッシャバイ
愛しい人よ
「先入観」
キライ、キライ、ダイキライ
そんな目で私を見ないで
あなたの中で過ごすのは好きじゃない
だって
いつも同じじゃないんだもの
いつでも新しい私に取り替えてよ
いつでもいつも
違う私を見てよ
誰でも失敗くらいすることを
知っているはずなのに
誰より認めたくないのなら
私が代わりに認めてあげるから
どうしていつも
またここに来るの
どうして同じことを繰り返して平気なの
だって本当のことを言われるの苦手でしょう
あなたに束縛されるのは好きじゃない
そんなことで私を決め付けないで
キラ イ、キライ、ダイキライ
悔しいな
「Glory」
かすかな光をつかむように
壊れそうな何かを守るように
ゆるやかな流れを追い越して
ささやかな願いを抱きとめて
形あるものがすべてではなく
形ないものはここにはなく
単純で複雑な日々だけが
臆病で尊大な意志さえも
流れゆく
辿り着く
そして今
私の矢印は
明日だけを向いている
「キセキ」
大丈夫、大丈夫
私はあなたに語りかける
あなたに届くように
そして私に届くように
「泣いたぶんだけ優しくなれる」
そう聞いても
こんなにつらいなら
優しくなんてならなくてもいい
そんな風に思った
それも私
そうでないのも 私
「つらい分だけ強くなれる」
そう聞いても
こんなに泣けるなら
強くなんてなれるわけない
そんな風にも思った
それも私
そうでないのも すべて
ほんとうの私
すべてが通り過ぎてから
私は気づく
強さも優しさも
私の中にあることを
そして
それは手渡すものではなく
いつのまにか
私の手を離れて
いつのまにか
誰かに届くものだと
大丈夫、大丈夫
私はあなたに語りかける
あなたに届くように
私に届くように
そして
時間をかけて 涙も全部飛び越えて
いつかきっと
届くように
今は見えなくても
いつかきっと
必ず
信じる先に
生きてきたキセキが
駆け抜けたキセキが
私の先に
あなたの先に
大丈夫、大丈夫
さあ、あなたに、私に、語りかけよう
This is dedicated to N.
「時間とは」
楽しいできごとが待っていた
それが訪れるまで
私はただ時間をもてあまし
何でもなく
他愛もなく過ごしていた
けれどほとんどはそういう時間ばかり
輝くような時間は
ほんのひと握り
私は
そのひと握りに振り回されたり
ひどく恋焦がれたり
そんなちっぽけな自分を
愛しく思い
「泣いても笑っても同じ時間」
そう
それは あなたの時間
小さくても大事な
今ここにしかない時間
「回想」
「幸せすぎて怖いくらい」
なんてバカな台詞だろうと思っていた
誰もがそんな錯覚を通り過ぎ そして惑わされゆくのだろうと
「自分のことよりあなたが大事」
なんて嘘つきな台詞だろうと笑っていた
窮地に追い込まれたら
そんなキレイな言葉も木っ端微塵になるだろうにと
そういう言葉の端々に私は何を見ていたのか
何も
言葉では説明のつかないことが この世には溢れ返り
どれだけ舌を巻いてもかなわないように
人間は感情でできていた
私という人間は バカな台詞を吐き 嘘つきな台詞に慣れ
説明のつかない あなたへの愛情でできていた
それをずるいと叫んでも 私は何処へも行かなかった
突風が吹き 流されても 私は何処へも行かなかった
いや 何処にも行けなかった
「あなた以外に行く場所はない」
なんて滑稽な台詞だろう
そう思っていた 確かに思っていた
でも ここに確かに在るのは 何処にも行けなかった私
あなた以外の場所に 何処にも行こうとしなかった 私
手を離さない限り 私が答えを求めない限り
ただゆっくりと 時間は流れてゆく
私は本当に場所を探しているのだろうか
あなたと同じように
「傷」
あなたに隠していた事を それとなく言ってみた
驚きもせず 淡々と あなたはそれを聞いていた
そしてあなたも 隠していた事を 少しずつ私に話していく
けれどそれは隠すというより
言いそびれ 宙に舞うようにただよう言葉
私達とそれらをつなぐ術が なかっただけの言葉
そして今やっと つながった 無意味な距離を飛び越えて
けれどそれはただ手を結ぶというより
向き合って ぶつかって 立ち止まるために必要な過程
どうでもいいなら 私はあなたにぶつかりはしない
ただ横を通りすぎ 思い返したように振り返り
そのまま
言い訳なのかもしれない だけど
こうやって傷つけ合えるのも 私達だから
こうやって抱きしめ合えるのも 私達だから
私がこの世に1人しか存在しないように
あなたの代わりはどこにもいない
この痛みはその代償
そして
この温かさを忘れないためのしるし
「far away」
壊れてしまいそうなくらい
自分を追い込んだ
私以外に私を傷つけるものがあるだろうか
自分に厳しく
自分に甘く
私は誰よりも私を見ていた
そして一番
私を知らなかった
ただそれだけ
それだけのこと
だけど私にはとても大きな波のようだ
さらわれてしまいそうなくらい
自分を見失った
けれど
消え入りそうなその声が
儚くとも
力強いことを
私は誰よりも知っていた