【任侠書房/今野敏】
【隠蔽捜査】シリーズの同作者さん。警察組織とは対極にいるヤクザが主人公だが、“ヤクザ”と“暴力団”が同じ認識をしていたことをまず改めました。
任侠と人情を重んじる正統派ヤクザの阿岐本組。代貸の日村の下には4人しかいない小さな組だが、組長の阿岐本はその道で顔が広く、若い頃には多くの人間と兄弟盃を交わし、今では広域暴力団のトップになった者も少なくない。
その中の1人、永神組の組長から倒産寸前の出版社を引き継ぐことになった。梅之木書房は週刊誌や文芸書を取り扱っているが、売上は低迷。各部署の編集長はクセのあるものたちばかりだ。
阿岐本組も得意分野で記事制作に加わり成果は売上として出ていたが、シマ以外の企業で活動する阿岐本組を排除しようとする動きがあった。
組ナンバーツーの日村が主人公。組長・阿岐本の決めごとは何であろうと意見は言えず、言われたらやる苦労人。ナンバーツーであろうと阿岐本が誰と兄弟盃を交わしているか把握出来ておらず、下がヘマをすれば代貸の責任となり阿岐本の手が飛んでくる。
ヤクザなんているのか?てくらい平穏な新潟暮らししていますが、ツイッターで見かけた【ハロウィンに近隣住民を呼び、もてなすヤクザ】の記事を読んだことを思い出し、肩身の狭い思いをしながらも地元住民と共生するヤクザも【関わる=死ぬ】てわけでもないんだろうけど、やっぱり素人にはヤクザと暴力団の違いは分からないなって、思いました。
【任侠学園/今野敏】
任侠シリーズ第2弾。
前回、潰れかけの出版社を立て直した阿岐本組。組を率いる阿岐本は、兄弟盃を交わした永神から再び破産寸前の学校法人を請け負い、井の頭学院高等学校・新理事長の座に就いた。
組のナンバーツー、代貸の日村も阿岐本の命令で理事に就任したが、はじめに任された仕事は荒れた花壇の整備だった。割れた窓ガラスの破片をばらまかれても素人相手に耐えていたが、阿岐本の許可が下り、ついに犯人確保に動く。
現代の若者VSヤクザもの。学校の生徒に手は出せなくてもきっちり躾けるヤクザのやり方は、目の当たりにしたらおっかないけど、傍から見たら魅力的。
善悪の区別がつかない生徒と、学校の方針に逆らえない教師、変えることを諦めた校長……ヤクザという第三者の介入により学校関係者の意識が変わっていく。
組の看板を名乗ることに重み、小さな組でも存続できている理由、阿岐本の顔の広さ、決して侮れない。また、変わったのは学校関係者だけではなく高校と縁が無かった阿岐本組の面々が自分たちが過ごせなかった学校生活と携わり、苦労性の日村ですら生徒との交流で多少なりの情が移ったことが分かる。
熱血先生と生徒、なんて関係では無く、自分がやってみる、されたことに礼が言える筋の通った大人と、それを見て感化されていく子どもの成長がとてもいい。
【任侠病院/今野敏】
任侠シリーズ第三弾!
またしても兄弟分・永神からの話を請け負い、阿岐本組が再建に挑むのは駒繋病院。くすんだ外壁、はげかけの看板。医師の数は足りず、受付の女性はしかめっ面……
組長、阿岐本の命令で理事に就任した日村は、病院の全メンテナンスに携わる業者、シノ・メディカル・エージェンシーの背後に関西の系列に属す耶麻島組の存在があることを突き止める。病院から吸い上げられるマージンが高額のもので病院経営を圧迫していた。
同時期に阿岐本組の周りでは地元住民による暴力団追放運動が起き、警察からも行動を自重するように釘を刺される。しかし、運動に参加しているのは他所から移ってきた新しい住民であり、古くからの住民は阿岐本組を認め、頼りにもしていた。
今回は魔性の優男・真吉が活躍。病院内部の情報収集はもちろん、女性を「オバサン」という部類では無く、「個人」として認識し、『人が好きな花は、生まれた季節に咲く花のことが多い』ことは女の私でも勉強になった。
前回は阿岐本組長が穏便に解決したものの、今回は阿岐本組長の凄みが利いていた。次回作はどんな存在感を知らしめるのか、注目してしまう。
