れおんさんは草原を走ります。
どこまでも、どこまでも走ります。
かけぬけます。
からだいっぱいに風を感じて。
目の前には、大きな空が広がっています。
踏みしめる草もやわらかくて、いい感じ。
走れる、走れるんだ。
顔やからだにあたる草も、パチリとするけど、いい感じ。
どこまでも、どこまでも走ります。
かけぬけます。
からじゅうのバネが喜びます。
こもまま地球の裏側に行きそうです。
走れる、走れるんだ。
どこまでも、どこまでも・・・
ハッと目が覚めました。
あたまがぼーっとします。
そこはゲージの中でした。
ゆめ、だったんだ。
点滴の管が巻きついた腕をみます。
からだが思うように動きません。
せまくて、暑い。
時刻は夜中のようでした。
せめて朝になれば・・・
れおんさんは願います。
手足がだるくて、まぶたも落ちてきます。
ねがえりをうつ力も残ってはいません。
朝になったら、朝になったら・・・
どこまでも、どこまでも願います。
信じます。
からだじゅうが痛くて、悲鳴をあげます。
このまま眠ってしまいそうです。
朝になったら。
どこまでも、どこまでもねがい・・・
ハッと目が覚めました。
あたまがぼーっとします。
そこはベッドの上でした。
ゆめ、だったんだ。
バタッと起きて、左わきのあったところをみます。
そこは、れおんさんがいつもいた場所でした。
いない。
ベッドの表面をあちこちさわります。
なまあたたかい場所はないか、探ります。
ない、ない。
足のほうも、右わきのほうもさわります。
まくらも裏返します。
自分以外のあたたかさをさがして。
ない、いないんだ。
胸が苦しくなります。
涙があふれます。
れおんさん、もう、いないんだ。
ぽろぽろ、ぽろぽろ、涙があふれます。
苦しくて、苦しくて。
どこまでも、どこまでも。
どこまでも、どこまでも。
わたしは泣きました。
2023年8月31日、玲音は虹の橋を渡りました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。