大谷選手の専属通訳者だった水原氏の事件から
専属通訳について当事者の利益になるのかという視点で考えてみます。

専属通訳の良い点はたしかに沢山あるでしょう。
通訳をする際に、通訳対象者について十分に把握している状況なので
細かいニュアンスまで掴んで相応しい通訳が出来るでしょう。
また本来の通訳センスの良さも相まって、経験を積み重ねていくにしたがって
よりスムーズに進むことは当事者の利益につながってきたという事実もあるでしょう。

しかし、専属通訳であったがために、より注目され、本人との関係の密さが結果的に
本人・大谷選手の不利益になったという皮肉さがあります。

専属通訳が行き過ぎた場合、
自然に依存関係で出来てしまうということには留意しなければなりません。
当事者の利益とまた英語が堪能でなくても、必要に応じて通訳を使いわけるなどをして
水原氏だけに依存している状況でなければ防ぐことのできた事件だったと思います。

もちろん専属通訳者が皆悪いことをする訳ではありませんし
やっぱり専属通訳がいいよねと言うことも当然にあります。

ただやっぱり依存関係については留意する必要があると思います。
依存関係によって当事者の自律を損なうような懸念があること意識し、
極力、依存関係が強まらないような仕組みづくりを考えるなどの工夫があれば良いのです。

そして、そもそもの話し、確認ですが
もし大谷選手が英語が堪能であったとしたら、通訳を必要としなかったとしたら
当然ながら、通訳者の水原氏は必要のない存在ですから
今回のような事件に巻き込まれることはなかった訳です。

ただ、おそらく大谷選手もある程度のコミュニケーションレベルとしての
英語力はあるらしいと言われています。
実際、海外で活躍する一流アスリートでコミュニケーションレベルでは
通訳をあまり必要としない人たちが多いと聞いています。

様々な事情、環境、などがあり、
大谷選手も通訳がいた方がコミュニケーションがスムーズで簡単で正確ということもあり
専属通訳者として長年、共に活動されていたのでしょうが、
たしかに任せておけば安心、自分は野球に専念したいという気持ちも分かるものの
通訳者に分に応じた仕事にすべきだったし、
自分自身のセキュリティとしての危機意識ももち、
仕事のみならず生活一式全部の通訳でないようにすれば
何億ものをお金を通訳者が詐欺・窃盗まがいの方法で流用することは防げたでしょう。

通訳はあくまでも通訳、本人の利益のためにある訳ですから
それを担保するためには、本人が上手に通訳を使う意識が必要なのだと思います。

さて、手話通訳の専属通訳について少し考えてみます。
最近ではフリーで手話通訳を生業にしている友人たちもいます。
大体はいくつかの専属通訳の仕事を抱えていて企業との関係です。
企業の場合は基本的にはいくつかのチェック機能もあったりしますし、
専属通訳といっても、一人だけということではなく、複数だったりはするので、
何かあった場合のフォロー体制もあったりします。

一方、コミュニティ通訳の場面では当事者の自律を損なう依存関係がありがちです。
日常生活の中、障害者総合支援法に規定されている意志疎通支援事業のもとに
派遣されている手話通訳者ときこえない人の関係では依存関係が生じることが多々あります。

手話通訳の場面から、その依存関係を考えることはまたの機会にしたいと思います。