漫画・小説

『茅島氏の優雅な生活』

小説:遠野春日(とおのはるひ)
漫画:麻々原 絵里依(ままはらえりい)

天涯孤独の大富豪・茅島澄人氏と、庭師の「彼」のちょっとした日常のお話。

まとめてしまうと、上記の通り、ささやかなお話です。どちらかが浮気したり、事件に巻き込まれるなんてことも(ほとんど)なく、基本的には仲良く過ごす日々です。

この主人公の茅島氏が、他に類を見ない独特なキャラクターです。基本的に世俗に全く興味がなく、感情を表すことは極端に少なく、大概の人間には高飛車なのに、庭師の「彼」のことになると一生懸命になったり、いじけたりします。やることやっている筈なのに、茅島氏のおかげか、常に綺麗な空気が漂っているような気がします。
また、庭師の「彼」は、雇い主の茅島氏に傲慢に接することのできる度胸の持ち主。彼のおかげで、普通の主従関係でない、あくまでも対等な付き合いができているようです。


個人的には、コミックの完成度はかなり高いと思います。
原作の小説と違っているのはごく一部で、基本的にはほぼ全てのエピソードを、その順序通りにまとめてくださっています。絵柄は硬質な線であり、いつもならそんなに好みの絵柄ではなかったのですが、この作品には驚くほどマッチしていました。

原作の小説の方は、一部他の遠野さんの作品とリンクするところがあり、そちらを読んでおいた方が更に面白いのかもしれません。遠野さんの世界は多くのレーベルに渡り広がっているので、私はまだカバーできていませんが…。