『箱の中』
『檻の外』

痴漢の冤罪で刑務所に送られた主人公・堂野は、殺人で服役中の男・喜多川と同房になる。
刑務所内のルール、同房の詐欺師とのトラブル等に苦しめられながら衰弱していく堂野に対し、喜多川は献身的に世話を焼くようになる。しかし、喜多川が初めて覚えた『愛情』はあまりに強い好意となり、堂野を戸惑わせていく。
堂野は、出所と共に喜多川の前から姿を消してしまったのだった。


著者:木原音瀬(このはらなりせ)
出版社:蒼竜社
レーベル:Holly NOVELS
定価:857円(税抜)

途中まではかなり重苦しい展開が続きます。
元公務員であり、『普通』であることを望む堂野と、堂野への愛情のみを指標に生きる喜多川のすれ違いがとても切ないです。

殺人犯とはあるものの、喜多川は全くシンプルな青年。愛情を与えられずに育ち、言われるがままに服役し、食べものも寝床もある刑務所暮らしは全く苦にならない、というような。

講談社から、文庫版の『箱の中』が発売されています。『檻の中』も収録されている、との触れ込み…
ところが、こちらには、Holly Nobels版『檻の中』に収録されている、本当のラストが収録されていません。あくまで文庫版としてスッキリまとめられてしまっています。
Holly Nobels版は中古本でなんとか手に入りました。市立図書館にもありましたが。

ちなみに、性描写は、比較的淡々とですが描かれています。
刑務所の室内でしてしまった場面は衝撃的です。

読むと苦しくなるような作品で、購入したもののほとんど読み返せていません。ただ、本棚に入れておく価値はあるとおもっています。