刀鍛冶などの技法について考えてきたが、切り口を変えて考えてみたい。
TVなどで顔なじみの作家・荒俣宏氏の話を紹介したい。
ヨーロッパの19世紀の旅行は、馬車に荷物や召使やペットまで乗せて、家ごと移動
するスタイルだったから二台に積むために車輪がなく四角いルイ・ヴィトンのトラン
クが発達した。一方、日本は馬車がなく旅人は荷物1個のみで、江戸時代は火事が
多かったから持ち運びに便利な小さい物に力を注ぐ素地が育った。盆栽も小型トラ
ンジェスターもフィギュア(模型)も、肩に掛けた「振り分け荷物」以来の伝統を持
つわけだ。更に江戸幕府が出した倹約令で、派手な大きなものは禁止され、仕方な
しに目立たない小さな江江戸玩具が生まれたのも影響した。そして小さいけど精巧
で沢山集められる品物が作られた。
因みに、マニアの収集癖も日本の文化が投影されている。例えば西洋では神が創っ
た序列にしたがって収集するが、日本は混浴のように何でも区別しないで収集する。
西洋がコース料理の注文なら、日本はお任せの定食である。一つ一つの皿は小さく
何でも新しいものは懐石に付け加える仕組みである。
なるほど、懐石料理も刀鍛冶が心を込めて鉄を鍛えるのと同じ神秘的な漂いを
感じる。