サンタさんは言った。
「もうこの手の仕事は辞めようかと思ってな」
サンタの仕事にこの手もあの手もあるもんか。ぼくはもともと赤い鼻をもっと赤くして、サンタさんをにらんだ。
そんな目で見ないでくれ、ってサンタさんは悲しそうにつぶやいたけど、ぼくだって同じ気持ちだ。

だいたい、今年のクリスマスはどうなるのさ。もうたくさんの子どもたちがクリスマスを心待ちにしているころじゃないか。プレゼントは何をお願いしようかとか、サンタさんにクッキーを焼いてやろうとか、手紙を書いてやろうとか。
もう11月も半分を過ぎようとしている。
なのに、どうして。

それにぼくは、まだサンタさんと一緒に仕事がしたい。
ソリは少しばかり重いけど、それでもサンタさんが清々しい顔で煙突から出てくるのを待つあの時間が、何より好きだから。

……いや、ぼくはいまウソをついた。
ぼくはサンタさんと一緒に仕事をしたことがない。
仲間のトナカイたちから聞いた話を、自分のことのように思っていただけだ。

ぼくは鼻が赤い。
鼻が赤いトナカイは、デモッソの年にしか仕事をさせてもらえない。その年はとても夜が暗いんだってサンタさんは昔ぼくに教えてくれた。

けれど、待てど暮らせどデモッソの年は来ない。

本当は、うすうす感じてはいたんだ。
そんな年なんてないってこと。

気づけば、ぼくは大きな声をあげて泣いていた。もともと赤い鼻を、もっと赤くしながら。
そのわけは、サンタさんと1度も仕事をできなかったからか、サンタさんがぼくにずっとウソをついていたからか、それとも、それとも。

目の前にいるおじいさんはしわくちゃの手で、ぼくの赤い鼻をやさしく撫でた。ずっと、ずうっと。