いよいよ剱岳に登る日が来た。
2年前の4月、唐松岳頂上からモルゲンロートの剱岳を見てから早くあの頂に立ちたいと思っていた。
昨年10月17日には剱御前小屋まで行ったが、激しい降雪で諦めさせられた。
敗退の気分を引きずりながら、その翌日に登った奥大日岳から見た剱岳は、すぐ目の前にそびえていたが、とても遠い存在に感じた。
今日、その剱の頂上に立てる。
モンベル・ステラリッジテント4型は3人で使用するには十分広く快適で、ぐっすり寝ることができた。
前日、早月小屋まで標高差1500mを登ったが疲れはない。
3時半に起き、テヌグイとサンダルを起こす。
出発は4時15分。真っ暗な中をヘッドランプで進む。
テヌグイがまだ身体が起きてないとぶつぶつ言っている。
何人か先行しているようだが、音も光も見えない。
ライトを消すと本当に真っ暗で、振り返ると富山の街の夜景が少しだけ見える。
最初の休憩を取っていると、草の繁みから突然雷鳥が飛び出してきた。
僕らは雷鳥運があるのか、雷鳥の生息地に来ると毎回といってもいいくらい雷鳥に会える。
夜が明けてきた。
小窓尾根か剱尾根かわからないが、いかにも剱らしい激しい地形の風景が見えてきた。
幕営しても良い場所なのか分からないけど、いいシチュエーションだなー
次回はここにしよう。
進む先にギザギザした稜線が見える。
小指を立てた手のようにみえる。
いよいよ頂上は近い。
前剱、別山ルートからの人の多さは予想以上に凄い。
何十人という人が列をなして登ってくる。
雪山では自分たち以外誰もいないといったことがよくあるので、この人の多さはちょっと残念な感じがした。
でも頂上に向かう人々の顔は皆さん輝いている。
祠が見えてきた。
頂上だ。
頂上に着いた時はいつも仲間と握手するが、格別に嬉しい時は肩を組む。
今回は三人で肩を組んだ。
鹿島槍の双耳峰はわかりやすいので特定が容易だ。美しい山である。
日本海、能登半島も見える。
しかし、それにしても頂上は人が多い。次から次へと登ってくる。
山ブームなのか? 剱岳ブームなのか
最近、山ガール、山ガールとよく聞くが、剱に山ガールはいるのか、探してみる。
数十人がいるこの頂上で、うーん、確かに一人だけいるなー。あの娘であれば山ガールと言えるだろう。サンダルも同じ意見だ。
昨晩、早月小屋のテント場で、隣で食事をしていた50代半ばくらいの見知らぬ女性が言った。
「最近やたら山ガールって言うけど、ようやく時代がわたしに追いついてきたわ。わたしなんて何年前から山ガールやってると思ってんのよ!」と。
いつもでも居たかった剱の頂上だが、今日はここから2200mを一気に下ることになる。後ろ髪を引かれるようにして早月方面に下った。
途中、前剱方面に長い梯子が見える。
あれが有名なカニのタテバイであろうか?
大きな目標を達成した余裕からか、下りは風景を楽しみながらゆっくりと進む。
早月小屋に到着し、テントを撤収してからゆったりとした昼食を楽しむ。
定番のカレーヌードルだ。
テヌグイとサンダルはスーパードライのロング缶を飲んでいる。
「そろそろ行きまっか」。
この後、まさか地獄が待っているとは想像もできず、ゆるーい感じで小屋を出発した。
午後2時までには楽に駐車場に着けると思った。
いつものように無駄な荷物をいっぱい背負っているとはいえ、もう下りしかないのだから。
しかし、途中で膝に違和感を感じ、歩き方が変になってきた。
サンダルはモモに力が入らないと言い出し、何度も転ぶようになってきた。
ひたすら長かった。
そしてとてつもなく辛かった。
途中、想定外のアクシデントがあったりして、馬場島の駐車場に着いたのはなんと午後6時40分だった。
まさか早月尾根の登山口から「月」を見ることになるとは思わなかった。
苦労した分、達成感はあったが体は疲れ切っていた。
これから東京まで運転できるだろうか。
馬場島近くにある日帰り温泉施設、みのわ温泉ファミリーハウスで汗を流し、富山市の街に出て鮨屋を中心に食べるところを探したが、日曜日の午後10時近い時間ということもあってファミレスかラーメン店くらいしかやっていない。
1時間以上富山の街を車でぐるぐるして、結局、来来亭・富山稲荷店というラーメン店に入った。
このお店は当たりだった。まず水が美味しい。ラーメンも餃子も炒飯も美味しく、意外性もあって嬉しくなった。
高速に乗ったのは零時近かった。
東京までそのまま行くつもりであったが、3時半に起きて歩き続けた一日だったので100kmも進まない内に限界となり、結局サービスエリアで朝まで寝てしまった。
東京には10時くらいに着いた。
すぐに向かった先は神保町の登山専門店だ。
サンダルが今回の山行で使ったグローブが良かったというので、僕もほしくなったのだ。
結局、サンダルとは違うメーカーのもの(PETZLのCORDEXというグローブ)にしたが、ゲットできて満足だ。
金曜日の夜、22時過ぎに仕事から帰ってシャワーを浴びただけで零時に家を出て高速道路をひたすら車を飛ばし、
土曜日の明け方に富山に着き、少しだけ休んで早月小屋までテントを担いで登り、
日曜日に3時半に起きて剱岳のピークを踏んでボロボロになって下りてきて、
月曜日(祝日)の朝に東京へ戻り、家に帰らずそのままみんなで登山ショップに行く。
皆それぞれ家庭を持っているのに。
完璧にアホだ。
アホの三乗だ。
でも、これが山の魅力なのだ。
散々歩いてボロボロになり、足を伸ばすことができない狭い車の中で寝て、やっと家の近くまで帰ってきたのにもう次の山行のことを考えてしまう....
今回とても驚いたことは早月小屋に山バッジが置いてなかったことだ。
「えっ、バッジないんですか!?一種類もですか?」と何度も聞き返してしまった。
ということで残念ながら剱岳のバッジはゲットできなかった。
これはすぐに自主制作するしかない!(笑)
※剱岳のバッジがないので、昨年、奥大日岳頂上から見た剱岳をデザインして自主制作したバッジを掲載します。














