果たして書けるか | ☆

果たして書けるか

たまたま…本当に偶然

仕事の都合上地上に降りて来た時に来た


いつもの作業場所は高所と言うには少し中途半端な場所

恐らく30メートル程度


H鋼で四肢は組んであってトラスもちゃんと張ってある


いくつかのハシゴを上っていって先にある屋上とも言える場所


そこから降りて最初の一歩目でふらついた


最近仕事がハードだから…そう思って自分の体力の衰えを考えていた所に

同じ現場の違う部署の人から地震と告げられる


地震なんてそもそもあまり経験もないし

地面が揺れてちょっとアスレチックっぽい程度にしか考えていなかった


あんなにデカいのが来る前まで


「立っていられない」

そう言うのが正しい、何もかもが斜めに何回も動いた


高所作業は安定が重要

その為にいくつもの安全策を施していた


作業場所まで荷物を運ぶための延びきったままのクレーンの先端は

左右に1メートル以上揺れ、先端についているフックはさらにそれ以上の幅揺れた


作業場所そのものもあれだけ巨大にも関わらず大きく揺れた


作業場に残された職人さん二人を大声で呼んで降りるように指示するが

降りるハシゴ自体が揺れているから一人は恐怖でなかなか降りようとしない


作業場で収まるのを待つつもりなのかもしれないが

作業場自体が横転したら終わりなので怒鳴りつけて降ろさせる


もし私が作業場にいたら降りてこられただろうか…


二人が降りてもまだ揺れ続ける地面

工場の外に出てしまえば周りは全て田畑で倒れて来るものもない

それが一番安心できる事だった


ちょうど3時の休憩の時間だったから

落ち着いたのを確認して休憩場所に入ってはみたものの

余震が酷く建物の老朽化を考えてやっぱり外に出た


近くに止めてある中古車販売場の駐車場

これから売られていくであろう車の群れが同じ方向に一斉に動く


風が強くなってくる


建物にはまだ入らないほうがいいだろう


自分が重機の中で揺れているから気づいてないのか

一台のユンボだけが作業を黙々と続けていた


どれだけ揺れた?

Mは大丈夫か?


会社のネットで確認したら宮城沖が震源地

こちらでこれだけ揺れた…震源地はどうなる?


決して近い場所じゃないにも関わらずこれだけ揺れた関東


私の権限で今日の仕事は終わらせた

余震だけでも振り落とされる危険があった


電話をかけてみたが全然つながる気配はない

会社の携帯から逆に西、実家に向いて電話をかけてみた


両親がニュースで見たら驚くだろう、心配するだろう

だから無事なことを先に伝えておこうとした


1回目 つながらない


2回目 つながらない


3回、4回と続けて結局6回目で父親の携帯に電話がつながった


(私は)無事だということを告げMに電話をしてみたが

これは10回失敗して結局メールにした


それから2時間、現場を離れて自宅に戻る


駐車場にあったMの車で無事な事を知った


部屋のドアを開けると座り込むM

台所の棚の上から落ちてきた食器


部屋の中はメチャクチャになっていた


テレビは倒れ、ロフトに上げてあった楽譜も本も下に落ちていた

灰皿はひっくり返り中の吸殻が散乱していた

沢山の小物もケースの中でバラバラになっていた


幸いにも電気も水もガスも無事だった


夕食を作るにも火やガスを使うのが危険なので外食にすることにした

車を出したまではいいが国道は渋滞、皆考える事は一緒なのだろう


平屋で駐車場の広いコンビニ、駐車場は車で埋まっていた

倒れてくるものもないから安全だと思うのだろう


渋滞を避け裏道を走って結局食事を終わらせた


ファミリー・レストランや焼肉、寿司…

時間をかけて食べる場所には誰一人いない

マックやコンビニ、牛丼やうどん

すぐに食べてすぐに出ていける場所に皆集まっていた


この先どうなるかわからないから

食べられる時に食べておくべき


食事を腹に中に流し込んで帰宅

22時を過ぎた頃になって両親と親戚から電話がかかった

ようやく繋がった


二人とも無事です


ネットも無事だったので詳しい情報をテレビと一緒に見て得る

現地の映像も、飛び込んで来る情報にいい物は何もない


阪神大震災の時の教訓で人は怖さを知っている

だからこれだけの被害ですんでいると思いたい


「これだけ」と言えるような規模ではないけれども…


連日の重労働に精神的なショック

散乱した部屋をどうしていいかもわからないまま眠りについた