誰も悪くない | ☆

誰も悪くない

私は色がわからない

この障害は先天的な物で今までなんとか誤魔化しながら生きてきた


運転免許も一応取れたし、仕事にだって今まで支障はあまり出なかった

世の中でたくさんの障害を持っている人がいるのはわかっている。
生まれながらに目の全く見えない人もいれば言葉の発せられない人もいる

そういう人々に比べれば像として視覚で捕らえられる私は軽度なのだろう


プライベートでの色の判別は必要がない場合は適当にしてしまえばよかった。
私の着る服は黒がベースの物が多く、無難に黒を選んでいれば事足りたからだ。
それ以外で不便だと思う事はあまり今までなかった。


いや、ないと思い込んでいた



それが仕事の事になると話が変わる


去年入社してから約半年
先日入社して初めて一人で仕事を任された


部材の切断から溶接や加工まで全て私一人で組み立てたその品物
は私の中では満足行く物ではないにしても、上司からは好評だった

最初の仕事として期待していた物としては十分だったらしい


ところが問題は一番最後だった


50角と呼ばれる鉄のパイプは入荷した時点で「真物(まもの)」と呼ばれ

赤茶色の色が付いている。
それにガンスプレーと呼ばれる物で緑色を吹き付けて行くわけだが
角(カド)の部分の色が塗れていない事に自分で気づかない。

影の落ちた赤と緑の区別がつかないのである
気をつけていたつもりだったが、上司に言われ遠くから指さされてもわからなかった

それはつまり一人では仕事を仕上げられないという事
誰かと一緒じゃないと商品を完成まで持っていけないという事


一生一人立ちができないという事


事実はそれほど楽観的な物ではなかったのかもしれない
それでも私が…いや、誰にもどうにかできる問題ではないのである


よくメディアは障害者を大切になんてご大層に放送している
ドラマで障害者がスネて健常者に当たりちらす場面なんてザラにある
その度に「障害者だからといって健常者に苛立ちをぶつけていい理由はない」と思っていた

それでも

この決定的などうしようもない人との違いに苛立ちを覚えた


自分を産んだ両親が悪いわけではない
障害を抱えたまま働かなくてはならない今の世の中が悪いわけでもない
ただ単に自分に運が少しなかっただけなのだと思う


重度の障害者よりは…とか 健常者よりは…とか

誰かと比べたって意味がないのはわかっている

私は私のこの両目で生きていくしかないのだ


誰も悪くない
誰も悪くない…そう思って生きていくしかないのだ