春先の風 | ☆

春先の風

仕事に行こうと部屋を出ると風と雨で外が大変な事になっていました。

 

秋から冬へ、冬から春へ

 

この季節の変わり目に吹く少し暖かい風はいつも昔を思い出させます

 

埼玉に移り住んだのは2月でした

 

ちょうど私が埼玉に出発する日、

 

地元は大雪でタクシーの運転手すら積雪に車をスリップさせるような日

 

18から東京に住み22になる前ぐらいに地元に戻った私にとって

 

やっぱり田舎の生活というのは時間の流れが遅い変化の無い日々でした

 

変わらない事が許せず実家を飛び出した私を待ち構えていたのは

 

理想とは程遠い辛く苦しい日々でした

 

今思えば18からの東京での生活は

 

大企業の社員であり、そして友達に恵まれ

 

自分の好きな事ができた、ある意味恵まれすぎた日々だったのかもしれません

 

田舎の人間から見た東京と言う町は「憧れ」の町

 

でも「行く」のと「住む」のとではあまりにも違っていたんです

 

すでにバブルも弾けてデフレが加速する中飛び出した私には

 

面接の時と話が違う雇用条件と予想以上の通勤ラッシュが待ち構えていました

 

仕事をやめ、音楽の目的も忘れ、そして貧困に喘ぐ生活の始まりです。

 

仕事を止めてからの2週間は何とか生活できていました

 

何もない部屋の中で少しの食事と睡眠、そして作曲

 

本屋でのバンドメンバー募集のチェック

 

一日一食のカップラーメンをとるか煙草をとるかの決断を迫られ

 

つねに空腹でした

 

新しい仕事の面接と引越しの手伝いのアルバイト

 

吉野家の牛丼が唯一の楽しみでした

 

後に帰省した時、母親に冗談まじりにこの話をしたら

 

母親はどうしてその時に相談しなかったのかと泣きました

 

私の中で金銭面での補助は許されない事でした

 

今思えばあの時から自分がしている事が

 

親不孝だという事は重々承知だったんだと思います 

 

ちょうど新規採用のこの季節、

 

上野、秋葉原、大宮、恵比寿…就職活動をしていた頃…

 

この風の匂いが私にとって甘えと決別する戒めの風だったのかもしれません。