ちょっとセレブな夙川句会

「夙川沿いのお花見
+色の魔術師―トラモンティ展鑑賞つきミュージアム茶室句会
+エクセレント・ダイニングカフェでの夕食―
と、ちょっぴりセレブな気分を…」
桜の季節、心ときめく第14回RANDOM句会の案内状が、だっくすさん、りっこさんから届きました。
夙 川
旅人の鼻まだ寒し初ざくら 蕪村
くもり一時雨。気温は2月下旬並み、冬の服装でおでかけを。阪神間の桜は五分咲き…と、浮かれ気分が半減する天気予報です。
阪急三宮駅の東口改札前。集合は2012年4月7日(土)午前10時30分。少し前に着くと、イカリスーパーから出てきた播町さん、大きなレジ袋を抱えて「豪華花見弁当や」。“セレブ句会”はすでに始まっていました。
手頃なお花見弁当と缶ビールを買って出てくると、もう全員おそろいです。
花冷も心あったか句会かな 稲村(1)(数字は句会での得点)
だっくすさん、つきひさん、りっこさんと女性は3名。男性はひろひろさん、播町さん、稲村さん、弥太郎さん、一風さん、見水さんの6名。本日の参加者は9名。女性陣が少なく、男性軍勝利のチャンスです。カメラマンのろまん亭さんが欠席なので今日は播町さん、見水さんが写真撮影。
10時32分発の梅田行き普通に乗り、車窓に流れる六甲・住吉・岡本・芦屋の春景色を楽しみながら10時49分夙川に到着。ここで先着の弥太郎さんが出迎えてくれました。

一刷毛に夙川を染む桜かな 播町(2)
寒冬に耐えし桜の花の色 弥太郎
澄んだ水の流れと桜が目に飛び込んできます。ホームも駅前広場も花見客でいっぱい。
夙川のちょっとセレブな花の風 つきひ(3)
青い眼の女(ひと)の和服や花の宴 りっこ(1)
諸々のことはさておき花人に だっくす(4)
大混雑の駅前広場を抜け、川沿いに阪神香櫨園駅へむけ南へ下ります。だっくすさん、りっこさんは駅前の和菓子店で句会のおやつの鶯餅を人数分購入。

お花見
山又山山桜又山桜 青畝
五分桜人の心は満開に 見水(1)
花を見て老いた人々若返り 一風
花に人行き交う顔は美男美女 ひろひろ(1)
夙川の花見は阪急から上流がメインですが、下流側もあちこちブルーシートで場所取りしています。
あこがれの夙川の地で花をよむ 稲村
夙川は今たけなわの花の宴 稲村(1)
その中にひっそりとした花ござも だっくす(2)
地は羽衣川は夙川花さくら 稲村
桜の名所・夙川に羽衣の地名。美しすぎますね。
老桜の水吸うてなお華やげり 播町(1)
入学の子と母と父花堤 播町(1)
「水吸うて」の水は夙川の水。今日は近くの中学校の入学式があったようで、親子が花の下を歩んでいます。最近は父親も付いていくようなので、と作者の弁。
咲きました若木と並び老い桜 弥太郎(2)
黒い幹ねじれ桜も咲き始め 弥太郎
大地から穀霊醒ます花の精 弥太郎
「穀霊」は桜のこと。桜は稲作の精霊。と説明をうかがって納得。
咲き初めし桜ひとひら味わへり りっこ
五感で確かめるアーチスト・りっこさん、さくらの花びらを口に入れてみましたが…。
お腹が空きましたね。まだ正午には時間がありますが阪神香櫨園駅は目の前。手頃なベンチがあり、あちこちで花見の宴も始まっています。RANDOM句会もここらで昼食タイムにしますか。

花の道そぞろ歩いて缶ビール 見水
せせらぎに電車の音も混じる春 見水(1)
花の下ままごとの子ら睦まじく 見水
青空の下、桜を見ながら食べるのは、なんと気持ちのよいことでしょうか。つきひさんのお花見弁当は、淡路屋の「平清盛たこしゃぶちらし」。
青空に花鈍色に透けてをり つきひ(1)
曇天に桜の静けさまた楽し 一風
桜見て互い見つめて添うふたり 一風
花のとき人それぞれの愁いかな 弥太郎(1)
ひろひろさんは、缶ビール2本を空け、演歌の世界が顔を出しています。
春昼や猫も杓子も赤ら顔 ひろひろ
夙川に夜桜お七男坂 ひろひろ

「そろそろ、出発しよか」。句会場の西宮市大谷記念美術館へ。
花冷えの川跨ぐ駅へ橋三つ 播町(1)
語りつつ句会場まで花の道 つきひ(4)
庭の隅静かにゆれる沈丁花 一風
阪神香櫨園駅から43号線・阪神高速をくぐり、閑静な石畳の住宅街を西へ。満開のミモザに息をのみ、道の両側に咲く菜の花や水仙、雪柳、沈丁花などの花々に春を感じながら歩きます。
ただし「花の道は桜の咲いている道ですからね」とつきひさん念押し。

色の魔術師
見かぎりし古郷の桜咲きにけり 一茶
西宮市大谷記念美術館は、実業家の故大谷竹次郎氏(富山県出身で戦前「鉄鋼王」で名をなし後にホテルニューオータニを建設した実業家・大谷米太郎の実弟)が西宮市に寄贈した美術品と邸宅をもとに、昭和47年にオープンした宏壮な庭園のある美術館。

ちょうど今日4月7日から「色の魔術師―グェッリーノ・トラモンティ展」が開催されています。
彫像の瞳のほの暗き花曇 つきひ(1)
美術館に置かれた岡本太郎の「午後の日」のイメージで詠んだ句だそうです。
全員で句会場の設営をした後、出句締切の午後1時30分まで、トラモンティ展会場を巡って、句づくりに挑戦です。
グェッリーノ・トラモンティ(1915~1992)は、人物や猫、野菜、魚などの身近なモチーフで色彩豊かに絵付けをした陶板、器、陶額を制作し、絵画も残したイタリアの陶芸家・画家です。
初期の素朴なテラコッタの彫刻に始まり、1階、2階の展示場を埋め尽くすカラフルでシンプルでおおらかでキラキラ輝く壺や大皿の陶器が目を楽しませてくれます。どれも古代ギリシャ・ローマからピカソ・マチスに至る南欧のアートの深さ、豊かさを感じさせる作品達でした。
イタリアンアートも輝く春来たり 見水(1)
花の色トラモンティの色に酔ふ だっくす(2)
ミュージアム
海手より日は照りつけて山ざくら 蕪村
長年近くに住みながら、大谷記念美術館に入館したのは今回初めて。こんなに素晴らしい美術館とは知りませんでした。とくに手入れの行き届いた庭園の美しさ。島根の足立美術館を思い出します。
花疲れ横座りして眺む庭 だっくす(2)
男には作れない句、と男性陣声をそろえましたが、さすが日野草城はこんな句を作っていました。
ぼうたん(牡丹)や眠たき妻の横坐り 草城

茶室句会
顔に似ぬ発句も出でよ初桜 芭蕉
午後1時30分が5句出句のしめきり時刻。
美術館の庭園に面した広い和室「緑爽庵」での句会のはじまりです。
提出された短冊をバラし、手分けして清書。選句表を完成させ、全員にコピーを配付。コーヒーをいただきながら、午後1時55分、つきひさんとだっくすさんの進行で句会が始まりました。
まず、20分間かけて各自、他のメンバーの句を選びます。6句選んで、特選句1句は2点、その他5句は各1点、と各人の持ち点は計7点。参加者9名の総点数63点の争奪戦です。
今回も9名がそれぞれ特選句(◎)に選んだ句に、豪華百均賞品をプレゼント。その句を2人が特選句に選べば賞品は2つです。
見事特選句に選ばれたのは、次の6句でした。
五分咲きを待ちかね花の人となる りっこ ⑨◎◎◎
ねじれたる老木すがしき花つけて りっこ (5)◎◎
石畳ミモザの似合ふ香櫨園 りっこ (6)◎
今日のちょっとセレブなお花見句会はりっこさんがダントツ。◎も6個獲得。さすがアーチスト、的確な観察・表現・説得力に全員脱帽でした。
夙川や耳は瀬音に目は桜 稲村 (2)◎
飛び石の橋の向こうも花の道 だっくす(3)◎
川ヲ見テ空見テ春ノ愁ヒカナ 播町 (2)◎
以上で本日の句のすべての獲得点数が決まりました。
総点数63点の行方は、女性軍3名で44点、男性軍6名で19点。女性軍の圧勝でした。また、だっくすさん、つきひさん、播町さんは出句した5句すべて得点のパーフェクトでした。

表彰式です。各賞と受賞者は、次のとおりです。
1位 優勝 りっこ (21点)
2位 準優勝 だっくす(13点)
3位 殊勲賞 つきひ (10点)
4位 敢闘賞 播町 ( 7点)
5位 技能賞 稲村 ( 4点)
6位 夙川賞 見水 ( 3点)
6位 逆引技能賞 弥太郎 ( 3点)
8位 逆引敢闘賞 一風 ( 1点)
8位 逆引殊勲賞 ひろひろ( 1点)
賞品はフーケの洋菓子。予定より早く午後4時すぎに句会終了。会場の後片付けをし、時間まで見残した「グェッリーノ・トラモンティ展」を鑑賞。
あとで届いた播町さんの感想。
「神戸RANDOM俳句会」、記念すべき10周年句会は、セレブ女性3人組の圧勝に終わり、男性軍は全員1ケタ得点。なかでも優勝のりっこさんは特選◎を6つもとる不滅の記録。
これに対しいつも優勝候補の見水さんの惨敗ぶりは目を覆うものがありました。この3月で登り坂を頂上まで登ったという満足感とこれからのゆるやかな下り坂へというストレスのせいでしょうね。そしてメンバー全員が60歳以上となりました。
毎回の新趣向、今回は「色の魔術師―トラモンティ展」を初日に鑑賞し、しかも展示室の隣りの茶室で句会という贅沢さでした。
エクセレント・カフェ
さまざまの事思ひ出す桜かな 芭蕉
午後5時、阪神香櫨園駅東のイタリアンレストラン「Vege+Cafe」到着。新鮮な野菜を使ったおしゃれな料理店。花と緑に囲まれた明るいテラスの席で春の宵の晩餐会です。ビールで乾杯の後、白ワインで料理をいただきながら、句会の反省。

「今日は大和が沈んだ日やで」
一風さんとひろひろさんの1句は、今朝の朝日新聞の「天声人語」で紹介された67年前の4月7日の出陣前日に瀬戸内海の桜を目に灼きつけ「内地ノ桜ヨ、サヤウナラ」の言葉を残した乗員の記事に触発されて作った句でした。
今日の日に逝きたる大和桜咲く 一風(1)
花ひかるひとひらひとひら母心 ひろひろ
つきひさん、美味しい料理とお酒が入って、はっきり思い出したようです。
「川崎展宏さんの戦艦大和の沈没の句はね…」
「大和」よりヨモツヒラサカスミレサク 展宏
「ヨモツヒラサカは古事記に出てくる黄泉の国との境にある坂道のこと」。古代史研究家・弥太郎さんのミニ解説。

そして話題は不評ながら神戸も舞台のNHK大河ドラマ「平清盛」。時代考証のことや、9年前に稲村さんのガイドで歩いた「兵庫津の道」のこと。稲村さんは今年も地元の人たちを清盛像などに案内したそうです。
尼崎で育った一風さんは、かつて海水浴場だった頃の香櫨園浜の思い出を話します。野坂昭如「火垂るの墓」や谷崎潤一郎「細雪」にも夙川は登場します。話は尽きません。
さくらよむ夙川王子句合戦 ひろひろ
桜の句はこのRANDOM句会でもあちこちで作りました。去年の東日本大震災直後の王子公園句会の桜吹雪は圧巻でしたが、石山寺、龍野、有馬でも。
「日本人にとって桜は戦争の記憶と切り離せない特別な花なんですね」
つきひさんの句も、お父さんが戦地から帰還した幼い日の記憶でした。
復員の父を囲みし日の桜 つきひ(1)

お世話いただいた、だっくすさん、りっこさんに心から感謝。
そして、次回の句会に期待。皆さんご健康で。
写真/bantyo,mimizu文/mimizu