春らんまん
有馬吟行
湯けむり句会

「俳句は初めて、吟行は初めて、という人たちが集まって、句会という遊びをやってみましょう。たくさん集まれば、快句・怪句も生まれるでしょう。お待ちしています」という手紙が届き、4月13日土曜の午後、有馬温泉駅に集合したのは12名。
温泉駅集合
例年になく早い桜前線。この日、有馬川にそった小道にすでに桜はない。午後1時前、駅前にあつまってきた人たち。みんな電車からおりてくるものとホームに目を向けていたが、後方からも多く声がかかる。早く到着し、先に偵察というか一人吟行を終えたらしい。
「いっしょの電車だったのに出てきませんね」
「ホームのベンチで宿題をやっていますよ」
この句会、あらかじめ宿題がでていて、それは「春」または「馬」または「湯」という字を折りこんだ句(もちろん季語も入れて)を3句、当日提出のこと、となっている。「題詠」とか「兼題」というそうだが、ここでは「宿題句」とよぶ。
ところで案内状には、初めての人のために、「俳句を作ろう」というペーパーが1枚入っている。辻桃子という俳人の文章だ。
俳句はとかく難しく考えがちだ。とくに社会で立派に活躍している男性諸氏や教養の高い奥様方は、「みっともないものは作れない」 と思うのだろう、尻込みする。だが、いきなり名句を作ろうなどと肩肘張らずに、とにかく始めてみること、それが俳句入門の第一歩なのだ。
俳句の約束事は、五七五という「定型」にはめること、季節を表す言葉「季語」を入れること。とりあえずこれだけだ。これさえ覚えておけば、誰だってできる。俳句はただこれだけでいい。この簡単さこそ俳句だ。
予備知識はこれだけ。
「あのねえ、五七五と季語、それくらい知っていますよ」
ホームで宿題のできたひとが「そんな難しいもんかいなと思っていたけど、ほんとに難しいね」と出札口へ。
午後1時6分、最後の連衆、蛸地蔵さん到着。「みんななんでそんなに早よ来とんやという顔をしてやってきましたね」
全員の宿題は回収され、観光協会発行のイラストマップを受けとる。駅から移動。太閤橋に集合。とりあえず全員が名前を名乗る。初対面の人もいれば、久しぶりに見る顔もある。そして記念撮影。
俳句初体験4名
俳句は小学校以来という俳句歴0年組は、一風さん、蛸地蔵さん、ろまん亭さん、かつらさん。
職場の句会で5年のうしをさん。他の職場句会で5年の楽水さん。元あじさい俳句会5年のだっくすさん。独りで勝手に5年の見水さん。
10年を越えるのは、あじさい俳句会のメンバー、どんぐりさん、さくらさん、つきひさん。パソコンネットで10年の播町さん。
以上、12名。50代10人、60代2人という顔ぶれである。
今日の世話役は、区内に勤務のろまん亭さんとだっくすさん。さすがに有馬にくわしい。「まず善福寺へ行きます。そのあと、御所泉源、温泉寺、極楽寺、太閤の湯殿、銀の湯、炭酸せんべいの店、人形筆の店、炭酸泉源など見て、杖捨橋経由で2時間後に有馬荘に集合というコース」
なにしろ日本書紀にも記されている日本最古の温泉である。とはいっても有馬は身近かすぎ、夜に訪れ早朝に帰還するといったつきあいである。ゆっくり散策したことがない。あらためて町を歩いてみると、古い家並みや店舗のある通りは、たしかに俳句になりそう。
ところで「吟行」とは、詩歌・俳句をつくるために、景色のよい所や名所旧跡などに出かけて行くことである。「当季雑詠」とは、その季節の季題季語を見つけ、素材も自由に詠むことであり、「嘱目」とは、その場で目に触れたものを即時的に詠むことであるそうな。
わが連衆たちは、句をつくる気があるのか、ぶらぶら歩いている。「連衆」とは、連歌・俳諧の会の席につらなる人々、連句をつくる仲間、と辞書にあるが、要は句会の仲間のことだろう。ときどき、メモ帳になにか記したり、鋭く路上観察をしているようにも見える。心配するまでもなく、各人3句の嘱目句は締め切り時間内に提出された。

吟行句一挙公開
さて、のちに句会で披講された嘱目句を、ここでは同時進行で紹介しながら、吟行に同行してみよう。なお、○印の数字は句会での得点である。
最初はねね。新谷英子の若きねね像が川のそばに建っている。
ねね像に挨拶もして桜狩り ④ さくら
いかにもスタートにふさわしい1句。
ねね橋をゆっくり渡る春日傘 ③ だっくす
日傘は夏の季語。春のときは春日傘といいます(つきひ)。えっ春日の局のカスガガサだと思った(ろまん亭)、とまあ、こういうスタートである。じっさいに見たわけではないのですが、日傘をさした着物姿の女性を置いてみたくなりました(だっくす)。橋と日傘が合いますね(つきひ)。
花に添ふ一筆ねねに参らせそろ ○ 播町
古風な言葉づかいです。ぜんぜん票が入っていませんが、作者に句意をきいてみましょう(つきひ)。ねねに花を贈りたい、手紙をそえて(播町)。だったら、花に添へ…、でしょうね(つきひ)。
街中には温泉が湧出する泉源が七か所あるそうだ。公園として整備されているものもある。べつに絵になる景色でもない。しかし肌寒い日などには泉源から湯けむりがたなびけば情緒があるかもしれない。
しゅるしゅると泉源の煙紅枝垂 ② かつら
しゅるしゅるがおもしろい。湯けむりのそばに紅しだれ、いいですねえ(つきひ)。
源泉の香りてきたる木の芽風 ② どんぐり
木の芽風の中にかすかに泉源の香りを感じる。するどい感性です(さくら)。
泉源に花の舞い散る有馬の湯 ○ 蛸地蔵
そのまま今日の感じが素直に出ています(つきひ)。

極楽寺に着く。聖徳太子によって創建された古刹。元々は今の杖捨橋付近にあったが、洪水による荒廃後、有馬温泉の中興の祖と伝えられる仁西上人によって現在の位置に移されという。ここの八重桜だけは満開。これで桜の句ができると、一同ほっとする。本日唯一の桜。
濃淡のしだれ桜の揺れ交はす ⑤ つきひ
動きも色彩もあるしと、楽水さんが特選。のちに「波長があうのでしょうか、楽水さんにはたくさん採っていただきました」とつきひさん。
花びらを気にして歩く極楽寺 ① 見水
風やんでしだれ桜に人溜まる ○ 見水
これも極楽寺の八重桜。「人溜まる」は記念写真を撮っているさまですね。
極楽寺には古くから「太閤さんの湯殿がある」との言い伝えがあった。震災後の発掘調査によって湯殿跡のほか、安土桃山時代の庭園の遺構も発見された。秀吉が有馬に湯治に来てこの場所に造られた御殿で茶会を催したものと推測されている。茶器などが400年の時を経て発見された。岩風呂遺構、蒸し風呂遺構などを展示した太閤の湯殿館。入館料200円。ボランティアの人から説明をきく。
地震あとのしだれ桜や太閤の湯 ② うしを
地震は「ない」と読みます。
紅枝垂太閤殿下の夢の跡 ○ かつら
太閤の湯殿ながめて念仏桜 ○ 一風
太閤の湯殿で花見天下人 ○ 楽水
どうも太閤さんの句は苦戦である。点が入らない。
つばくろの泉源の湯にかすめ飛び ⑤ うしを
湯という熱をかすめて飛ぶという動きがいい。季節感が良く出ている(どんぐり)。
露地ぬける人もツバメも春の風 ④ 見水
露地という狭く低い所を人も燕も抜けるのが抜群。ただ燕と春は季重なり(うしを)。
「季重なり」とは、1句に季語が二つ入っていることで、イメージが拡散するため嫌われる。
有馬人形筆が3句。佳句がそろった。素材がいいのか。
子持ち筆といい、その管の末から小さな人形が現れ、筆を倒すとかくれる仕掛けになっている。古い伝統をもち、色あざやかな独特の愛らしさが親しまれ、竹細工の素朴な味が喜ばれている。
花の坂人形筆は行儀よし ⑧ さくら
8点を獲得。輝ける最多得点句である。早くも有馬らしい句が生まれた。
人形であれば行儀よし云々は言わない。人形筆だから行儀よしが生きた(どんぐり)。
君思い春のことなど有馬筆 ③ 蛸地蔵
意味深長な句ですねえ(つきひ)。筆で春のことを書く、しかし「書く」を入れれば書きすぎ、で「ことなど」としました、と作者の弁。初めてとは思われない新人の作。
有馬筆一首選んで啄木忌 ① 楽水
明治45年の今日は琢木の命日だとか。楽水さんのタイムリーな句。「一首詠んで」にしたらの声に、作者は「啄木さんに失礼かと思って」。
重さうに八重桜活け有馬籠 ⑤ つきひ
春風や編む手休めず有馬籠 ② さくら
開け放たれた店先の情景。籠の中を春風が通り抜けるような(どんぐり)。
有馬籠・竹細工。千利休の好みにより作られた竹細工の伝統は一本一本の竹がしなやか。
湯の坂の春の匂ひのせんべ食ふ ④ 播町
ほのぬくき炭酸せんべい八重桜 ○ どんぐり
有馬といえば炭酸せんべい。温泉から湧出する天然炭酸水を利用して独特な製法でつくられるお菓子。淡白な中に歯ざわりのよい素朴な風味。店先で昔ながらに手づくりで焼くのを見て、一風さん、さっそく購入。みなさんにおすそわけ。なつかしい味やなあ。
名物といえば、松茸昆布。裏六甲、丹波でとれた松茸と北海道の昆布を薪でじっくりと炊き上げた佃煮は風味豊か。
松茸の香り引き寄せ赤ポスト ○ 一風
昆布はこの1句のみ。老舗の昆布屋とクラシックなポストを詠んだ。
振り返り1句誘わん初音かな ⑤ 楽水
うぐいすを聞きあきてをり地蔵尊 ① 蛸地蔵
せせらぎにうぐひす止まぬ瑞宝寺 ① うしを
泉源にうぐいすの鳴く杉木立 ① かつら
尾を引いて鳴くか有馬のうぐいすも ① ろまん亭
すこし薄曇の空にうぐいすの鳴き声が飛ぶ。いかにも1句できそうな。それを楽水さんはみごとにまとめた。高得点である。
炭酸泉源公園へ。かつてはこの谷の断層の割れ目からたくさんの炭酸ガスが噴き出し、虫や小鳥が死んだことから、この付近を虫地獄、鳥地獄と呼んでいた。湧き出ている炭酸水は、昔はその成分が分からず、地元の人々から「毒水」として恐れられていた。明治になって、炭酸水が良質の飲料水であることが分かり、上屋を作ったりして飲用の便が図られた。この炭酸泉源も公園として整備されている。
神戸の子は、遠足のとき必ずここに集合しました、とかつらさん。それがヒントになったのか、つぎの句。
少年になって炭酸水の夏 ④ 播町
しゅぱっと口の中で弾ける感じ、躍動感があっていい(さくら)。一足早く夏を詠ったのがいい(つきひ)。しかし炭酸水というのは、夏の季語で季重さなりでは?
手づからで飲む炭酸の遠き春 ③ ろまん亭
句意はいっしょ。特選句に選びました。負けました(播町)。
杖捨橋ゆっくり渡り春惜しむ ④つきひ
吟行も最後のコース、杖捨橋へ。2時間近く歩いて疲れたから、ゆっくり渡るのかと思えば、さすが俳句は、春を惜しむ、ためだという。
ここまできて視界が180度広がり、春の風景が一望できた。ゆっくり渡り、が実感できます(さくら)。
杖捨橋土手にたんぽぽひっそりと ○ 一風
桜ばかりに目が行っているのに、たんぽぽに注目したのはユニーク、さすが一風さん(つきひ)。
最後に、全景を詠った句。
花の風有馬は坂の多き街 ④ だっくす
せせらぎの流れに乗らぬ花筏 ④ だっくす
桜みる谷間にのぼる湯煙ひとつ ③ ろまん亭
春愁のその日の来ればそれなりに ② どんぐり
嘱目句、一人3句、全36句を紹介した。最後のこの句、どうも全員の心境を代弁したよう。うっとおしい気持ちで参加したが、いざとなればそれなりに句はできました、というところでしょうか。いやあ、みなさん、さすがですね。

午後3時、句会会場の有馬莊に到着。1階のロビーで疲れたといって休憩。が、どうも話しかける雰囲気ではない。締め切りをひかえ、頭の中で句を反芻しているのではないか。1人途中で行方不明だったうしをさんも到着(瑞宝寺まで足をのばしていたよし)。 この時点では、先に記した句はまだ未提出、公表されおらず、各人のメモの中に眠っている状態。
ここですでに処女作をつくってほっとしている4人にきいてみた。
ろまん亭さん。
「小学校以来です。柿食えば鐘が鳴るなり、とか」
「あ、それ、ろまん亭さんの句ですか」
「ま、つくれと言えばつくれます。けど良さ悪さが分からない。詩より楽です」
蛸地蔵さん。
「できますけどね。言葉遊びはできますが、良否がわからない。宿題は朝早く起きてつくりました」
かつらさん。
「1句くらいならと前から思っていた。さっき電車の中で、その気になったら一七文字が並びました。ただしその道の作法を知らないので」
一風さん。
「……」

句会開始
清記という作業は結構時間がかかるもの。そして宿題句の一覧を配布、集まった36句から選句をする。ルールは、特選句1句に二重丸(2点とする)、ほか5句を選んでもらう。ま、選ばれるのは1/6の確率である。
選句の時間は真剣勝負。選句こそ実力が問われるのである。座は沈黙が支配する。
いよいよ句会開始である。だっくすさんよりルールの説明。
「つきひ先生に主宰をやっていただきます」
「年齢、句歴から私がやらせていただきます。楽しくやりましょう。先生と呼ばれるのは好きではないですが」
「じゃあ教授と呼びましょう」
一同どっときて、しかしやや緊張気味にスタート。じつは教授という呼び方がいかにふさわしかったか。見事な運営振りに、終わってから連衆の賞賛の声しきりだった。句会の成功は、つきひ教授によるところが大きい。
宿題句の一覧と、各句の選句者、作者が一挙に公開された。
「おっ」という声があちこちであがる。悲喜こもごもといいたいところだが、自分の句の得点を見る余裕がない。
「高得点句から披講します」とつきひ教授。○印内の数字は得点。
金泉に春愁の身を沈めをり ⑪ だっくす
だんぜんトップ、ぶっちぎりの11点。
金泉は有馬の湯ですね。温泉は鉄分を含み空気に触れると酸化して赤くなる含鉄強塩泉と、空気に触れても変色しない食塩泉や炭酸泉、ラジウム泉が湧出する。含鉄強塩泉は「赤湯」または「金泉」、変色しない湯は「銀泉」とよばれる。
楽水「沈めをり、という落着いた感じ。身も心も浸っている」
うしを「落ち込んでいる自分にぴったりで、文句なしに◎」
さくら「春は華やかさの一面、愁いの季節。リラクゼーションしたくなるような雰囲気がいい」
どんぐり「春愁も忘れてしまったような身の沈めっぷりがいい」
ろまん亭「写真専攻の私としては、光の情景が見えるので選びました」
見水「イメージがいい」
一風「素直に情景が浮かぶ」
つきひ「悩んでいるけど贅沢に湯をつかっている感じですね。選んでない人は?」
播町「春愁の句がたくさんありましたね。自作に及ぶものはないと選びませんでした」
宿題は「春愁」という季語に偶然にも集中した。他の春愁の句。
剃りすぎし眉を描くも春愁ひ ④ だっくす
春愁を放つ露天湯溢れけり ② つきひ
春愁や有馬に会す日の近く ② どんぐり
湯に癒すやうな言葉も春愁ひ ① 播町
金の湯という華やかさに愁いの身を沈める、というだっくすさんの句に票が集中した。
だっくすさんは俳句歴5年。あじさい俳句会につきひさんから「命令されて」入ったそうだ(現在は退会)。「今日も宿題はこちらへ来てから」つくったそうです。本日の準備、案内状から宴会まで、投句用紙から清記まで、いっさいを担当。ごくろうさまがむくわれた最高得点句である。
春陰の老舗に選りぬ有馬筆 ⑧ つきひ
だっくす、楽水、どんぐりが◎特選。
だっくす「あの老舗はいかにも春陰という感じ。特選に」
楽水「私も◎。あの情景はこうつくるべきであったと感じた」
うしを「筆と春陰の組み合わせがいい」
さくら「有馬筆も少なくなり、店を見つけて嬉しかった。老舗と春陰がぴったり」
どんぐり「それと華やかな有馬筆との対比がいい」
一風「採らなかった。いかにも有馬という句ははずした」
かつら「いい句。でも有馬の型にはまりすぎ」
次もつきひさん。絶好調である。
金泉を掬ひ春光砕きけり ⑥ つきひ
播町「金が砕ける」のイメージがいい。二重丸です」
どんぐり「やわらかな春の光、金泉をすくうあたたかさ」
うしを「こまかくきらめきをとらえた」
楽水「形が見えるが、すぐ消える、その瞬間、場面の変化をうまくとらえた」
だっくす「動作が絵のように動くところがいいです」
つきひ「みなさんに良いと言っていただいたら良い句なのかなあと。本人が気づかないところを句会で教えられる。つまり句会が句をつくるのです」
つきひさんは、昭和50年ころから句作を開始。近々句集出版の噂も…。「いやいや、噂が先行して。そんなことはありません」とご本人。

湯上がりの下駄の音かろき春の宵 ⑥ 楽水
さくら「平凡といえば平凡。湯上がり、下駄、春の宵。けれどこれが日本の良さ」
かつら「宿題は湯という文字を折り込むのに困った。こんなんでええんやと気づかされました」
一風「軽さと春が素直に出ている。二重丸です」
下駄履いてかわら湯に入る春の宵 ① うしを
という偶然にも、下駄、湯、春の宵の句があった。点数の差はなぜ?
楽水さんは、職場の句会に入って5年。「師匠は坪内稔典先生で。お顔も見たことがないのですが。年1回、選句をしていただく。しろうと同士の互選とは違う。互選で受けていた人が先生からは1句も選ばれず落ち込んでしまう。17人のメンバーに番付があって、私は十両からはいって今小結です。4か月に1回なので。いやな題でも、出てくるとつくります」
風も樹もミミズもボッティチェリの春 ⑤見水
つきひ「ヴィーナスの画家ですね」
うしを「風、樹、ミミズと並べることで盛り上げていく手法がうまい」
かつら「17文字を並べるのにこういう方法があると思って、びっくり二重丸」
つきひ「ミミズには驚きました」
播町「カエルもミミズもみなごめん、ですね」
見水「花、草を入れたらとも考えたが、新芽が出てくるまだ冷たい春の感じを出したかった。今朝草引きをしていてミミズが見つかったので」
見水さんの句歴。「中学3年国語の時間に作ったのが初めて。子どもが幼稚園のときパパとしてつくった「ただいまと麦藁をぬぐ真っ赤な子」がデビュー作。幼稚園の文集に載りました」
春風やポニーの背の子しゃくり泣き ④ うしを
どんぐり「怖いけど喜んでいる子、あたたかい場所の雰囲気がいい」
蛸地蔵「風景をきりとった。やわらかい風とポニーと子どもと」
播町「孫を俳句にすると馬鹿にされるそうですが、孫俳句には興味があります」
うしを「私、孫はいません。三木にホースランドがあってよく行きます」
うしをさん。「平成9年から。どんぐりさんから誘われて、千原叡子先生指導の職場の句会に参加。最初あまり興味もなかったが、だんだん奥深さを感じるように。しかし断続的に句会から逃げようとしたが、そのたびどんぐりさんに引きとめられて。いまでは俳句の本ばっかり読んでいる。今朝は3時から起きて宿題をしました」
春なれば心さわぐや出合いあり ④ 蛸地蔵
ろまん亭「この場にぴったり。二重丸」
見水自分にはつくれません」
蛸地蔵「今日の意識はない。宿題という強迫観念。出合いか別れか、まあ出合いでしょうと」
播町「人事異動のことではないんですかな」
句会は高得点順に進んでゆく。以下、都合により話題句などとりあげる。
いかり秘め湯の谷に咲くコブシ花 ① ろまん亭
つきひ「怒りがわからなかった。言葉に出さず怒りの表現を」
まん亭「これは川柳です。怒りと拳で」
播町「辛夷の花は、赤ちゃんのこぶしに似ているので、そう命名されたのでは」
つきひ「有馬の花は辛夷です。旅館の女将さんの集まりもこぶし会というのではなかったかしら」
馬の背か六甲の山脈かすむ春 ① ろまん亭
ろまん亭さんのこの句、意味の異なる「馬の背」を詠んだ蛸地蔵さんが入れた1点のみ。
馬の背を越えて散りおり花吹雪 ③ 蛸地蔵
こちらは動物の馬だそうです。
馬場さんの一蹴り千本桜散る ① 播町
ろまん亭「句に固有名詞がはいっていますね。馬場さんって誰ですか」
つきひ「ジャイアント馬場さんのことでしょう。馬場さんの一六文キックで千本桜がいっせいに散ったようだ、と句意。
播町「この句で優勝をねらっていたのですが、あえなく散りました」
春雨や富士の頭は真白にぞ ① かつら
富士裾野牧場新緑馬親子 〇 かつら
「先日富士へ行ってきた」というかつらさん。漢字ばかりの意欲作で挑戦したものの、票集まらず。このことで気付いたのは、句会の場所に選句は影響されるということ。宿題は有馬を想定した句を期待したものでないが、作者も選者も場を意識してしまう。かつらさん、作戦を誤ったようだ。
摩耶詣馬の背中に昆布ゆれ ○ 一風
光る風野生馬群れる都井岬 ① 楽水
住吉の桜ここにも有馬道 ③ 見水
この3句も同様、地名は要注意ということか。
おぼろ月近くて遠き有馬の湯 ② どんぐり
春愁や有馬に会す日の近く ② どんぐり
後の句、見水さんが二重丸。
見水「仕事の手帳に今日有馬句会と書いていたのですが、近づいてくるにしたがって違和感が生じてきた。連日仕事仕事のなかで句会という遊びへ気持ちをもっていけない。で、この句に二重丸」
どんぐりさん。「この句会は男性が多く、雰囲気が違ってよかった。職場の句会はほとんどが女性なので」。とはいえ、男性の選句基準がちがうのか、いつものように票が入らず、春愁の気分がぬけないようだ。
わたぼうし君はいずこか春の風 ① 一風
春待ちて開く湯の家に地域沸く ① 一風
一風さん。吟行の句も、みんなが桜ならたんぽぽで、みんながせんべいなら松茸でとユニークな視線で挑戦したが、どうも裏目にでてしまったようだ。
金銀の湯に迎へられ坊の春 ② さくら
肩に乗せ春の光と湯の香り ③ さくら
「なんとも色っぽい」と蛸地蔵さんが2票。
さくらさん。「20代の看護学生のころクラブで五十嵐哲也先生の指導で句作をはじめた。その後、子育てで長い間中断。復活して10年近くです。こんな気楽な句会は初めて。俳句がより身近に感じられてほんとうによかった」
こうして4人の初体験組をまじえての句会はにぎやかに終わった。午後6時。さあ宴会にしましょう。それにしても全員得点できたのが何よりもよかったです。ほっ。

感想一言
蛸地蔵さん。
「なかなか刺激的な1日でした。1字でがらっと変わりますね。日本語の難しさをいまさらながら感じた。気が向いたらまたやりたい。最近、たけのこが好きになってきました。山科の田舎風のたけのこ料理ですとか。そういう句をつくってみたい。普段使わない言葉より、使っている言葉でつくりたい」
一風さん。
「吟行という言葉は知っていたが、こんなに難しいとは。摩耶詣という季語があるが、最近この行事が復活した。馬が天上寺へ参る。背中に菜の花、昆布を巻いて。摩耶山俳句大会もある。職場の灘区はそういう環境。もう一度勉強をし挑戦したい」
かつらさん。
「異文化に接するというか、そういう体験でした。駅で帰りたくなったが、1句ぐらいつくれると思って参加。難しいものですね。品評会?というか句会は楽しかったです」
ろまん亭さん。
「小学校時代から、何十年ぶりにつくった。写真をやっているが、俳句によって、これから違った写真ができるかも」
宴会では、蛸地蔵さんの「辞書を忘れたので、字がわかれへん」の発言から、つきひさん、どんぐりさん、さくらさんの持っている電子辞書が話題に。蛸地蔵さん「これは武器ですね」。つきひさん「うぐいすを引くとほーほけきょと鳴くのもあります」
話は俳句から昔話へ、仕事の話から俳句へ、俳句の話から次は何にトライしようなど、宴会は2時間続き、午後8時解散。
(2002.4.13)