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神戸RANDOM句会

シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

追悼!かをるさん

2021年1月10日、神戸RANDOM句会の句友 三代薫さん(以下「かをるさん」)が亡くなられたとの報がありました。心からお悔やみ申し上げます。

当句会では、2003年篠山<陶・俳>紀行から参加され、2010年神戸駅前フォト句会まで7回参加され、その後体調を崩され不参加が続いていました。

 

 

ダンプカー停めて昼餉や花の土手

降っているいないとも見ゆ春の雨

重衡の碑に迎へられ花の句座

移ろひの時を訪ねて花の径

昆陽の里歴史ひもとき冬ぬくし

 

石舞台日矢射し込みて暖かし

無言なる礎石に冬日集まれる

一駅の間をつるべ落としかな

朝寒や脈看る指を暖めて

誰が待つぞ行きて戻れぬ紅葉橋

 

 

篠山にて ~調査を一緒に~

かをるさんが明日香の句会で詠まれた句に 

飛鳥路の仏の微笑(えみ)の謎めける 

というのがありますが、私はかをるさんの雰囲気を優しい仏像のようだといつも感じていました。

保健所で一緒に勤務したことはないのですが、私が女子大に勤務するようになり、予防医学協会から、仕事の依頼があり、ゼミ生と共にその仕事に関わるようになって、協会に派遣されていたかをるさんとご一緒する機会が出来ました。

予防医学協会から依頼された仕事内容は『元気な骨をつくるキャンペーン』事業の中で、「骨量減少・非減少群における栄養に関する調査」でした。対象地区は当時の篠山市西紀町・市島町、私が関わった期間は平成9年から11年までの3年間でした。かをるさんは勿論、保健師として検診結果の説明や事後指導等にあたられました。

小さなコミセンや保健センターを一日に何か所も巡回調査します。時間の関係で草山温泉に宿泊した事がありました。かをるさんは、早起きして、朝食までに西山泊雲(だったと思います)の句碑を見てきたといわれびっくりしたのを覚えています。

コミセンの多くは畳の部屋で正座しての聞き取り、偶然出会った案山子コンクールの案山子、草山温泉の宿でゼミ生と一緒に遅くまで整理や準備をしたことなど、思い出すと懐かしさで胸が一杯になります。

花時計 ~市長と語る~

昭和50年の神戸市職員誌「花時計」に「地域の人たちの健康を守る」というテーマで保健師3人栄養士2人が出席して宮崎市長と座談会をした記事が出ています。保健師の一人がかをるさんで当時は生田保健所勤務、若き日のかをるさんの活発な意見と写真が載っています。

最近は、句会で会うこともなく連絡も取れずにいました。突然の訃報に驚き、ご生前のお付き合いに感謝すると共に、行きて戻れぬ紅葉橋を早々と渡られた事を残念に思います。                                                                                (2021.3)

 

 

 

*2004年1月 私の30句 春愁 「RANDOM」第7号

足先にまとわりつける余寒かな    

春愁や少し濃い目の珈琲を      

春愁や汝の心のうらおもて      

春一番ガイドは声を高らかに     

紫木蓮二階の窓の白障子       

ダンプカー停めて昼餉や花の土手   

土手守る如き老桜散りそめし     

真っ先に晴れ間抜け来る夏燕     

出港を待つ異国船風光る       

捩花にひとつひとつのねじれかな  

 

たじろがぬ強き西日に凌霄花     

大夕焼けジャンケンをして子等帰る  

子に教へる鬼灯笛の作り方      

山荘は蝉時雨せる中に閉ず      

外孫も内孫も居て秋祭り       

一と駅の間をつるべ落としかな    

土地の芋買ひし笑顔の農婦より    

裏参道日箭さすところ紅葉濃し    

おにぎりを持って二人の秋惜しむ   

寝て居たる児を抱きて来し村祭り 

  

ローカルの電車しずかに秋の暮れ   

冬の田を犬一匹が横切りぬ      

冬日射すホームはいつも向かい側   

乾ききったる音のして落ち葉踏む   

おびんづる撫でれば寒さまさりをり  

古色なる三重の塔山眠る       

宝物殿深閑として京の冷え      

冬の海鈍き光を返へしけり      

海越えてもう明けたかと初電話  

朝寒や脈看る指を暖めて

 

*2003年7月 篠山〈陶俳〉紀行

城下町思ひ出誘う初夏の風  

合歓の花妻入り商家の片隅に   

梅雨明けに飛行機雲の限りなく 

 

*2004年10月 伊賀上野句会

蔦紅葉のびる土塀や寺町に   

生誕を祝う美酒あり伊賀街道

秋時雨祭りの後のしとど降る

 

*2007年4月 須磨寺句会

重衡の碑に迎えられ花の句座

移ろひの時を訪ねて花の径 

降っているいないとも見ゆ春の雨

 

*2007年12月 伊丹句会

切れ目なく雲急ぎ行く冬近し

子等の声おこる羽音にかき消され

昆陽の里歴史ひもとき冬ぬくし

郷の人歴史を語る冬の句座

歴史継ぐ柿衛文庫残り柿 

 

*2008年11月 明日香村句会

無言なる礎石に冬日集まれる

飛鳥路の仏の微笑(えみ)は謎めける

柿落葉酒船石はひっそりと

石舞台日矢射し込みて暖かし 

 

*2009年11月 明石句会

閉じられし門のうちなる石蕗二本

秋深し水琴の音秘めやかに 

七五三親も子も皆晴れやかに

子午線をまたいで天空秋日射す

 

*2010年10月 神戸駅前フォト句会

今日の日の主役はワタシ七五三

秋の日の終い御輿のかけ声に  

誰が待つぞ行きて戻れぬ紅葉橋

お決まりの席は窓際蔦紅葉 

大弓を射る一呼吸秋日濃し

 

*2012年11月 十句集 

降っているいないとも見ゆ春の雨 

生誕を祝う美酒あり伊賀街道

秋時雨祭りの後のしとど降る

花冷えに心の澱は融けきれず    

無言なる礎石に冬日集まれる  

子等の声おこる羽音にかき消され  

石舞台日矢射し込みて暖かし 

子午線をまたいで天空秋日射す 

お決まりの席は窓際蔦紅葉

大弓を射る一呼吸秋日濃し

 

 

 

俳句への思いを強くしたのは二十五年も前でしょうか。仕事で、在宅療養をしている方々を家庭訪問している頃に二つの出会いがありました。

一つ目は、難病でベッドから動けない奥様をご主人がかいがいしく介護しておられる仲の良い五十代のご夫婦との出会いです。

お二人の共通の趣味は俳句。奥様はベッド上から見える庭の草花や景色、部屋に入ってくる空気や音や匂い、身動きが出来ない限られた空間の中で全身で季節を感じ作句をしておられる姿。それをやさしくサポートしているご主人の心配りに強い感動がありました。

奥様は俳号を「助舟」さんと言われ、亡くなられる頃の句に『四日はや樂ながし来る塵芥車』という句があります。全身を目にし耳にして正月の三が日が過ぎたことを感じておられるのだと思った覚えがあります。

二つ目は、お姑さんの介護をしているお嫁さんが、介護の厳しさ辛さを句に詠んでおられました。初めて『生き御霊』という言葉を知りました。「俳句があってやっと自分の気持ちを支えていける。」と話されたことを思い出します。

たった十七文字ですが、大きな奥深い働きをするのですね。

その頃から私も少しずつ句を作るようになりました。

 朝寒や脈看る指を暖めて    

(2004年1月「RANDOM」第7号)

 

 

 

三代薫さんの訃報をきき、「春の雨」を思った。

 降っているいないとも見ゆ春の雨

須磨句会において圧倒的な票をあつめた三代さんの句である。

――須磨は雨でした。春雨は「かそけくあえか」と歳時記にあります。まことに見えないほどの雨が降る4月22日(日)。若葉雨なら夏の季語だし、今日は春なのか夏なのか悩みます。

と当時、当方は句会の模様を書き出している。

虚子編『新歳時記』に「春雨」について、こう解説されている。

――春雨といふ言葉には、艶やかさ、情細やかなものなど感ずるのであるが、〔…〕草木の芽を育て、花の蕾を綻ばせる春雨の感じは、一面しっとりとした味を持ってゐる。

ここにある「情細やか」にして「しっとりとした」は三代さんのイメージそのものです。この句は自画像ともいえるのではないか。

吟行、句会、宴会という3点セットのRANDOMの年2回の集まりにおいても、三代さんは目立つことなく作句に集中されていました。当方はほとんど私的な会話をしたことがありませんでした。

海越えてもう明けたかと初電話 

 という句がありますが、たしか娘さんがヨーロッパに在住とかお姉さんがいるアメリカへ旅行するために欠席とかの話があったので、この明るい新年の句意がわかりました。また、

足先にまとわりつける余寒かな

 これは1995年1月17日大震災の頃の句でしょうか。当時神戸市中央保健所の保健師として市民の命を守るために自らを削るような日々を送られていました。

 なお、三代さんが保健師として書かれたものに、月刊『ゆたかなくらし』 全国老人福祉問題研究会 編、1987年12月号に「ねたきり老人と住居」 が、また『保健婦雑誌』 医学書院、1995年9月号に、「災害時における保健所の果たした役割 医療班との調整を担当して」があります。

当方の好きな三代さんの3句を紹介しました。

心からご冥福をお祈りいたします。                                                                                (2021.3)