
記念句会
2年を超えて続くコロナ禍に加え、ロシア-ウクライナ戦争や阪神タイガースの不振など、いいことがありませんが、今春は、2002年4月の第1回神戸RANDOM句会から20周年。
播町さん・稲村さん・波平さんが定年退職を機に発刊した「高齢者予備軍の遊び探しマガジン『RANDOM』」第1号の遊びの企画として、「春らんまん有馬吟行湯けむり句会」を12名で開催し、その記録が掲載されたのが初回。

句会は、丹波篠山、伊賀上野と続き、2007年の第4回「須磨寺かいわい雨中吟」から年2回開催が定着。日帰りの吟行・句会・呑み会3点セット、コロナ禍にはリモートの在宅句会で対応し、「神戸RANDOM句会」は賑やかに続いています。
いま、コロナ禍第6波の大波が落ち着き、3回目のワクチン追加接種を全員終えていることから、さくらさんの提案で「祝20周年・有馬句会」を開催することにしました。

開催日は2022年4月25日(月)、コロナ対策で密を避け、花見シーズンが終わりゴールデンウイーク前の若葉の季節の平日昼間に。有馬は第1回の開催地で、第10回の2010年4月にも桜を満喫し、名句、佳句が不思議に多くうまれました。
天気予報は雨でしたが、晴れ男・一風幹事長の気持ちが通じたのか、直前に晴天に。気温も上がり、午後は夏日になるよう。
残念なのは、この句会を生み育てた播町さんの欠席。体調管理のため自粛ということで「郵便で5句投句」の参加です。…〇数字は句会での得点
母に似てきたと云われし桜かな 播町
耕やせばわが老いの身に萌ゆる句が 播町①
悪童の老いて落花の句座三たび 播町②
せせらぎに風の歌聴け夏近し 播町②
湯の町に足湯だけして春惜しむ 播町
「母に似て…」は句集「水の家」の「母病めば母をめがけて散るさくら」を思い出します。
有馬へ
句会幹事長の一風さんは、午前9時前に神戸市営地下鉄「西神南駅」から乗車。メンバーが各駅から乗り込んで来るか目を凝らします。
行く春にわが人生をふりかえり 一風①
ぞろぞろと人の行き交う四月かな 一風
伊丹から出発の蛸地蔵さん。久しぶりの神戸です。三宮駅から乗車。
ひさびさの句会も楽し春も逝く 蛸地蔵
なつかしき神戸の街は春じまい 蛸地蔵
明石のひろひろさんは、通勤時間帯をはずし少し遅れて参加。
春句会寂しかったぜ腕時計 ひろひろ
電車のる気使う我や春暮るる ひろひろ
コロナ禍で外出を控え、腕時計をはめるのも電車に乗るのも2年ぶり。
駅前集合
神戸電鉄「有馬温泉駅」駅前が集合場所。集合時間は午前10時。
新緑や昔ながらの古い駅 弥太郎①
神戸電鉄はニュータウンの駅ではエレベーターやエスカレーターを設置していますが、「有馬口駅」や「有馬温泉駅」はひなびた昔のままの駅。全国から訪れる観光客にはお洒落なKOBEとのギャップが魅力かも。
電車は9時53分に到着したはずですが、揃ったのはまだわずか。
「皆さん、どうしたんでしょうね」
「三宮駅では見かけましたが」
幹事長・一風さん率いる一行は、「谷上駅」での乗り換えで迷い、1本遅れたようです。
神鉄の音もなつかし長閑なり 一風①
神鉄の駅毎に触れ若葉風 さくら①
登山電車のようなのどかな神戸電鉄は旅情をいざないます。約10分遅れで到着。
駅前にはタクシー乗り場があり、老舗旅館や温泉施設の送迎バスがひっきりなし。今年初めてのツバメがかすめ飛んでいました。

老いつつも三たびの有馬風薫る 一風③
久に会ふ句友有馬の若葉風 さくら
名にし負う有馬の里に風光る 蛸地蔵②
第36回神戸RANDOM句会「祝20周年・有馬句会」のスタートです。
今回の参加者は、さくらさん、だっくすさん、つきひさん、どんぐりさん、へるめんさん、の女性5名。男性は一風さん、蛸地蔵さん、英さん、ひろひろさん、見水さん、弥太郎さん、ろまん亭さんの7名で計12名。本日はろまん亭さんの奥様が同行されるので総勢は13名。
後で合流するだっくすさんとひろひろさんを除く11名が揃いました。コロナ禍で長く会えなかったメンバーと久々のマスク越しの対面。一風幹事長から本日の予定の確認と、播町さんと稲村さんの欠席の報告。…◎は句会での特選句
記念句会欠けし人あり花は葉に つきひ③◎
春句会代表選手参加せず ひろひろ
この好天気です。感染対策は細心にして、記念句会を存分に楽しみましょう。
アラカンはまだアラエイティ山笑う 見水
春深し遊びをせんとや集ひけん へるめん①
2010年の第10回有馬句会で、ろまん亭さんは「アラカンを過ぎて愛でるは散るさくら」の佳句を詠みました。かつてのアラカン(約60歳)は、アラセブ(約70歳)・アラエイ(約80歳)になりました。さあ、出発。
有馬温泉を歩く――――――――――

―(一社)有馬温泉観光協会・神戸市 令和3年10月発行 イラストマップ よりー
太閤橋
有馬観光の出発点は豊太閤像が出迎える湯けむり広場。有馬川にかかる太閤橋で記念の集合写真を撮りました。快晴です。

太閤の像にしだるる残花かな どんぐり③
山笑う有馬の谷で吟行を 英②◎
太閤の有馬の跡や春惜しむ 英③
播州攻めで出会った有馬温泉を秀吉はこよなく愛し、天下統一の後も有馬に別邸を設け、正室ねねや千利休としばしば訪れ、瑞宝寺のひぐらしの庭で遊び、晩年には専用の湯殿を建てました。
湯殿出て太閤見しか春の夢 さくら②◎
春の夢持続可能な片想ひ へるめん③◎
有馬でどんな楽しい夢を見たのでしょうか。

川巾は春光の巾かがやかに つきひ③
有馬川がきらきら輝きながら流れています。
川を眺めながら上流に架かる赤い欄干のねね橋に向かいます。
ねね橋

ねね橋のたもとに凛々しいねね像が立っています。
豊太閤像もねね像も彫刻家・新谷英子さんの作。有馬の玄関口を飾るシンボル像だけにともに好感度のある像です。
ねね像は20年前のまま若く、今日はもみじの若葉に包まれてひときわ美しく、魅了されます。
ねね像の上に新緑もみじかな 弥太郎①
ねね像の裳裾のぬれて若楓 どんぐり①
ねね橋にみたび参りて若楓 見水③◎
秀吉の没後、家康により豊臣氏は滅亡しますが、時代をしっかりと生き抜いた女性でした。ウクライナ侵攻のニュースを連日見ていると、独裁者だった太閤殿下や鎌倉殿より現実を直視したねね殿や政子殿を応援したくなります。
振り返るねね橋太閤橋おぼろ つきひ①
有馬川ねね太閤の春かなし 蛸地蔵
有馬川を後にし、人気の土産物店が並ぶ広い太閤通を奥に進みます。桜を観に階段を登った眺めのいい善福寺には今回は寄りません。通りの奥でふんぞり返っていた猿回しのお猿さんも今日はお休み。

湯本坂
句会場の「かんぽの宿有馬」までは狭くて急な上り坂。それぞれに目的地に向かいます。

「金の湯」の外には誰でも飲める飲泉がありますが、コロナ禍で休止しているよう。テレビによく映る「足湯」もよく空いています。
句会場へ坂の片陰拾ひつつ つきひ②
金の湯のぬるき足湯に春惜しむ だっくす③◎
春暑し有馬の町は急勾配 だっくす


坂の両側は有馬らしい店や小宿が続きます。勢いよく湯けむりを上げる「天神泉源」や「御所泉源」に今回は寄りませんでしたが、道沿いの「妬(うわなり)泉源」から少し湯けむりが出ていました。伝統の「人形筆」や「有馬籠」の店は相変わらず人気です。
木造の三階建の藤の房 どんぐり①
路地の奥古き宿屋に門柳 蛸地蔵①
山吹きが有馬の宿を色どれり 英
春うらら古湯をめぐる坂の道 弥太郎③
店が途絶え、タンサン坂を登ると、八重桜の花びらが降りかかり、大きなイタドリが。「もう少し小さかったらかじってみるんやけどな」と森林浴。
上がる下がる上着荷となる坂薄暑 さくら①
脇見歩きおっと鼻先毛虫かな へるめん③
炭酸泉源

炭酸泉源公園まで登ってきました。もっと殺風景な場所のように記憶していましたが、12年ぶりの公園は樹木が生い茂り、新緑の森の中にいるよう。炭酸泉は飲めるようになっています。
登りきて炭酸泉源汗ぬぐう 見水
木樹若葉成長早し十八才 ひろひろ
泉源の炭酸甘し樟若葉 へるめん①
炭酸水咽にはじけて若楓 どんぐり②
こぶし道

つづら折上るなぞへの著莪畳 どんぐり
若葉道まがりくねって句会場 へるめん③
晴れわたる湯の街有馬菜種梅雨 英
炭酸泉源公園から有馬の外周道路のこぶし道へ、つづら坂を登ります。著莪(しゃが)の花が咲いています。
こぶし道からは、少し霞んでいますが、北神の団地や有馬富士など三田の山々が望めました。

風少し松の花粉のけぶりをり だっくす
稲荷社へあえぎ登った春の昼 弥太郎
新緑の温泉神社鳥の声 弥太郎
弥太郎さんは単独行で稲荷神社の長い階段を登り、温泉神社の鳥の声に癒されたようです。
炭酸せんべい

こぶし道の先にある湯の花堂本舗の炭酸せんべいの製造所では、割れせんべいを格安で販売。ろまん亭さんは今回の句のテーマを有馬の炭酸せんべいにしぼりました。
春風に有馬せんべいにおいくる ろまん亭①
有馬せんべい春風そよぐ心地よく ろまん亭
ビニール袋にセンベイ破れて春の風 ろまん亭
ビニール袋にせんべいわれておいしそう ろまん亭
五月のせんべい破れておいしく見える ろまん亭
乾杯・昼餉
昼食と句会の会場の「かんぽの宿有馬」は、12年前の第10回有馬句会でも句会と夕食で利用しました。今回は午前11時から午後4時までの利用。早く着いたメンバーはロビーのソファで句作りをしたようですが、正午が近づいてきたので、2階の「六甲の間」に全員移動し着席。
今回は20周年記念句会。20年間の句会の一覧と各メンバーの名句から選んだ「かるた」(ブログに掲載済)を配り、会費をいただきました。


一風幹事長から午後の予定の説明。追加で、「20年間の句会で1番の思い出」の提出もお願いし、乾杯。席は離していますが、コロナ禍前の句会に戻った気分。
二十年継続あっぱれ花の杯 さくら
ランダム句会美味し昼飯春暮るる ひろひろ
祝20周年・有馬句会――――――――
句会場は1階の会議室。午後1時に2階の「六甲の間」から移動。さくらさんとへるめんさんはかんぽの宿有馬の売店で賞品選びです。
各自5句の提出期限は午後1時30分、集まった短冊をばらして手分けして清書し、選句表に貼り付けます。午後2時にフロントで選句表を人数分コピーしてもらいました。コピーができるまで、つきひさんの差し入れの柏餅をいただきながら、コーヒータイム。

午後2時15分、全員に選句表を配付。各自、自作以外の気に入った6句を選びます。特選1句2点、その他5句は1点で、各人の持ち点は計7点。参加者12名の総点数84点の争奪戦です。
午後2時30分、つきひさんの進行で、特選句から順番に選んだ理由も挙げながら発表。65句全部に点数が付けられて作者が明かされました。
高得点句
本日は6点獲得句が2句と、4点句が2句ありました。
ねね像を仰ぐ青葉に染まりつゝ つきひ⑥◎◎◎
若く美しいねね像と若楓に心が洗われました。
ねね橋の赤き欄干風光る だっくす⑥◎◎
毎回訪れていますが、心ときめくスポット。
惜春や主不在の記念句座 だっくす④◎
記念の句会に播町さんの欠席は残念。
炭酸の泉を囲む若葉かな 一風④
しばらく来ないうちにすっかり森に。
表彰式
午後3時40分、獲得点数により表彰式です。
優勝はつきひさん(15点)、準優勝はだっくすさん(13点)、第3位はへるめんさん(11点)。つきひさんとへるめんさんは出句した5句すべて得点しパーフェクト。つきひさんは有馬と相性が良いらしく、3回の有馬句会すべて優勝です。
他のメンバーは、一風さん(9点)、どんぐりさん(7点)、見水さん(6点)、弥太郎さん(5点)、英さん(5点)、播町さん(5点)、さくらさん(4点)、蛸地蔵さん(3点)、ろまん亭さん(1点・ブービー賞)、ひろひろさん(0点)でした。
今回の賞は、さくらさんが命名し、賞品はさくらさんとへるめんさんがかんぽの宿有馬の売店で選んだ地元産のお酒とお菓子です。


女性軍5名対男性軍8名は50点対34点で、女性軍が圧勝。
まもなく終了時間の午後4時です。
20年間の句会で1番の思い出

メモしていただいた「20年間の句会で1番の思い出」は、時間内にご紹介できませんでした。以下のとおりです。
一風さん
第6回近江石山寺へ行ったのが特に印象にあります。源氏物語に興味を持っていた時期で、今思うと、遠いところへ行ったものだと思います。
さくらさん
「第1回春らんまん有馬湯けむり句会」です。ランダム句会の原点、スタートラインに立った句会です。皆さん若く句も生き生きと馬力があり新鮮な感じがします。20年よくがん張り続けられたと感無量です。お世話になった係の皆様に感謝あるのみです。
蛸地蔵さん
第24回の「淡路松帆」のスケッチ句会。句会にスケッチとはと思いしや、句作より架橋のスケッチに熱中した事が思い出深い。
だっくすさん
第12回桜乱舞王子動物園句会。満開の桜が惜しみなく舞い散り風紋が出来ては別の模様に次々と変わる様は夢のようでした。動物の背やアシカ池に浮かぶ花びらも何ともいえずステキでした。
つきひさん
第1回 有馬句会 (あえて挙げれば)選者の選・講評というスタイルではなく、互選、句についての発言自由というスタイルに新鮮さを感じました。又、吟行・句会・飲み会の3点セット+ブログも大きな魅力です。
どんぐりさん
第21回の森林植物園・弓削牧場句会。弓削牧場のおいしいチーズ料理と若葉風の中での句会。とても気持ちよかった。
英さん
第7回明日香村句会は天気も良く、興味ある遺跡と田のレンゲ草が印象的でした。弥太郎さんに高得点をいただき感激しました。
ひろひろさん
第3回伊賀上野句会で、帰り道に鶴橋で下車した仲間に参加できなかった。美味しい焼肉を食えなかった。つくづく残念なり!!
へるめんさん
第12回桜乱舞王子動物園句会。桜乱舞がすごくよかった。感動!
見水さん
第8回の龍野句会。雨の中の強行軍でしたが充実した一日でした。以来、にゅうめんと寅さん映画のファンに。
弥太郎さん
第4回須磨寺句会。神戸女子大の「女子大の葉桜の庭空襲碑」の句は「神戸空襲を記録する会」の会報に紹介された。
ろまん亭さん
第12回王子動物園句会。桜吹雪のような情景がすごかった。

午後4時、お世話になったかんぽの宿有馬の方に全員集合写真のシャッターを押していただき、通勤ラッシュ前に帰れるよう、早々に解散しました。
好天に恵まれ、新緑の中の祝20周年記念句会の句友との久々の吟行と食事は、長引く巣籠り生活を忘れさせ最高のリフレッシュでした。事前準備と幹事の一風さん、さくらさん、へるめんさん、お疲れさまでした。


鯉のぼり泳げ平和の空泳げ 見水③
向日葵の種蒔くいちめん咲かせたい 見水
春過ぎてコロナ禍去るを楽しみに 英
高止まりのコロナ感染に凄惨なウクライナ侵攻、知床観光船の事故。円安に値上げ。気がかりな事ばかりですが、季節は風薫る初夏の進行中。最悪のスタートだった阪神タイガースも蘇ってきました。神戸RANDOM句会はいよいよ21年目、ますます楽しい句会になりますように。
2022.4 写真・文/mimizu
