2020=秋のおうちde句会 | 神戸RANDOM句会

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シニアの俳句仲間の吟行・句会、俳句紀行、句集などを記録する。

 

「元気にしていますか。秋の句会の時期です。皆で集まって吟行の提案もありますが、コロナはまだ増加しそうで、どう考えますかね。集まるのは不安な感じはあるのですが」

と、2020年10月1日に一風幹事長からメール。

去年は10月30日に御影で吟行句会。9月に2人で御影の町を歩き回って下見をしていました。今年、こんなことになるとは。

9月は感染防止対策を条件にGoToトラベルがスタート。10月にGoToイート、11月からはGoToイベント。政治の世界も菅内閣発足、大阪都構想住民投票、米大統領選とあわただしく、世の中の空気は変化。が、コロナの感染は一向に収まっておらず、吟行句会は大人数で1日3密になるため、今回も在宅句会に。

おうちde句会―――――

10月20日に一風さんからメール。

「つきひさんから兼題をいただきました。『1.秋惜しむ 2.熱燗 3.自由題 の3句で行きましょうか。前回と同じく、句に関するコメントや近況報告を付けて頂くようお願いいたします』。以上です。よろしく」

「秋惜しむ」も「熱燗」も一見やさしそうな題ですが、単調な巣ごもり生活で詠むのは難しい。わが連衆はこれらをどう料理されるでしょうか。

10月末から11月始めは最も秋らしい時期。読書週間(10/27~11/9)や競馬の菊花賞・天皇賞(秋)があり、プロ野球も終盤。10月は満月が2度の「ブルームーン」。

10月21日、句会のメンバー全員に、「第32回神戸RANDOM句会『秋のおうちde句会』、投句は11月6日までに」の案内状を送りました。

投句の一番乗りは、10月24日、ひろひろさん。

「月日の経つのは早く、7月末の句会から早や3か月。待ってましたランダム句会、ありがとう!!」

の挨拶と投句。その後、メンバーからメールと郵便で投句と近況が寄せられ、締切の11月6日には全員14名・42句が集まりました。

早速、作者を伏せて、兼題ごとに句をランダムに並べ替えた選句表を作成し、選句の締切日を11月16日にしてメンバーに選句表を送付。各自、自作以外の気に入った4句を選びます。特選1句2点、その他3句1点で、各人の持ち点は計5点。参加者14名の総点数70点の争奪戦です。

11月13日に全員の選句が届き、送っていただいた選句から得点集計と選定理由を取りまとめ、作者の句のコメント・近況報告とともにつきひさんにメールし、講評と添削例のコメントをいただきしました。

では、メンバーの投句と作者のコメント(*)、選句で獲得した得点(丸数字、は特選句で2点)と選句理由(〈選〉)をご覧ください。配列は投句の到着順です。まずは、「秋惜しむ」の句から。

秋惜しむ   戸を叩く狸と秋を惜みけり

おーいうんこズバッと出(いで)よ惜しむ秋  ひろひろ

*毎朝のトイレ、便秘気味。ズバッと出てくれた。気分爽快なり。

〈選〉高齢者のこの元気さはたいへん結構ですが、せめて愛犬を詠んだ句と思いたい。

   …播町(選外)

秋惜しむ冷(つめた)さわたる朝の街     英

燭暗き角屋二階に秋惜しむ         つきひ

〈選〉この寂寥感、捨て難いけど、選句オーバーなので、選外。…へるめん(選外)

解体す庁舎に一礼秋惜しむ         さくら④◎◎

*市役所2号館が63年の歴史を閉じ解体される事になりました。震災で6階が損壊した

 姿を思い浮かべつつお別れに行きました。生まれ変わる庁舎に期待を寄せています。

〈選〉・神戸市庁舎。ここでは1.17の無残な姿ではなく、新聞会館、国際会館とともに

    三宮の“3大雄姿”だった1957年の市庁舎(別添写真参照)を見よ。当方は、59

    年からここの4階で働いた。屋上のオリエンタル食堂のカレーの味もいまだに

    忘れられない。壁面の時計は、震災時住宅局が密かに保管したはずだが、その

    後姿を見ない。この句、なによりも「一礼」という言葉に胸打たれた。…播町

   感謝の気持ちを込めた一礼が良い。季題の秋惜しむで交錯する思いが伝わって

    来る。…つきひ

空の青 雲など見つつ秋惜しむ             一風

*遠くを見ていてそっと上を見ると

秋惜しむ坂から望むちぬの海          弥太郎⑦

〈選〉・山の手から神戸の街並みと遠く和歌山の友ヶ島まで望む秋の一日を惜しんで。

    …どんぐり

   ・雄大な景色と季節感、心情がよく表現されている。…稲村

   ・一瞬に明るく広々としたイメージを与える。…蛸地蔵

   ・神戸の晩秋の風景がよく描けている。…英

   ・灘区で暮らした頃は、六甲を仰ぎ、垣間見える海を眺めて季節を感じていた

    ことを懐かしく思い出しました。…見水

黄の色の褪せゆく里の秋惜しむ       どんぐり②

〈選〉山里の黄葉の美しさがよく表現されている。…弥太郎

うす味に炊くがんもどき秋惜しむ       へるめん

〈選〉がんもどきの句は珍しい。たいていは「おでん」に一括りされてしまう。おでん

   なら冬の句だが、がんもどき単独に光をあてた結果、「秋惜しむ」が生きた。

   …播町(選外)

対面の母窓越しに秋惜しむ         播町⑥◎◎

〈選〉・コロナ流行下の面会、なごり惜しいが時は無情に過ぎる。…へるめん

   ・親子の愛情が訴えてくる。…蛸地蔵

   ・コロナ禍の悲哀を感じる。…英

   ・お母さまは病院でしょうか?介護ホームでしょうか?コロナ禍で面会が許され

    ない。オンラインでなくやっぱり会いたい。ガラス越しの手も声も温かかった。

    胸にジーンとくる句です。…さくら

秋惜しむ山のホテルの露天風呂           だっくす⑤

*息子が毎週、近くのホテルのサウナと露天風呂に通っています。山の中で他に何も

 ない所で木々を見ながらリフレッシュ。

〈選〉・露天風呂に浸かり五感で行く秋を惜しむ。情景が鮮明な句。…つきひ

   ・露天風呂から眺めた秋の景色が印象に残っている。…弥太郎

   ・GoToトラベル利用でしょうか?コロナ禍さえ忘れる静かな山のホテル、温泉

    に身も心も癒されて…うらやましい!!…さくら

   ・コロナ禍で泊付旅行も温泉も自粛中。森閑とした紅葉に包まれた露天風呂の

    開放感がたまらない。…見水

夕焼に言うべきはなし秋惜しむ       蛸地蔵①

〈選〉秋には夕焼けがよく似合います。…ろまん亭

秋惜しむ踏みつぶすかな銀杏実(いちようみ) ろまん亭①

〈選〉「かな」という詠嘆が入って、ここに「切れ」があると解釈したい。踏みつぶす

   のを躊躇するのは「黄落」の季節にある自分自身である、いやいや踏みつぶすの

   は「銀杏実」だけにしておこう。…播町

虫たちのかぼそき声や秋惜しむ            稲村②

〈選〉・虫の声に聞き入っているのがいい。…ひろひろ

   ・「かぼそき声」が秋です。…ろまん亭

日溜りに三人三様秋惜しむ          見水③

*秋晴れの土曜の朝、日の射し込んだリビングで、新聞・スマホ・テレビ、家族3人

 思い思いに。

〈選〉・ほっこり感と共感。…稲村

   ・絵本の1ページのような、のどかな雰囲気が感じられます。…一風

   ・同じ景色を見ていても想いはそれぞれ。…だっくす

熱 燗  浴衣の君は すすきのかんざし

喜寿迎え熱燗ちびりまた明日も       ひろひろ

*飯を食べてたら、いつの間にやら満77才。

熱燗でコロナのうつを吹き飛ばせ      英

〈選〉うつを飛ばすために、酔って口角泡を飛ばすことにならないよう、自戒しま

   しょう。…播町(選外)

年ごとに増えて行く忌の燗熱く       つきひ③

〈選〉・想いを馳せて、ちびちびと飲む酒の味はどんなでしょうか。…一風

   ・同じ思いの今日この頃です。…ひろひろ

禁酒令解かれし君に燗熱く         さくら③

*禁酒を守り3年、やっと主治医より許可が出ました。ほどほどにと釘をさしつつ

 労いの一献を。

〈選〉・体調を崩されていたのでしょうか?兎も角また一緒に呑める嬉しさ。

    …どんぐり

   ・友人?の回復を喜ぶ気持ちがよく表れていて気持ちの良い句です。飲み

    すぎないように。…だっくす

熱燗が結ぶご縁で今ありき         一風④

*あの人の、この人の顔が浮かびます

〈選〉・熱燗の句では、もっとも酒が旨そうな句を選びました。コロナ禍で膝突き

    合わす酒の席がなくなり残念至極。…播町

   ・まさしく、そのとおり。…ひろひろ

   ・いい友達づきあいができた。…英

日が沈み熱燗が待つ縄のれん              弥太郎

熱燗や鬼籍の夫の誕生日          どんぐり⑩

〈選〉・亡くなった後も熱燗で夫を偲ぶ。命日でなく誕生日というのが新しい。…つきひ

   ・しみじみ身にしみる句。…稲村

   ・夫の君に一献。…へるめん

   ・どんな気持ちで飲むひとくちなのでしょうか…一風

   ・熱燗が好きだった夫を偲んでいる。…弥太郎

   ・しみじみとした情感がある。…蛸地蔵

   ・鬼籍に入られたご主人に話しかけながら誕生日のお祝いに好きだった熱燗を供

    える。深い思慕の情を感じます。仲の良いご夫婦の姿が浮かびます。…さくら

   ・お酒が好きだったご主人に「生きていたら〇歳よ」と熱燗をお供えして、しば

    らく語り合う感じが目に浮かびます。…だっくす

   ・熱い思いが酒を熱くしたのでは。…見水

熱燗や口唇(くち)になじめる根来椀      へるめん

熱燗や雪ひらひらとはらはらと       播町

熱燗や話し上手に注ぎ上手          だっくす④

*川柳教室の後、10数人で行く飲み会はいろんな人がいて賑やかです。今年はコロナ

 の影響で3月から投句句会なので早く元に戻ってほしい!

〈選〉・酒席の雰囲気がよく出ている。注ぎ上手が面白い。…つきひ

   ・和気あいあいと呑むお酒の美味しいこと。…どんぐり

   ・酒飲みの仲間との語らいは楽しい。…弥太郎

   ・コロナ禍で手八丁口八丁は禁じ手になりましたが……。…ろまん亭

日も暮れて暖簾をたぐり熱燗を       蛸地蔵

〈選〉「たぐり」という強い語調が、いかにもその日の仕事のストレスを熱燗で早く

   発散したいとの思いがでている。上司の悪口を言うのは人生の喜びの一つだと、

   出口治明「還暦からの底力」にあったような気がする。…播町(選外)

酒飲みのオヤジを想う熱かんを       ろまん亭

コロナ禍や熱燗のとも久しぶり             稲村①

〈選〉やっと会えた嬉しさ…英

遅番の後は熱燗辛口で                  見水

*熱燗の一番の思い出は、30年以上前、勤労会館を午後9時過ぎに閉館して嘱託さん

 たちと立ち寄った「灘」の15分。いつも熱燗1合とおでん2品でした。

自由句  空に憧れて 空をかけてゆく

 

緋メダカに赤子うようよ妻仰天              ひろひろ

*緋メダカに卵。赤子生まれ、ピチピチ、ウヨウヨ。

八千草の乱れ咲きたる夢の庭        英

被災庁舎の解体ニュース秋の風       つきひ①

〈選〉あの庁舎であった様々の事が風と共に去りゆく…へるめん

八万人百寿めでたし菊香る         さくら①

*116歳の長寿日本一(ギネス認定世界最高齢)の女性はインタビューに答えまだまだ

 がん張りますと。どうぞお健やかに。日本の百歳以上の人は8万人を越えました。

〈選〉本格的な高齢社会に突入でしょうか。百寿も白寿もめでたいもの。…一風

散髪のあと風スッーと冬に入る            一風①

*夏には風を感じないのに

〈選〉鋭い季節感。そんなこと感じたことあったと思い出す。…稲村

秋うらら検査結果に異常なし         弥太郎③

〈選〉・ほっとした!心は秋晴れ。…へるめん

   ・良かったですね。おめでとう。…ひろひろ

稲架干の色も香りも変りけり        どんぐり②

〈選〉・秋の歩みを巧く捉えている。…蛸地蔵

   ・実りの秋の風物詩稲架掛も最近は少なくなりました。稲架掛は最初は黄色く

    甘い香りがします。やがて色も香りも乾いたものに。季節が移ろい人々の営

    みや風景が変わっていく。大きな自然の流れを感じる句です。…さくら

朝五時のオリオン吾と宇宙統ぶ           へるめん①

〈選〉夜明け前の空を見たことがないのですが、冷たい空気の中でオリオンを見てい

   ると、宇宙に抱かれたような気持になったという句なのでしょうか。…だっくす

マスクしてひいふう密よコロナや苦    播町

マスクして眉目(みめ)良き女増えにけり  だっくす③

*マスクをかけると目立つ眉と目、アイメークの腕が上がり、ある程度の年齢までは

 みんな若く美人に見えます。

〈選〉・確かに。マスクして「目力」が強い女性が目立ち、当方は巣ごもりから町中に

    出かけてきた“雪女”を想います。…播町

   ・最近まわりの女性はみな美しいです。…ろまん亭

秋日暮れいきなり出合う散歩犬            蛸地蔵①

〈選〉秋の冷え込む黄昏どきの光景。出合い頭の臨場感に魅かれました。…見水

マテバシイ新聞のぞき初雪や        ろまん亭

ラジルラボエダマメ採りははかどりぬ           稲村

※「らじるラボ」はNHKのラジオ番組で毎週月曜~金曜の午前8時30分から。

百キロの酒林吊る冬近し           見水①

*10月27日朝刊に西宮の酒造博物館に新酒の季節を告げる酒林を吊る記事。直径1m、

 重さ100キロの緑の杉の葉の玉は、制作に1週間。酒が熟成するにつれ茶色くなる。

〈選〉新酒ができ如何に熟成するのか楽しみ。…どんぐり

こもり居て  皆さんからの近況報告

コロナ禍が長引く中、巣ごもり生活の皆さんからの近況報告です。

ひろひろさん

「朝、元気に目覚め、犬散歩、新聞、TV、妻と話。昼飯食って昼寝、TV、リコーダー、メダカ、ストレッチ。夕食そしてTV、話、風呂、日記、床。といった一日の過ごし方です。家から出るのは妻との買物と犬の散歩だけ。よって、2月から山陽電車に乗ったことなし。車で買物の毎日が続き、世間に取り残された囲みの中の生活をしています。

今回の句会のお蔭で、一日一日が楽しくなっております。投句した後で、あっこの句の方が――と思うことあり残念なりです」

英さん

「リモートより対面の句会を期待しています!」

つきひさん

「某日 神戸ゆかりの美術館『無言館』展へ

某日 須磨離宮公園バタフライガーデンへ。念願の『アサギマダラ』と初対面

某日 ランダム仲間のDさんと京都『角屋もてなしの美術館』(パンフ前掲)へ

NPO法人『食ネット』の仕事もぼちぼちと。コロナの影響は至る所にあり、中止・再開・変更の度、契約書を書き換えたり、液体アルコールや非接触体温計の確保に奔走しました」

さくらさん

「自粛も緩み8月から外出が少しずつ増えています。ケースに眠っていた楽器もやっと出番。三味線、胡弓仲間と音楽を楽しんでいます。とても癒されます。アクリル板のガード、フェイスシールド、コロナ対策しっかりとして演奏しています」

一風さん

「10月最後の日。来春に向け、"メダカ"を楽しんでいる三つの甕の水替えをしました。すると、何と7匹もの小さな命が育っているのが分かり感動です。歩きとラジオだけの日常が続いていますが、お蔭様で、それなりの元気でおります」

……メダカはひろひろさん、と思っていたら、一風さんも飼っていました。

弥太郎さん

「満80歳になりました。ウォーキングや数独を楽しんでいます」

どんぐりさん

「GO TO・・に刺激され出歩く事が多くなりました。

マスクは付けて出るのですが、一旦外すと付けるのを忘れる事が多いです。

何とか一日でも早く前の生活に戻りたいですね」

へるめんさん

「前回は優勝をいただきましてありがとうございました。頭ひねった甲斐がありました。が、柳の下にいつも泥鰌はいませんよねー?と思いつつ…。

眼の手術をしたおかげで、このごろの月も星も今までの生涯の中でなかった位、とても美しいです。―経済活動が下火で、空気が澄んでいるのもあると思いますが―。

大書する冒されたくない『自由』『ゆめ』」 

播町さん

「年賀状に「コロナ禍俳句」全10句を掲載(する予定)。「2020年傑作ノンフィクション・ベスト10」をツイッター(する予定)。「新潟――アートと俳句の幻想ひとり旅」を執筆(する予定)」

だっくすさん

「さっとできた句がイマイチなので他の句をと思ったのですが、全然できなくて、諦めました。絵の描けない私は、家のリビングのリクライニングシートに座ったまま見える景色をタブレットで撮ったのですが、網目の入った嵌め殺し窓なので、網目が写っています。リクライニングチェアーに座って左側にこの景色を眺め、前のテレビを見るという日々を送っています。いろんな句があって選句に迷いました」

蛸地蔵さん

「新型コロナ再びの拡大、心配の種は尽きず、無味な生活をしています」

ろまん亭さん

「病気で最近ちょっと弱っています」

稲村さん

「農作業では直売所への出荷はほとんど終わり、タマネギ2千本あまりの定植、えんどうやそらまめ、キャベツの播種など次々作業があり、一方キャベツ、ハクサイ、ブロッコリ、ダイコン、カブ、ゴボウ、ニンジンなど多くの野菜が育っています。文化活動では、古文書勉強会を加古川と稲美町で6月から再開。代表を務めている芸術文化団体印南野半どんの会では機関誌印南野文華79号の編集作業に入っています。中学校同窓生とは毎月一回喫茶店でお茶懇の機会を持ち、老人会などのグラウンドゴルフに参加。今日用・今日行く十分な毎日です」

見水さん

「息子が買ってきた『半沢直樹・アルルカンと道化師』は関西が舞台なので半日で楽しく読了。続けて、冬支度をしながら、若い頃に挫折した難読小説に再挑戦しようとしたら、10数年ぶりに腰痛。腰痛は治まりましたが、またしばらく積読に」

講 評 ――――――――

つきひさんの講評です。最初に選句前の選句表を見た感想は、

・今回も全員参加!ランダム句会は素晴らしい。

・市庁舎解体、窓越しの対面、コロナ禍、マスク、百歳高齢者など時事の句が目立った。

選句が終わり、兼題については、

 この度の兼題は 『秋惜しむ―秋の時候』 『熱燗―冬の生活と行事』 『自由題』でした。季題別得点を見ますと秋惜しむが31点、熱燗が25点、自由題が14点でした。自由題の点数が14点と低くなっています。

 自由題の方が作りやすいのかと思っていましたが、今回は違いました。同じかたちの句会をするのであれば、兼題を3句にした方が作りやすいのでしょうか。

高得点句

選句により、全部の句に点数が付けられ、作者も明かされましたが、今回の高得点ベスト7を再掲します。

 熱燗や鬼籍の夫の誕生日     どんぐり ⑩

 秋惜しむ坂から望むちぬの海   弥太郎  ⑦◎◎

 対面の母窓越しに秋惜しむ     播町   ⑥◎◎

 秋惜しむ山のホテルの露天風呂  だっくす  ⑤

 解体す庁舎に一礼秋惜しむ     さくら   ④◎◎

 熱燗や話し上手に注ぎ上手    だっくす  ④

 熱燗が結ぶご縁で今ありき    一風    ④

「秋惜しむ」が4句、「熱燗」が3句、「自由句」は高得点句がありませんでした。

添削例

つきひさんに、今回点数が取れなかった句から4例を選び、添削をしていただきました。

1例目(添削前)喜寿迎え熱燗ちびりまた明日も を、

   (添削後)いつしかに迎えし喜寿の燗熱く

   としてみました。近況報告をそのまま句にしてみました。喜寿おめでとうございます。

2例目(添削前)朝五時のオリオン吾と宇宙統ぶ を、

     添削後)朝五時のオリオンの統ぶ宇宙かな

   としてみました。俳句では『吾・今・此処』が約束ごとであり、この場合、吾が無い

   方がより壮大ではありませんか。

3例目添削前)秋日暮れいきなり出合う散歩犬 を、

  (添削後)秋の暮いきなり出合う散歩犬

   としてみました。秋日暮れを秋の暮としました。

   秋の暮は、秋の終わりを表す季語でもありますが句を読めば日暮れとわかるでしょう。

   つるべ落としの秋の暮の情景がよく出ています。

4例目(添削前)酒飲みのオヤジを想う熱燗を を、

   添削後)熱燗や病めば親父の懐かしく

   としてみました。酒飲みと言わなくても熱燗でわかるでしょう。近況報告から病めば

   を入れました。早く快くなってください。

獲得点数により賞が決まりました。

優勝はどんぐりさん(14点)、準優勝はだっくすさん(12点)。

他のメンバーは、弥太郎さん(10点)、さくらさん(8点)、播町さん(6点)、一風さん(5点)、つきひさん(4点)、見水さん(4点)、稲村さん(3点)、蛸地蔵さん(2点)、へるめんさん(1点)、ろまん亭さん(1点)、英さん(0点)、ひろひろさん(0点)。

さくらさん、だっくすさん、どんぐりさんは投句した句すべて得点し、パーフェクト。

今回の兼題ごとの高得点者にも賞。『秋惜しむ』は弥太郎さん(7点)、『熱燗』は優勝・準優勝者を除外して一風さん(4点)、『自由句』はすべて3点以下だったので該当なしに。

つきひさんが選ぶ「つきひ特別賞」は「秋の暮いきなり出合う散歩犬」を詠んだ蛸地蔵さんに。選定の理由は、「つるべ落としの秋の暮の情景がよく出ています」。

賞品は、今回も図書カードを送らせていただきます。

             受賞者       賞 品

  優 勝(菊花賞)  どんぐりさん   2000円の図書カード

  準優勝(紅葉賞)  だっくすさん   1000円の図書カード

  秋惜しむ賞     弥太郎さん    1000円の図書カード

  熱燗賞       一風さん     1000円の図書カード

  自由句賞      該当なし

  つきひ特別賞    蛸地蔵さん    1000円の図書カード

女性軍対男性軍では、女性軍5人で39点、男性軍9人で31点。男性軍の1000倍返しの悲願を少しだけ叶え、句会は終了しました。

今回もお互いの顔を見ながら喧々ごうごうの句会にはなりませんでしたが、長引くコロナ禍でもそれぞれに発見・工夫した句を詠み、それらの作品を味わい、選句し、メンバーの近況も知って、元気をもらえた「エール」句会でした。ご協力ありがとうございました。

今夜は、レンジでチンした熱燗か湯割りの焼酎・ウイスキーかホットワインを片手に、会心の一句をひねって、ほかほか温まりましょうか。

                           

もうすぐ師走。新年を迎えます。どんな時でも自分の夢は追い続けたいものですね。

11月の2週目、コロナのワクチンが完成し、日本では来年の前半に高齢者に接種(する予定)のニュースが流れたと思ったら、コロナ感染者が急増し過去最多。第3波が到来です。11月15日現在、感染者は国内で12万人、世界で5,400万人。寒さと乾燥が続くこれからは、コロナ感染しやすい季節。より一層の感染対策が必要です。

全員が顔を合わせる句会は、春は無理でも、夏頃には再開できるよう、祈るや切。

次回のご希望やご提案があれば一風幹事長まで。

 

 2020.11 書/herumen.写真・イラスト・絵手紙/bantyo,tukihi,dakkusu,mimizu.文/mimizu