
3月半ばにだっくすさんからご案内が届きました。
「第19回神戸RANDOM句会は、海を渡り、淡路人形座を鑑賞、福良港散策、老舗やぶ萬旅館での昼食、句会というプランです…」
繭の坂-さきみちてさくらくらくらめくるめく『繭の坂』-
そこへ、播町さんから第2句集『繭の坂』をブログアップしたお知らせ。
「第1句集『水の家』以後の60代の約1400句のうち160句を選んでネット上で編み、第2句集とした。タイトルを『繭の坂』としたのは、繭のまま坂をゆるやかに転げ落ちるのをイメージした」と、あとがき。
いつまでも若く、チャレンジ精神旺盛な播町さんですが、
さうかさうかこれが余命といふ春か
のような、どきっとする句もあります。
集 合 -振り払ふ春愁がばと顔洗ふ 『繭の坂』-
平成26年4月15日(火) 8:40 JR舞子駅改札口集合。
風光るランダム句会風いずこ ひろひろ
改札を出ると、いつもの顔の中に、初参加のころなさんのお顔も。
花咲いたランダム句会ママ参加 ひろひろ
参加者(敬称略)は、ころな、さくら、だっくす、つきひ、(りっこ改め)へるめんと女性5名。男性は一風、稲村、英、播町、ひろひろ、見水、ろまん亭の7名で総勢12名。
往 路 -正装はセーターでよし風光る 『繭の坂』-
遠足に行くよに並ぶバス乗り場 一風
8:55 福良行き高速バスに、全員乗り込みました。
淡路島全山丸く山笑ふ さくら③(数字は句会での獲得点数)
それなりに頑張りますと山笑う ろまん亭
遅咲きの花もなぜだかいとおしい ろまん亭
春は笑う、夏は滴る、秋は粧う、冬は眠る―淡路の山々は笑っています。
くにうみの島縦断す春疾風 播町
陽炎を追ひかけてゐるバスの旅 つきひ②
南あわじの玉葱畑を抜けます。5~6月に収穫されて特産の淡路新玉葱になり、畑は田んぼに戻ります。
淡路道玉ねぎばたけ春景色 稲村①
両側は玉ねぎ畑バス旅行 さくら②
玉葱が甘くて淡路で栄養士 播町
9:58 福良着。出迎えてくれたのは、淡路人形座の人でした。
バス降りる老人迎え春の風 一風
淡路来て人形浄瑠璃春句会 稲村
人形座は、2012年8月オープン。地震・津波時には1000人収容可能の避難所を兼ねています。
人形座 -みみたぶもまぶたもタブー春の闇 『繭の坂』-
2階の客席に着くと、人形遣いの人が、人形の動かし方を解説。かしらの下にある「チョイ」の糸の握り方で、かしらが上下し、小さなつまみを指で動かすと目や眉毛が動き、顔に豊かな表情が生まれます。人形遣いは、主遣い(頭と右手)、足遣い、左手遣いの3人で1体の人形を操ります。
春愁の顔をつくるもチョイの糸 一風②
人形の白き指先春愁ひ だっくす③◎(◎は特選の句)
500年の歴史を誇る淡路人形浄瑠璃は、江戸中期から全国を巡業。大阪では文楽、徳島では阿波人形浄瑠璃になり、歌舞伎にも影響を与えました。芝居は太夫の語りと三味線の伴奏に合わせて演じられます。
声しぼる女太夫や風光る へるめん③◎
本日の太夫と三味線はいずれも女性。三味線の力強い澄んだ響きに聞きほれていると、客席が暗くなり幕が開きました。上手に家の室内があり、下手は外の景色。入口に引き戸。基本は吉本新喜劇と同じようです。
かかさんの名はゆみ春の人形座 見水②
人形座阿波と大坂へだつ春 英
春灯やお弓の姿艶めかし ころな①
演目は、おなじみ「傾城阿波の鳴門 順礼歌の段」。大阪に身を隠す父母の家を順礼のお鶴が訪れ、母のお弓は身の上話を聞いて我が子とわかったものの、親と名乗れず娘を泣く泣く追い帰し、思い直して娘の後を追う。
渦潮や人形よよと哭き給ふ 播町
春淡路人と人形カップルよ ひろひろ
春の技人心伝播浄瑠璃に ひろひろ
熱演に心から拍手を贈り、客席が明るくなって、外へ。
福良港 -風騒ぐなり新緑の濃く匂ふ 『繭の坂』-
11:00 お弓お鶴の余韻に浸りつつ、福良港で吟行。
福良港には、観潮船乗り場があり、展望台・レストラン・土産物売場の「なないろ館」、南海地震が学べ500人避難できる「津波防災ステーション」、足湯「うずのゆ」、海産物土産物店が並び、昨年3月から「道の駅」。
心地よい海風に、新緑の街路樹やノボリがはためいています。

-南あわじ市Hより-
花菜道お弓お鶴を偲びつつ さくら②◎
春風や幟は海の匂ひして だっくす④◎
麗らかや海の香届き来る足湯 だっくす④◎
世話人のさくらさんとだっくすさんは、賞品の買い出しと準備で大忙し。
眼に若葉浄瑠璃足湯淡路会 稲村①
春風や足湯ゆったり海ながめ 稲村①
足湯ぬくし阿波のおゆみのかい嘆く へるめん
足湯渦巻く淡路山桜 へるめん
「うずのゆ」は、天然温泉を引いて渦潮や蛸壺形の湯舟を配置し、誰でも利用できる足湯。稲村さん、へるめんさん、播町さん大満足。
英さんと見水さんは、「なないろ館」の展望台へ。
福良湾はるかにかすむ海苔いかだ 英②
この沖はトラフなれども春の海 見水②
南海トラフが動けば、兵庫県で真っ先に津波が到達する福良港。1605年慶長、1707年宝永、1854年安政。1946年南海と、90~150年の間隔で地震と津波がやってきており、今年は南海地震から68年目。
眼下では、観潮船に客が乗り込み、出航。
観潮船阿波と淡路をうろうろと 英
綱たぐる若者凛々し観潮船 見水
観潮船ときめき乗せて出航す 見水①
花の昼観潮船の出る時刻 つきひ①
春の海観潮船がゆっくりと ろまん亭
観潮船大渦小渦へ向かひたる さくら①
うず潮や遠き恋日にめまいして ころな①
町歩き -春昼のだれも遅るゝカフェテラス 『繭の坂』-
福良港わかめくぎ煮に新玉も 稲村①
うまそうないかなごくぎ煮声高し 英
さくらさんとだっくすさんは、壺焼で1句(さくらさんの句は後で登場)。
壺焼を店先で食べ道の駅 だっくす

-淡路島うずしおの郷Hより-
福良は鳴門海峡に面する古い港町。一風さんは福良八幡神社に登って句作。
高台に登り春風海の青 一風②◎
福良港クレーン高く山笑う 一風
ろまん亭さんはネコヤナギで一句。
久しぶり久しぶりよとネコヤナギ ろまん亭
やぶ萬 -桜ふぶくわがロスタイム酔いの中 『繭の坂』-
12:00 創業150年の料理旅館・やぶ萬に集合。若女将に出迎えられ、2階大広間へ。
ビールで乾杯し、活きのいい刺身や酢の物、焼き物、天ぷら、釜飯をいただき、極め付けが名物「鯛めん」。極細の淡路そうめんに鳴門海峡で育った桜鯛の天ぷらが載った温かい料理です。
やぶ萬の少酌で良し鯛麺に 播町
鯛麺と美人女将の老舗かな 見水②
参加したいつもの顔に鯛そうめん ろまん亭


-淡路島うずしおの郷Hより-
鯛入りたるソーメン島日和 へるめん①
うまいもの福良ええとこ桜鯛 英②◎
カラオケの佳境に入りて四月尽 へるめん
淡路島自然満腹バスの旅 ひろひろ
隣室の団体は、カラオケで盛り上がっています。
句 会-酔うものに、花、湯、優勝、まさかの恋『繭の坂』-
若女将の曽祖父が俳人だったご縁で、句会場は別室でサービス。各自5句(ころなさんは今回3句)を短冊に書いて提出。短冊をバラし、手分けして清書し選句表を完成。全員黙々と筆を走らせる様子に、ころなさん、「なんだか試験みたい」。
選句表のコピーを待つ間、つきひさんご持参の明石・分大のお饅頭をいただき雑談。
播町さんから、「神戸RANDOM句会」のブログで、各自ネット上の句集発行のお誘い。希望者は100句程度選び、句集タイトルとあとがきを添え、播町さんか見水さんにメール送付を。
話題は、辞世の句へ。播町さんは『繭の坂』で「この世への礼状あまた春の風」を候補にあげ、つきひさんは句碑を思案中。
午後2時、句会スタート。全員に選句表を配付し、各自、自作以外の6句を選び、特選1句2点、他の5句1点の持ち点7点。参加者12名の総点数84点の争奪戦です。
つきひさんの進行で、順に特選句から発表し、作者も明かされます。
高得点を獲得した句は、
初吟行福良の春にどっぷりと ころな ⑧◎
ふっくら・どっぷりというおおらかさに共感。最高得点。ころなさんは、「ニューコロナ」のママ。阪神淡路大震災で店が潰滅するまで25年間、三宮東門筋で ぶいぶいいわせていた知る人ぞ知る 名物ママ。1985年のタイガース優勝の夜は、店の前まで客であふれ盛りあがったものだった。店を閉じて10年、大腸がんを患ったものの、ボランティアで多忙な日々を送っているとのこと。ひさびさの再会でした。
人形が泣けば人泣く春蔭に つきひ ⑦◎◎
魂の入った人形の動きに惹き込まれました。
春うららふらっと入る壺焼屋 さくら ⑦
笑みがこぼれます。壺焼は春の季語です。
旅人もバスも溶けゆく島おぼろ つきひ ⑤◎
島を縦断する春の旅に心が開放されました。
文楽の世から現(うつつ)へ新樹晴 つきひ ⑤◎
芝居の余韻に浸っておれない若葉の季節です。
人形座出れば港や風光る だっくす⑤
まさに福良ならではの春です。
メンバーの得点と各賞・賞品は以下のとおり(敬称略)。
1位 優 勝 つきひ (20点)鯛茶漬け
2位 準優勝 だっくす(16点)真ダコ釜めし
3位 殊勲賞 さくら (15点)わかめそうめん
4位 敢闘賞 ころな (10点)玉ねぎドレッシング
5位 技能賞 見水 (7点)玉ねぎふりかけ
6位 浄瑠璃賞 へるめん(4点)浄瑠璃の一筆箋
6位 〃 稲村 (4点) 〃
6位 〃 英 (4点) 〃
6位 逆引き技能賞 一風 (4点)焼き穴子
10位 〃 敢闘賞 ひろひろ(0点)玉ねぎドレッシング
10位 〃 殊勲賞 ろまん亭(0点)オニオンスープ
10位 特別賞 播町 (0点)玉ねぎわさび
総点数84点の行方は、女性軍5名で65点、男性軍7名で19点で女性軍完勝。つきひさん、さくらさん、ころなさんは出句すべて得点しパーフェクト。バスの時刻が迫っているので早々にやぶ萬を後にしました。
帰 路 -馬場さんの一蹴り千本桜散る 『繭の坂』-
15:50 福良発の高速バスで舞子に帰ります。バス乗り場で運転手さんに、全員集合写真を撮ってもらいました。
旅人の古希を過ぎればみな遍路 播町
16:53 舞子到着、解散。ころなさんほか7名は、ティオ舞子7階の海彩園で反省会。ここのオーシャンビューはすばらしく、そこで眺めた夕日は、夕日・朝日の違いはあるものの、クロード・モネの「印象・日の出」を思わせる海の色と太陽だったそうです。
淡路島はこれから初夏を迎え、鱧のシーズン。新玉葱も出回ります。
ほととぎす消え行く方や嶋一つ 芭蕉
お世話いただいた、だっくすさん、さくらさんに心から感謝。次回はいよいよ第20回記念句会。待ち遠しいです。
2014.4 写真/romantei 文/mimizu
(Hの写真・イラストはホームページから転載しました)
「淡路福良人形句会(2014.4.15)」 会計報告
収 入 会 費(9,000円×12人) 108,000円
繰越金 19,053円
合 計 127,053円
支 出 淡路人形座(1,500円×12人) 18,000円
「やぶ萬」飲食 47,773円
高速バス(往) 23,400円
高速バス(復) 21,060円
賞 品 7,940円
案内状等郵送料 250円
コピー代 760円
(原紙10円×4枚、選句用30円×24枚)
合 計 119,183円
次回への繰越 7,870円